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色んな会社のビジネスモデルを調べるブログ

日本のSaaS企業は上場までにシェア何%なのか調べた件

御社のTAMを教えてください

投資家の皆さんとお話していると「TAM(タム)」という言葉が登場します。

TAMとは・・・
TAMとはTotal Addressable Marketの略称で、「さまざまな条件が満たされたときに実現される、あるプロダクトの最大の市場規模」を指す。http://tech.nikkeibp.co.jp/it/article/COLUMN/20070604/273442/

つまり我々のサービスが対象としている市場の大きさを教えてくれ、ということですね。

市場のサイズの算定には2つアプローチがあるようで『特に立ち上げから間もないタイミングの企業はボトムアップで考えよ』という意見が主流のようです。

要は投資する側の意見としては
「この市場は矢野経済研究所の調べで3000億の市場で我々がその10%をとるだけで300億の売上になります!」
と起業家に意気込まれても、「え?その市場って複数のセグメントの合計で3000億じゃないの?仮に統一のセグメントだとしても市場のシェア10%に至るまでにどんなマーケティングや営業が考えられるのか、そのためにどんなコスト投下が必要なのかがわからないと簡単にはお金だせないよ。。

という感じだと思います。

一方でトップダウンの考え方が悪というわけでもなく、これは企業のフェーズや起業家/投資家のタイプの違いなのかなとも思います。

参考記事)
トップダウン投資家とボトムアップ投資家の違いと、それぞれへの対応方法 | 500 Startups Japan


私個人としてはマーケティングでの顧客へのアプローチのしやすさ、営業の効率、プロダクトの競合優位性、市場のニーズの顕在化の具合などを加味して短中期の目標設定をしています。そんなボトムアップ思考の私ですが、先日投資家の方に

「で御社は上場までにどういう状態になっていたいの?」と質問されて答えに窮しました。

ここでいう状態とは「マーケットシェア〇〇%をとる」といった答えを期待されていたようですが、正直自分としては△△年でマーケットシェアの〇〇%を獲得するという考え方をしたことがなかったので、そういうトップダウン的発想も持っておいたほうがよいと新しい視点が得られたような気がしました。

よくよく考えてみると我々と同じSaaS系の企業が上場までに市場シェアの何%を獲得しているのか、などあまり知りませんでしたのでちょっと調べてみました。

 

日本SaaS企業の実例からみる上場時のマーケットシェアと売上

今でこそSaaSという言葉を色々な場所できくようになりました。
最近ではスタートアップのピッチ系のイベントの参加者の半数くらいがSaaSってこともありますよね。

しかしながら実は日本で上場済みという条件でみるとあまり事例としては多くありません。

僕が調べた限りでは
・Wantedly(admin) ・・・企業向け採用管理SaaS
・カナミック ・・・介護事業者向けSaaS

が直近上場事例としては該当すると思いますのでまずはこの2社を調査しました。

 

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※1:一の部および公式サイト等に記載の利用社数と売上から筆者が算出
その他基本的に上場時の一の部をもとに作成しました。

Wantedly一の部

カナミック一の部

※いやいやさすがにすべての中小企業がWantedlyの対象ってわけでもないでしょ、的なツッコミが聞こえてきそうですが一旦社員1名の企業も含むすべての会社がWantedlyの対象、という前提で算出してみました。もう少しシビアに対象を絞るとシェア2-3%ってところでしょうか。

 

 未上場業界特化型SaaSのマーケットシェアも調べてみた

上場済み企業だと事例が少なかったので未上場でも最近存在感のある(と筆者が思っている)SaaS企業についても調べてみました。

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いずれもサービス開始から5年以内に市場シェアの5-10%を獲得しています。Classiに関してはメインの対象としている高校市場でいうとすでにシェア40%、Musubiはまだリリースから1年でシェア8%とかなり凄まじいです。


結論:業界特化型のSaaSであれば5年以内にシェア10%を目指すべきかなと

業界ごとにサイズ、価格も、マーケティングでのリーチのしやすさも違いますので一概には言えませんが上場事例でいうと介護事業社SaaSのカナミックが約5%、その他未上場企業例をみても各種領域でシェア10%に届きそうな実積を叩き出しています。
逆にシェア20%を超える事例はありませんでした。もしそのレベルの目標を目指すのであればそれを実現するにたるアセットを持っているか戦略をしっかりと構築する必要がありますね。

全く規模の違う話ですが下記の記事によると2014年段階でのSalesforceのマーケットシェアが16%だそうで。

CRMベンダー4社をガートナーが比較、セールスフォース、SAP、オラクル、MSの動向 |ビジネス+IT

産業横断且つ巨大な市場だとシェア20%っていうのはほんとに難しいことなのだと思います。

 

では今回はこのあたりで。

 

ブロックチェーンで出版業界を変える「Publica」のビジネスモデルを分析

2018年4月現在ではブロックチェーンといば仮想通貨を支える技術という印象が強い気がしますがもちろん同技術は金融にとどまらず色々な領域に活用されていくものです。そんな一例として気になる海外サービスを見つけました。次世代出版プラットフォーム「Publica」です。本稿では既存の出版業界の仕組みや既存サービスに触れながらPublicaの何が新しく、それがどのように出版のあり方を変える可能性があるのかについて考察しようと思います。

■Publicaとは?

簡単にいうとPublicaは、独自のトークン「PBL」を使い、 著者が読者から直接本の代金を受け取れる仕組みです。実際に本ができあがるまでの流れを見るとわかりやすいです。下記の図と併せて御覧ください。

まず作品を形にしたい作家は必要な費用を算定してPublica上で クラウドファンディングを実施し、興味を持った読者から資金をPBLで集めます。支援額が目標に達すると本の製作を開始。本の価格、イラストレーターなどの製作協力者への支払い条件を 「スマートコントラクト(ブロックチェーンを用いた電子契約書)」に書き込みます。本が完成すると支援者には「READトークン」が、協力者には対価であるPBLが配布されます。READトークンは当該書籍へのアクセスキーのようなものですね。

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・既存のサービスと比べて何が新しいのか?

昔からある出版社への企画を持ち込み、そしてAmazonで 電子書籍を自費出版(KDP)する場合と比較しながらPublicaの特徵をみてみましょう。

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・Amazonは作家取り分は70%とよさそうに見えるが・・・

Amazonで自費出版する場合は作家の取り分が70%と高く以外と儲かるようにも見えますが、 「Amazon内で販売ができる」という部分以外は全て作家自身がカバーする必要があります。また、意外と手間であろう部分が最後の協力者への分配部分。電子書籍の場合書店に並ぶ紙の本と違い意外と発売から時間がたっても売れ続ける可能性が高いです。その場合未来の長い期間に渡って協力者への支払いを作家が管理しなければなりません。協力者がイラストレーター、校正担当、・・・など複数人且つ、書籍が複数になるととても煩雑になります。

 

・Publicaの特徵は3点

①協力者への印税の支払いが簡便化
Publicaは初期に設定した契約内容に基づいてどのタイミングで売れても適切に 収益が分配されるため上記で述べたAmazon自費出版のケースにおける煩雑な作業から開放されることになります。

②読者の需要を確認してから製作作業に入れる
まずは製作資金をクラウドファンディングで確保するため、「せっかくつくったのに全然売れなかった」ということがありません。
ただしこの点だけに関していえばすでに日本でもキャンプファイヤーなどの クラウドファンディングサービスで同様の趣旨の使われ方がされていますね。(対象数はあまり多くないようですが)

③課金の方法を自由に設定可能
読んだページ数に応じて課金、などの方法も可能であり自由度が高いです。


■Publicaは電子書籍の世界を変えるのか?

ICO時のスケジュールを見る限りでは2018年いっぱいはサービスの開発期間のようなのでまだまだ実際のサービスを使えるのは先になりそうですが、サービスがリリースされた後うまく浸透するのか?その際にどんな点に注意が必要そうか勝手ながら考察してみます。

・日本における電子書籍シェアは約13%。文字ものの電子書籍は全体の2%。

まず電子書籍の市場はどうなっているのか?について。
おそらくPublicaはまず英語圏を中心としたサービスになるでしょうが仮に日本に入ってきたら、ということで日本の電子書籍のシェアから見てみましょう。

公益社団法人全国出版協会が発表しているデータをみると20174年の出版市場は1兆5916億円。うち電子書籍が2215億。

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マンガ以外の電子書籍市場は290億円と市場規模は非常に小さいです。

規模自体は徐々に拡大はしていてインプレス総合研究所『電子書籍ビジネス調査報告書2017』によると文字ものの電子書籍売上は2011年に115億。2016年には359億です。年間約50億円ずつ拡大しています。Publicaはおそらくプラットフォーム内で成約した書籍売上の手数料をとるビジネスだと思いますので、 もしそれが10%(キャンプファイヤーは13%)だとするとすべてのマンガ以外の電子書籍がPublica経由になっても 日本の場合まだ30億程度の売上しか見込めないということになります。

 では海外はどうなのか?について。朝日新聞社デジタル本部の林 智彦さんが執筆されたこちらの記事(https://japan.cnet.com/article/35064650/)によると、アメリカは書籍だけの売上で3兆円規模。電子書籍割合は大きく日本とかわらない10.6%で3600億程度のようです。おそらくこの3600億には日本ほどのコミック売上はないでしょうし、英語での出版物であればアメリカ以外の国で広く受け入れられるのだろうと考えると海外であればPublicaがそれなりの売上インパクトを生み出す市場は存在しそうだなと感じます。

 ・うまくいくためのポイントはなんなのか?

私はPublicaが成功するためには2つのポイントがあると思います。

1つ目はPublicaがいい協力者が出会えるプラットフォームであること。
一流の作家であれば各種協力者のネットワークを持っているのでしょうが、そうでない人にとっては協力者への収益分配の仕組みだけあっても困ります。Publicaが作家と良い協力者の出会いの場である必要があります。おそらく作家が作品の構想をポストするとそれに賛同する協力者が手を上げるような ランサーズ的な仕組みになるのかな?と思います。

2つ目はPublica自体がプラットフォームとして集客力を持つこと。

でないと一部の影響力を持つユーザーしかクラウドファンディングが成立しません。「革命のファンファーレ 現代のお金と広告」の西野さんがいうところの「クラウドファンディング=信用の現金化」という考えはその通りだと思いますが、その発想を超えないと数多くの本がPublicaから誕生ということはないと思います。

例えば今Noteで記事を沢山現金化できているユーザーのほとんどがどこか他の場所ですでに信頼(宣伝のチャネル)を持っていています。内容さえよければNoteというプラットフォームにコンテンツをのせれば売れる、なんて都合のよいことは起きてませんよね。私たちは今著者への信頼以外の要素でも書店でも、Amazonで本を購入しています。Publicaもプラットフォーム自体が集客に寄与しなければいけないはずです。

 


以上Publicaのビジネスモデルの調査と今後に対しての考察でした。

どのような形でサービスがリリースされるのか、またそれがどのように市場に受け入れられるのか。完成を待ちつつまた改めて本ブログで取り上げたいと思います。

 

Newspicksはどこまで成長するのか? 2014年→2018年の進化と今後の考察

本ブログでは2014年にNewspicksのビジネスモデルについて分析をした記事を公開しました。その後同社は2016年に上場。あれからNewspicksはどのように進化したのでしょうか?過去と現在を比較しつつ今後について考察したいと思います。

【時間の無い人へ本記事のまとめ】

✔当時まだ数百名であった有料会員は約5万人まで増加。
✔ブランドコンテンツに加えて求人広告が大きく成長。
✔購読者数比較:日経ビジネス=19万、東洋経済=6.5万。目指せ10万か。

□(おさらい)ニュースピックスの特徵【2014時点】

もはや説明の必要もないかもしれませんが念のためおさらい。
以前の記事から要点を抜粋します。

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Newspicksビジネスモデル(2014年)

・コンテンツはキュレーション

ユーザーが各種メディアから気になった記事をPick(キュレーション)。その記事に対してユーザーがコメントをつけ合う。ユーザーの中にはホリエモンなど著名人も多数のためニュースに対しての事実だけでなく、「ニュースに対しての視点」がわかる。

・マネタイズはユーザーへの月額課金

月額1500円を払うことで有料ニュース記事が読めるようになります。2014年当時はニュースピックス独自の記事でなく、各種提携媒体の有料記事が読めることをフックに有料会員化。ネイティブ広告は今後展開していくことを標榜していましたが未実施。

 

あれから3年半、Newspicksは成長した

さて、前回記事を執筆したのは2014年の6月。あれから3年半が経過。その間同社は2016年に上場も果たしています。執筆時点の2018年2月頭の段階で時価総額は400億超えと市場からの高い期待が伺えます。
それではNewspicksはどのように進化したのか要点をまとめます。

・オリジナルコンテンツが強化された

当時まだ存在しなかったNewspicksのオリジナルコンテンツですが現在では名物コンテンツに。話題の人物や重鎮クラスのビジネスパーソンにフォーカスした取材や対談記事。インフォグラフィクスや動画表現もうまく取り入れ、Live配信もはじめています。※筆者はLive配信は視聴したことはありませんが。。

・月額有料ユーザーは順調に増加

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有料課金ユーザーは5万人弱まで増加しました。

単純に1人あたり1500円をかけあわせると月に7500万の売上があります。
※四半期の有料課金が5億程度のはずなので月1.7億前後のはずと考えるともしかしたら高単価な法人プラン等がここに含まれているのでしょうか?
例)社内版NewsPicksを提供開始。第1弾として丸紅が導入

 また従来の月額1500円の有料会員に加えて、月額5000円のNewspicksアカデミアプランが追加されています。勉強会や公演などに参加できる権利が付与されるプランでメディアコミュニティの深化+マネタイズにつなげようとする試みでしょうか。同プラン会員数は2000人弱とまだまだボリューム的には少なくこれから色々と模索していくのかなと思います。

・広告収益が大きく成長

もともと同社代表の梅田氏はインタビューの中で

有料課金に関しては「儲かるからやろう」という発想からではなくて、課金モデルを追求していかなくてはいけないという使命感に似たものから来ています。 というのも、まずユーザーにとって邪魔なものはできるだけ排除したいから。 例えばバナー広告って邪魔ですよね、自分たちのほしくないものはつくりたくないんです。

 とおっしゃられていました。しかしながら同時にネイティブアドの可能性も当時から模索されていました。

 もうひとつ、ネイティブアドに可能性を感じています。広告であってもユーザーが読んでおもしろいものであれば意義があると考えています。

 現在ではネイティブアドに加えて、採用広告の掲載でマネタイズを実施しています。

 

・ネイティブアドイメージ

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・採用広告アドイメージ

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2014年→2018年の進化についてはまとめるとこのような感じでしょうか

 ▽ビジネスモデルの変化

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今後Newspicksはどこまで成長する?

2014年時点からは大きく成長したNewspickですが今後どこまで成長が見込めるのでしょうか。勝手ながら考察してみたいと思います。

・有料会員数は倍の10万人を目指したい?

ビジネス系メディアで有料継続課金というモデルだと数値が取得可能だったものでビジネス雑誌の定期購読と比較しています。すると下記のグラフのようになります。

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・日経ビジネス、週刊東洋経済の読者数については2015年度のもの。(Fujisan.co.jp
・Newspicks読者数は2017年9月時点。(決算方向書より)
・月価格は年契約の場合の契約価格を月数で割って算出。

実はもう東洋経済とそこまで大きく差がないところまできているんですね。もちろん雑誌と比べると読者の年齢層やそもそも紙-Webという媒体特性の差もありますから一概に比較することはできませんが10万人までは射程圏内で20万人以上を目指すとなると相当難易度は高いというイメージではないでしょうか。

・広告は収益はどうか・・?

決算書の記載から読み取ると現在の広告収益がおよそ四半期で5億円といったところでしょうか。

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2016年末に発表された成長可能性に関する説明資料にもあるとおり、ネイティブ広告に関してはそれほどなものの、リクルーティング(求人広告)は大きく成長を目指しています。

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求人系サービスは読者数(とくに会員登録済み)に比例して伸びるかと思いますが2017年9月末段階で266万人。日経ビジネスの読者が2017年12月時点で247万人と発表がありますのですでにけして少なくない数値ですね。どちらかというと新規ユーザーをガンガン増やすというよりはよりネイティブな閲覧体験の中で求人コンテンツを見せるUI側と営業努力で伸ばすという感じでしょうか。

学生用の月額500円のプランを用意し、就職前大学生を囲い込んでさらなるユーザー増を狙っているようにも見えますがNewspicksはコミュニティが命だと思います。それなりに仕上がったコメント欄に学生の意見が大量に入り込むとちょっと・・・、という気は個人的にはしますが。

・「Newspicks疲れ」してるのは私だけ??

最後に完全に個人的な感想です。

正直オリジナルコンテンツの質は高く他にはない仕上がりであるものの日々消化できる量を超えてしまっている気がします。少なくとも私はそうなってしまっていて、タイトルをみてPicksはしたものの結局読まなかったという記事が増えています。

Newspicks読んで良いコメントしなきゃ、的ないわゆる「Newspicks疲れ」が起きているように感じます。私も一時期それが理由で解約しましたし、周りにもそうした人が何人います。月額課金サービスはどのように解約率を抑えるのかがポイントであるため、このあたりの設計も今後重要なのかな?と感じています。

※単に私の情報消化力が低い可能性も多分にありますので、この点に関しては考察というより単なる感想に近いものだとお受け取り下さい。


以上勝手な考察でした。

個人的にはリリース当初からよく練られたサービスだと思っていますし、有料課金ユーザーのひとりとして更なる進化を期待しています。

ベネッセの国内教育売上2000億がスゴすぎる件。それを支えるビジネスモデルとは!?

Fintechにはさすがに勢いが押され気味なEdtechですが、まだまだここから様々なサービスが誕生する(してほしい)と考えています。
「戦うならまずは敵を知れ」ということで本稿では言わずと知れた教育業界のドンであるベネッセのビジネスモデルについて分析します。

 

ベネッセの歩み

もともとは1955年に「福武書店」として創業。
1962年に高校生向け「関西模試」(現進研模試)を開始。
1969年に現在の売上の柱である進研ゼミを開始しています。

主力事業である進研ゼミの国内会員数は245万人(2017年4月)。
海外会員も含めると合計でおよそ400万人の会員を抱える規模に成長しています。
1995年には介護事業も開始しており同社の売上の1/4程度を支える規模に成長しています。※ちなみに英語教育のベルリッツもベネッセ傘下。

 

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同社公式サイトから引用

 

国内教育事業だけで2000億を超す売上があります。

ベネッセのビジネスモデルと強み

売上の大部分を支えている国内事業を中心に同社の強みについて考察したいと思います。

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・ダイレクトマーケティングが特徵

ベネッセの特徵といえばやはりDMを使ったダイレクトマーケティングモデル。
年間約100億円のコストを投じています。

様々なチャネルから顧客IDを獲得し、DMで継続アプローチ。顧客化すれば進研ゼミもこどもちゃれんじも継続モデルなので継続期間が極端に短くならない限りは1顧客獲得あたりのコストを一定に抑えつつどこまで人数を獲得できるか、というマーケティング主導のビジネス。

教材開発の費用やDMを配送するためのDMセンター(工場的なやつ)を維持する固定のコストは変わらないので一定の変動費(教材送料や赤ペン先生の委託料など)は増えるものの生徒が増えれば触れるほど利益率は増えます。

同社の国内教育会員数に占める未就学児の割合は約30%。ただし小学校に入学するタイミングでこどもちゃれんじ→進研ゼミと転換するパターンは相当数いるのでは?と考えられます。そう考えると同社にとってはいかに未就学児のタイミングで囲い込めるのか、というのは重要なポイントになります。

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同社決算説明書より引用

 

・顧客ID獲得のための様々なチャネル

 獲得のチャネルはオンライン、オフラインいずれも実施していますが取り分け同社の特徵ということでいうとオフライン中心に触れたいと思います。

-イベントなどを実施

こんな感じでしまじろうのブランド力を活かしスタンプラリーイベント等を実施しています。筆者自身は遭遇したことはありませんがネットの声をみていると動物園などターゲットユーザーが集まる場所で小規模なアンケート等も実施しているようです。

-各種プレゼントキャンペーン

お子さんをお持ちであればピンとくる方も多いのではないでしょうか。 筆者もこれは家にあります。子供の誕生日と名前を入力して応募すると赤ちゃんの名入り(表紙とか本文とかにも反映されます)の絵本が無料で届きます。

確かうちは産んだ病院から入院中に渡されるグッズの中にチラシか何かが入ってて登録した気がします。ネットを見る限りそうしたママの声がそれなりにありましたのでもしかしたらウィメンズパーク等で持っている産婦人科ネットワークを活かして提携しているのかもです。

絵本以外にも人気キッチン用品メーカーのル・クルーゼとタイアップした無料プレゼントキャンペーンなど色々と展開しています。

-たまごくらぶひよこクラブでのアンケート

同社は育児雑誌として発行部数NO1のたまごくらぶひよこクラブを運営しています。
妊娠段階からユーザーに接点を持っているのは非常に強みです。

-ウィメンズパーク

会員数597万人の日本最大級の女性限定口コミサイト。
特に病院探しコンテンツが人気のようです。

とくに病院探しコーナーが人気で、 掲載医院数 約118,900医院(※1)! 病院口コミも充実! ※1 2016年5月時点でウィメンズパークに掲載されている医院数の概算です。

 同社発表によると年間143万人がウィメンズパーク内で病院検索を行っているようです。

「産婦人科・病院の体験談を大募集 抽選で図書カード3000円」のような導線でID獲得につなげています。それ以外にも会員登録導線は色々とあるはずです。


・しまじろうのブランド化

マーケティング効果を高めるためにも、幼児用教材として子供に興味をもたせるためにもしまじろうはとてもうまく機能していると思います。

□マーケティング・・・
アンケートに回答でしまじろう◯◯をプレゼント

□教材としての魅力・・・
教材DVDながす→しまじろうとおねえさん登場→あかちゃん食いつく→ママ「けっこう気に入ってっぽいから契約しようかな」

しまじろうをブランド化するためにかなりの投資をしていると考えられます。
TV番組や映画まで展開していますから。
※もちろん単体のビジネスやグッズ販売などでもとは結構とれるのでしょうが。


バンダイが毎年実施している調査によると「好きなキャラクターランキング」のTOP10入りしています。

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以上ベネッセの売上を支える国内教育事業の強みについてでした。

2014年の個人情報漏洩事件で一度は売上を大きく落としたものの、現在では下げ止まっています。

ターゲット層はことなるもののリクルート社スタディサプリの会員数が33万人(2017年10月時点)売上は公開されていないものの単価990円から考えると年間40億程度の売上なのに対してベネッセの2000億はやはり現時点では圧倒的ですね。

今後も同社がこの領域を取り続けるのか、あるいは既存競合・まだ見ぬスタートアップが現れるのか。今後も業界の動きに注目したいと思います。

 

オンライン学習の「すららネット」上場。ビジネスモデルと今後の伸びしろについて考察

2017年12月にすららネットがマザーズ上場を果たしました。
翌年1月3日時点で時価総額は40億弱と、若干小粒ながらもリクルートのスタディサプリを筆頭に盛り上がりを見せるオンライン学習領域プレーヤーであり気になる存在です。上場時提出の1の部を中心に彼等のビジネスモデルについて色々考察します。

どんな会社のどんなサービス?

すららネット株式会社はゲーム感覚で学習出来るe-ラーニング事業「すらら」を提供している会社です。もともとはベンチャー・リンクという会社の新規事業でしたが、2010年に現すらら代表の湯野川氏が株式を買取MBOが成立。現在の株式会社すららネットが誕生しています。すらら自体は2005年から企画・開発が行われており、スタディサプリの誕生が 2011年であることを考えるとだいぶ早い時期に開始していたんだなということがわかります。2017年9月末段階で導入校数693利用者(ID)数49820に至っています。

すららネットのビジネスモデルとは?

すららは下記図解の通り塾や学校に対して提供するケースと個人に対して提供する ケースの2つにわかれますが基本的に現状は前者がほとんどです。

 

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・売上利益の推移

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 H29数値に関しては3四半期分から算出した参考値です。
利益率はおよそ15%弱と高いわけではありませんが順調に前年比20%程度で成長を続けています。


・売上の大部分は塾に対してのすらら提供

一の部に記載のある提供者別の売上をみると 売上の大部分は塾が占めていることがわかります。

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 ※一の部をもとに筆者が作成
導入校数は年末時点の数値を記載して計算しているので実際の単価は上記表とは異なりますがおよその金額感はこの通りです。

・加盟金をとらずに塾の開業支援

同社は物件探し、資金調達支援、集客ノウハウの提供など 塾の開業支援も併せて行っています。参考リンク:https://entrenet.jp/dplan/0000954/

 ただし一般的なプランチャイズと違い初期で多額の加盟金をとらずに支援をしています。これは代表のポリシーがみてとれる部分です。

・加盟金 学習塾はどうしても最初は赤字、徐々に生徒数が伸びるごとに収益が上がるモデルのため、立ち上げ直後の集客もままならない時から高い支払い義務があると、経営そのものに影響が出る。

・ロイヤリティ 月々のスーパーバイザーの経営支援の対価として発生するロイヤリティですが、これについても学習塾では必要ないと判断しました。なぜならコンビニや飲食のように定期的な商品開発が必要な業態と異なり、学習塾経営は毎年の基本的な年間のスケジュールは同じものになります。

その結果私たちは、様々な名目でお金を取ることよりも、 「教育格差をなくす」というすららの理念の実現に賛同 してくださる方の経営を軌道に乗せたいと考え、あえてフランチャイズ形式を取らないことにしたのです。

同社公式サイトより:http://suralajuku.jp/contents/column01

  
すららネットの今後はどうなる??

理念をしっかりと掲げてそれに沿った事業展開をしている点は筆者としては好印象です。海外事業にも力をいれているものの現在の貧困学力低層向けは単価の問題から 収益性の部分ではイマイチであろうことからまずは日本におけるメインターゲットである塾への導入シェアを高めることが優先度が高いと想像されます。

少し古いデータですが、H20文部科学省の発表ににある小中学生の通塾率から推測すると小中学生だけでも350万人程度が塾を利用しています。高校生の予備校利用者を含めると400万人はくだらないでしょう。

すららの塾ID数は1.4万程度ですからIDベースでみたシェアはまだ1%未満ということです。ということはマーケットサイズ的にはまだまだ今後伸びる余地はありそうなものの同社の学習塾向けの売上の成長が前年成長でH27→H28で11%程度であることが気になります。

もちろんマーケティング・営業を強化することは前提ですが、一番は彼等が考える教務部分は塾の講師が提供しない、という考え方がどこまで浸透するかということなのだと思います。すらら導入校が実績をあげていき、「教務はオンラインソフトで」という考え方をスタンダードにできるかどうかがポイントでしょう。


以上すららネットの分析でした。
何かコメント等あればぜひお願いします。それではまた今度。

 

介護業界クラウドのカナミックに学ぶ業界特化型SaaSのビジネスモデルと戦い方

2016年月マザーズ上場のカナミック。日本では数少ないVertical(業界特化型) SaaS企業であるため分析をしたいと思います。SaaS系サービスを提供している方はぜひ一読ください。

どんな会社のどんなサービス?

カナミックは「超高齢社会の地域包括ケアをクラウドで支える」という経営理念のもと、医療・介護事業者あるいは被介護者がリアルタイムに情報共有ができる「カナミッククラウド」というICTプラットフォームを提供しています。2000年創業依頼介護・医療領域に根を張っている企業です。

元来介護という領域は医師、介護事業者、デイケアサービス提供者など色々なサービス提供者が存在する領域ですが、全体的にデジタル化の進みが遅く、それが故に被介護者の情報の一元化ができていないため各事業者の情報連携も進んでいませんでした。カナミッククラウドはこうした状況を改善するために提供された解決策です。
サービス提供開始から徐々に利用ユーザーを伸ばし、いまでは日本全国で4万を超えるユーザー(事業者)に利用されるまでに至っています。

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新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)を参考に筆者が作成


カナミックのビジネスモデル

カナミックのビジネスモデルを整理すると下記のようになっています。

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前述したカナミッククラウドを通じた医療・介護事業者へのクラウドサービス提供に加えて、利用ユーザー(B:事業者+C:被介護)に対して広告を配信する事業も展開しています。カナミック利用ユーザーが増える→広告媒体価値をあがるという考え方ですね。

基本的にはカナミッククラウドでの収益が大半ですね。

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新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)から引用


売上利益の推移を見てみると上場時で売上10億の営業利益2億。SaaSの40%ルール(売上対前年増+営業利益率>40%)に照らし合わせても問題のない堅調な伸びです。

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新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)を参考に筆者が作成


カナミッククラウドの導入戦略がなかなか上手

同社の言葉を借りるとカナミッククラウドは2階層の仕組みになっています。

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2017年9月期(第17期)決算説明資料より引用

 

1階層部分が介護事業提供者に対しての業務支援システムであり、2階層部分が情報共有システムの提供です。

カナミックは介護事業者を1つずつ点で攻めるのでなく、自社独自の情報共有システムを売りにしてエリア単位でサービスの導入しその後当該エリア内事業者に1階層部分の導入を勧めます。決算説明会でもそういった旨の発表がありました。

地域を面で入れて、その面の中からどんどん医療介護従事者の方々の業務システムをリプレイスしていただいて、面を取った後の1階のリプレイスをしていくというのが、我々のビジネスモデルでございます。その地域ごとの、ドミナントでの連携をどんどん高めていってよくしていくというところが、我々のビジネス戦略でございます。

 引用元:http://logmi.jp/248741

 なかにはすでに他社の業務支援サービスを利用している事業者もあるでしょうが、すでに情報共有システムを自治体や病院などが導入しているため、「それなら業務支援システムもカナミックにしたほうがいいか」となる流れです。実にうまい。

vertical (業界特化型)SaaSの場合業界標準のクラウドサービスがまだ無く、競合はオンプレミス(自社PCインストール型の非クラウド)というケースもまだまだ多く(特にニッチ業界の場合)、プロダクト力にすぐれたクラウドサービスをつくったらあとはマーケティング×営業をきっちり展開すればまずは利用社数は増やせるというのがシナリオかと思います。

完全に筆者の推測になりますが、介護系の事業者の場合「クラウド化されて便利かもしれないけど現状のやり方を変えるのが嫌」という現状維持意識が強く上記のようにはいかなかったのではないでしょうか。

そのため前述のとおり2階層の仕組みにし、各事業者の連携を売りにした戦略にしているのだと感じました。

同社はすでに柏市を対象に東京大学と提携し、街一体となり自治体・各種介護事業者がつながるモデルケースを作り上げています。また、業者間の連携システムに関しては特許取得済みとのことで他社がここから追いつくのは非常に困難なのだろうと思います。


カナミックの今後について勝手に考察

カナミックは今後もまだまだ伸び続けると思います。理由は2点です。

1.そもそも今後介護が必要な人が爆増

同社決算説明によると今後数十年かけて介護を必要とする人間がぐんぐん増加していきます。ざっと15年で1.5倍。30年で倍といった感じでしょうか。

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2017年9月期(第17期)決算説明資料より

 

それに応じて当然介護事業所も増やす必要があります。
同社発表では2025年には現在の倍近い介護事業所数になるとのことです。

また、もしこうしたマーケットの成長がなかったとしてもカナミッククラウドの現状のマーケットシェアは5%。同社のサービスの強さを考えるとまだまだシェアを伸ばせるはずです。

2.各種プレーヤーが連携し一体となって介護をする、という考え方を国が本格的に推進をはじめる

2015年に介護保険法が改正され、各種自治体は地域の医療・介護を連携させていく取り組みを自治体主導で行わなければいけないとのこと。

つまりカナミック社が提供している連携モデルは「今後そうしていったほうがいいよ」という同社の未来に向けたテーゼではなく、そうしなければいけないという国からのお達しなのです。こうした状況のなかで柏モデルのような先進事例が意味をもってくるのはいうまでもないでしょう。

以上2つの理由からカナミックはよほど失敗しない限り安泰なのではないかと感じました。マーケットの今後の変化を随分前からきちんと見通してプロダクトと導入戦略をつくりあげた感が強いです。

あらためてVertical SaaSは業界の経験&業界洞察力をもつことが本当に大きな意味を持つなと感じました。

メディアビジネス好きの筆者としては同社が提供する広告配信事業も気になるところです。現状は売上全体の5%以下と影響力薄で、このままでは利用者が数倍になっても同社にとっては大きな売上ではないかもしれません。

が、無料でのサービス開放領域を増やして利用ユーザーを増やす、あるいは商品の販売やマッチングなど広告でない新たなマネタイズモデルを確立できればこちらもこちらで面白そうだなと感じます。

いずれにしろ今後が気になる企業です。
以上カナミックのビジネスモデルについての勝手な考察でした。
何かコメント等あればぜひ個別でもお願いします。
それではまた今度。

仮想通貨を用いた新メディア「ALIS」は何が新しいのか考察

最近仮想通貨の普及に伴いそれ自体の売買にとどまらず色々なサービスにエッセンスが応用されだしています。本稿では仮想通貨とそれを支える技術を用いてメディアの新たらしいあり方に挑戦をしている「ALIS」について取り上げます。

どんなメディアなのか?

ALISは簡単にいうとコンテンツの書き手とコンテンツの評価者に対価として仮想通貨が支払われるメディアプラットフォームです。

昨今Googleのコンテンツ評価の仕組みをハックしたグレーなキュレーションメディアやアフィリエイトサイトの氾濫により低品質サイトにあふれた現状を打開するためのテーゼとして打ち出されました。

従来のメディアにありがちな広告のためのコンテンツ、ステルスマーケティング、信頼性の低い情報に うんざりしている人々を解放することがALISの目的です。

同社公式サイトより引用:https://alismedia.jp/ja/index.html

 サービス自体はまだ計画の段階で現在目下開発中のようですが、ICOを目指す中でその発想のユニークさから話題をよび注目を集めています。2017年9月にICOによる4.3億円の資金調達を成功させたとのこと。

実際にはどんな仕組みなのか?

ALISは実は世界的に見ると初の試みというわけではなく、先行する海外サービスである「Steemit」https://steemit.com/ が存在します。

2016年に立ち上がり、2017年後半段階で400億円近い価値のついているサービスです。
記事執筆の2018年1月段階では日本語のサポートも開始しているようですがまだ日本語記事は少ないようです。

ALISがSteemitに深く感銘を受け大いに参考にしており、その点については同社が正式に公表しています。

正直に言うと、我々はSTEEM(https://steem.io)に大きな感銘を受けたところからこのプラットフォームの構想をスタートした。

同社ホワイトペーパーより引用

https://alisproject.github.io/whitepaper/whitepaper_v1.01_ja.pdf

Steemitについての説明は下記のブログに詳しいので本稿では説明は割愛させていただきます。 

広告収益に依存しないWebメディアの新モデル「Steemit」とは

Steemitではコンテンツ作成者およびコンテンツ評価者に対して付与される仮想通貨の区分が複数存在し複雑なのに対してALISは1種類の仮想通貨に統一しわかりやすいです。

Newspicksでも5000pick以上され大いに話題になっていたチャーリーさんのブログでも図解されていましたがこのような仕組みです。(チャーリーさんの図解を拝借します)

 

 個人的には「売上」というものが存在せずALISの通貨としての価値が高まることでコンテンツ作成者と評価者に継続して支払いを可能にする、という考えが「なんと、そんなこと可能なんだ」って感じです。

何が革新的でメディアの何が変わるのか?

 仮想通貨を用いているという点ですでに斬新な香りに満ちていますが、ここではALISをメディアプラットフォームとして考え、機能を分解し同サービスがどういった点で既存のサービスと差があるのかについて考察をしたいと思います。

 考察をするにあたって、コンテンツの生産(調達)・流通の両方の機能を持ち合わせているプラットフォームを「完結型」。そのいずれかが欠けているものを「非完結型」とし、下記のように整理しました。

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いくつかALISにとって大事そうな論点についてまとめました。

1.流通補完プレーヤーをうまく囲い込めるか

非完結型として挙げたnoteは強力な流通機能を独自に持っていません。(noteが独自で読者候補を集客してくれるのでなく生産者が各自のブログやSNS等で集客していますよね。)

先行するsteemitをみてもそれ単体で強い集客力を持っているとは思えませんのでおそらく非完結型に区分されるかと思います。

noteユーザーを見ていてもわかりますがthestartupの梅木さんやイケダハヤト氏、あるいははあちゅうさんなど元々ネットにおける著名人で各自のブログやSNSで集客が可能なプレーヤーが好んで使用している印象です。ALISにおいてもこうした人たちにどう参加してもらえるかがポイントかと思います。

2.コンテンツ作成者をどのように獲得するか

noteを見る限り基本的には個人のコンテンツ作成者が多い印象です。
noteにサイゾーを見つけましたが普段あまりその他例を見かけないなと感じています。

※有料でオンライン販売することが本体の記事や雑誌との兼ね合いでうまくバランスがとれないのでしょうか?

またsteemitをざっとみるかぎり個人の書き手が多い様です。 おそらくはブログやメルマガよりも収益性が高いために利用しているのでしょうからAlisにも同等の収益性が期待されるのかなと思います。

最後に

 仮想通貨熱がどんどん加熱しているなかでそれとメディアビジネスをうまく接続しようと挑戦している点はすごく面白いと思います。最初は仮想通貨メディアからスタートしていずれはすべての口コミメディアをディスラプトする気概のようですので今後が気になります。

うまくサービスが初期で軌道にのるかどうかに関してはおそらく上記で挙げたネット上のインフルエンサーをうまく賛同者として集められるかがポイントかと思いますが先日開催されたミートアップでのスライドをみるかぎりしっかりと意識できているようです。

※その点に関してはこちらのブログが参考になります

ALISのICOで約4.3億円調達!ミートアップに参加してきた | ポインの仮想通貨ハマって(中毒って)ます!!

 ※個人的にはLINEの田端さんあたりは声がかかっているのかな、と勝手に想像しています。

 まだまだ仮想通貨自体が真新しいものであるため最初は一部のユーザーの利用にとどまるでしょうが、noteの「読む前に課金」という形式に対してALISが目指している「よいコンテンツをユーザーが選ぶ」のどちらが受け入れられる(あるいは共存する)のかが気になるところです。

以上ALISについての勝手な考察でした。
2018年4月にベータ版OPEN予定のようですのでそのころに再度取り上げたいなと思います。それではまた。