ZOWEB

色んな会社のビジネスモデルを調べるブログ

今後生き残りたいメディアはプラティッシャー化すべきであると思う件

「プラティッシャー」という言葉が登場してからずいぶんと時間が経ちました。日本では現Newspicks編集長の佐々木氏やドワンゴ川上氏等がその必要性を説いていたように思います。

筆者自身も日本でCGM型のWEBメディアの運営に携わる立場として、中期戦略を練る上で思考を重ねましたが調べれば調べるほど上記のような考えに至るわけです。

プラティッシャーという言葉は一時のプチバズワードのように扱われて、もうあまり言葉としてメディア上で見かける機会が少なくなった気がしますが、筆者個人としては流行り廃りの関係ない重要なテーマであると感じています。

そこで本稿ではプラティッシャーとはなんたるかを改めて記すとともに、その必要性について論じたいと思います。

■そもそもプラティッシャーとは?

プラティッシャーとは

パブリッシャーとプラットフォームの2つの側面を持つ存在を指す造語です。

ソーシャルメディア「Sulia」のCEOであるジョナサン・グリックさんという方がこの言葉の産みの親のようですね。

▼参考記事

「プラティッシャー」の頓挫:〝バーベルの中間〟はデッドゾーン | 平 和博

 

少し脱線しますがプラティッシャーという言葉自体はあまり評判がよくないようで、ジェイソン・キントという識者曰く、

「アヒルにビーバーの尾っぽをつけるか、ビーバーにアヒルのくちばしをつけるようなもの」

 

元記事:Say What? Technology-Infused Publishing Is Good Business. | Re/code


とのことです。欧米ですね。

そんなコジャレた皮肉を言っている暇があったらそれにかわるイケてるネーミングの1つでも提案してもらいたいものですが、、。


さて、本筋に戻ります。

 

2つの側面とはどういうことか、単純化して語ると

以下のようになります。

 

・パブリッシャー(コンテンツを生み出す)

・プラットフォーム(コンテンツが集まってくる)

 

少し乱暴な気がしますがこういうことです。
実施のサービスをあてはめてみるともう少しピントきやすいかもしれません。

 

f:id:hayashi00:20150508073109j:plain


自らが記事を書きそれを配信するのがパブリッシャー。

例えばこういったサイトがパブリッシャーですね。もちろんこの例以外のにも山ほどありますが、、、

※特にこれを選んだ理由はありません。よく勉強会で題材にしているからです。


プラットフォームは例えばYahooニュースやライフドアニュースのようなニュース

ポータルやニュースアプリがそれに該当します。

 

彼らは自ら記事を書くのでなく、契約を結んだパブリッシャーから提供された記事を

配信しています。その代わりパブリッシャーに対しては関連記事としてPVをバックしています。

※契約パブリッシャーへのコンテンツ利用料は有料のケースもありますが無料の場合が多い。

 

パブリッシャーはなぜわざわざ自らがコストをかけて作成したコンテンツをニュースポータルに提供するのか?
それはそうすることがパブリッシャーにとってPVを稼ぐ上で一番の近道だからです。

プラットフォーマーにはコンテンツを拡散(流通)させる力(ユーザー数)がありますから。

であれば、

「yahooニュースさんに記事を無償で提供してその分関連リンクからPVをバックしてもらおう」という話になるわけですね。

プラットフォーマーの力をかりることなくPVをかせぐことは通常パブリッシャーにとっては非常に困難なことなのです。


逆にプラットフォーマーは質のよいコンテンツを提供してくれるパブリッシャーの存在なくして成り立ちません。原則自らはコンテンツをつくらないわけですから。

このように日本のWEBメディア業界においてはパブリッシャーとプラットフォーマーの持ちつ持たれつな関係性が存在してきたわけです。


・パブリッシャーからみた限界:上限が見えているいつまでたっても楽にならないビジネス

 

こうしたなか、

一部のメディアが両社の性質を兼ねることを目指して動き出しました。

 

例えば東洋経済オンラインもその一つ。

詳しくはこちらの記事を参考にしていただければ思います。

somewrite.jp


要点だけ引用させていただきます。

佐々木氏「経済カテゴリーではPVでトップになりましたが、コンテンツを拡張したり、テクノロジーを強化したりしないとPVはこれ以上伸びない。マネタイズも広告だけだと遠くない将来に上限がくると感じています。現状の東洋経済オンラインはパブリッシャーの立ち位置ですが、今後はよりプラットフォームに近づいていかなければ生き残れないと考えています」

 

多くのパブリッシャーは

 

■収益

・純広告、アドネット広告

・ネイティブ広告/タイアップ広告

 

■コスト

・記事作成(インハウス編集、外部ライター)

 

というイメージでしょうが、
収益面はPVに比例=作成記事本数に比例。コスト=記事本数に比例。

 

つまりどこまでいってもあまりレバレッジのきいた状態に

なりません。しかもプラットフォーマーのユーザー=流通力にも限界がありますから例え利益率も無視して記事を配信しつづけてもいずれPVの伸びには限界がきます。

 

・プラットフォーマーからみた限界:ユーザーを囲える理由が必要

グノシー、スマートニュースといったニュースアプリが話題になっていますがそれでも日本におけるプラットフォームとしては未だYahooニュースが圧倒的です。

▼2015年2月15日の記事

www.excite.co.jp

主要なニュースアプリで最も利用者が多かったのは「Yahoo!ニュース(39.7%)」で、「SmartNews(15.7%)」「LINE NEWS(13.1%)」「Gunosy(11.2%)」と続いた。

 

良質なコンテンツを生み出すパブリッシャーの数は限られています。

日本だとおそらく1000以下ではないでしょうか。

そう考えるとどのニュースプラットフォームも同じようなコンテンツを配信することになります。

 

ユーザーからしてみれば

 

・Yahooさんが配信しているニュースだから価値を感じている

・ライブドアから配信しているニュースでないと読む気がしない

 

という心理はほとんど発生していないはずで、毎日なんとなく見てしまうというだけのはずです。

 

つまりプラットフォーム側はユーザーを囲うために最大限の努力をする必要があるわけです。

ニュースアプリの「〇〇万人ダウンロード達成!」を見ると彼らの努力が伺えますよね。

 

ニュースアプリは機械学習等のテクノロジーを用いてそのアプリの独自性をアピールしていますが、筆者は正直そこは現時点では本質的なサービスの優位性にならないと感じています。こと日本に限ってはテクノロジーを駆使して分別するほど良質なコンテンツは溢れかえってはいませんし、パーソナライズのアルゴリズムもおそらく各社似通ってくるでしょう。

 

その証拠にといってはなんですが、筆者のスマートニュースとグノシーの記事一覧画面はそっくりです。

 

そこでプラットフォーマーとしては自社独自の〇〇を模索していくなかで、

自社独自の「コンテンツ」の可能性を模索してパブリッシャー的な機能を自社でも強化するようになってきているのです。

 

 

いかがでしたか。
こうした潮流を知ってから最近のメディア界隈の動きをみると各社の思惑が少し見えてくるのではないでしょうか。

 

本ブログではプラティッシャーに関する目立ったニュースについて今後も独自の論考を行いたいと思います。


それでは今日はこのへんで。

 

老舗メディア「オールアバウト」のビジネスモデルを研究してみた

■はじめに

2015年現在、WEBメディアに関わる仕事をしている感じるのは、「タレント(才能をもった個人)の囲いあい」が始まっているということです。
その分野に詳しい・もしくは経験のある個人を囲い、コンテンツ作成者としてメディアのビジネスモデルに組み込むことがメディアとしての成功要素の1つになっているとすら感じます。

そんな中ふと個人的に思い出した、というか急に気になりだしたのがオールアバウト。元祖個人を囲う型メディアですね。

もちろん前々から会社(メディア)としては認知していましたが、しっかりと分析したことがなかったのでこの機会に少し詳しく調べてみました。

■オールアバウトとは?

もともとはリクルートと外資との合弁会社です。
All About(オールアバウト)は、株式会社オールアバウトが運営する生活情報サイトである。

2001年に株式会社リクルートとアメリカ合衆国のAbout Inc社との合弁会社として運営をスタート。

 引用元:http://ja.wikipedia.org/wiki/All_About

12年後の2005年09月に株式上場し、以来7年間上場を維持しています。オールアバウトは大日本印刷系のグループに属し、自身も子会社2社でオールアバウトグループを構成しています。

株主には大日本印刷株式会社(32.07%)と株式会社リクルートホールディングス(29.96%)とヤフー株式会社(19.88%)が名を連ねています。

 引用元:https://kmonos.jp/2454.html

 

・1000名近い専門家が1300を超えるジャンルで執筆

AllAboutは各業界の専門家(ガイド)がつくり上げる総合情報メディアです。
各業界1人を原則として専門家を囲っており、2015年3月現在で、総勢890人の専門家が1300を超えるテーマで執筆。累計15万本以上の記事を書き上げてきたとのこと。

記事数的にはnanapiの1.5倍位でしょうか。

その分量をクラウドソーシング的でなく丁寧にお金をかけてつくったと思うとすごいですね、、。

閲覧数に関しては決算ハイライトから引用させていただきます。

f:id:hayashi00:20150404213612j:plain

 

※平成27年3月期第2四半期決算説明会資料より抜粋。

 

現在では月間2億以上のPVがあるようです。
何と言ってもその専門家ネットワークが強みで、各専門家がライティングしたコンテンツを社内編集部が調整し、Allabout及び、姉妹サイトであるターゲット特化型メディアのFORMforF等に掲載していいます。

 

■オールアバウトのビジネスモデル。マネタイズは広告収益。


同社のビジネスモデルを図解すると下記のようになります。

 

f:id:hayashi00:20150404213715j:plain



私は個人的に勘違いをしていたのですが、コンテンツの執筆主であるガイドに対しては報酬が支払われてるんですね。
元関連サイトの専門家プロファイルは専門家から課金でしたのでちょっと混じって考えていました。

報酬に関しては随分古そうな情報ですが、下記のサイトに記載がありました。

 

 基本業務委託料:3万円/月

 インセンティブ:3ヶ月ごとに評価

 ガイドの報酬は、3万円+αというわけですね。

 引用元:http://directory.e-kurage.com/allabout2.htm


広告主に対しての提供メニューは色々とあるようです。
純広告やタイアップ記事などのオーソドックスなものから、


・スポンサードサイト・・・広告主のオウンドメディアをAllAboutが製作・運用


なども取り扱っています。

コンテンツマーケティングが盛り上がってきた今でこそよく見るタイプの広告ですが、10年以上前からこの取組をしていたと考えるとなかなかうまいなと感じます。

■財務諸表分析。営業利益率は脅威!?の3%弱。

個人的には非常に意外だったのですが、同社の利益率は非常に低いです。
メディア企業としてはかなり珍しい数字なのではないでしょうか。

 

f:id:hayashi00:20150404213837j:plain

※第23期第3四半期四半期報告書を参考に筆者が作成

 

ガイドに対しての報酬や編集体制、広告営業体制等が重いのでしょうか、、。

 

■今後のオールアバウトはビジネスモデルの転換を余儀なくされているのでは?

上記でみたように同社は利益率が低く、圧迫しているのは丁寧な編集体制であると予想します。
つまりコンテンツを作り出す上でのコスト構造を変えない限りはドラスティックな結果は得られないと考えられます。

サーチだよりであったトラフィックを提携メディア等から増加させるためのまとめ記事の取り組みもあるようです。ゼロから記事を書くのよりは随分ましなのでしょうが、それでもやはりコストのかかる作業でしょう。

現在WEBメディア界隈では元オールアバウト編集長さん達が各種流行りのメディアの編集長として大活躍している例をよく目にします。

そんなWEB編集人財輩出会社であるオールアバウトですが、今後何か大きな転換はあるのでしょうか。個人的に気になるところです。

 

少し真面目にキュレーションメディアの今後について考えてみた

■はじめに

いわずもがなですが、2014年からキュレーションメディアと呼ばれるタイプのメディアが急増しています。

2014年のキュレーションメディア創世記段階では、バイラルメディアの急成長の背景もあり最終的にどうなるのか、という議論が意外となされないまま現在に至っているように感じます。

しかしiemo、meryといった大きめの事例をはじめ直近で言うと4meee!もバイアウトの道を選びました。こういった出口に至った例を見て一部識者の中には、「キュレーションメディアはバイアウトを目指したほうがいい」的な見方が生まれてきました。

そこでいよいよ個人的に今後キュレーションメディアがどうなるのかについて考えてみることにしました。
※当然筆者の勝手な想像も含まれておりますので予めご了承ください。

ちなみにキュレーションメディアと一口にいっても広いので、本稿では下記のような読み物メディア的な形式のものを想定しています。

 

 

■キュレーションメディアってなんでこんなに話題になってるの?

 

・Googleで「キュレーションメディア」と検索された回数の推移

 

上記のグラフを見てもわかるように2014年以降このワードが注目されているのは確かなようです。
しかし、キュレーションメディアの何がそんなにすごいのか?

それは彼らの成長のスピートです。

 

下記のデータを御覧ください。

  • TABILABO ・・・ ローンチから5か月で3000万PV
  • 4meee!  ・・・ ローンチから6カ月で2500万PV
  • CuRAZY ・・・ ローンチ初月で870万PV 

 出典

4meee: http://thebridge.jp/2015/01/4meee-surpass-25m-pv-in-6months
旅ラボ:http://tabi-labo.com/35338/tabilabopress01/
CuRAZY:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000008508.html


枚挙にいとまがありませんが上記の例を見るだけでもキュレーションメディアがどれだけ早くPV成長をしているかが伺えます。

 

同じようなメディア規模でいくと

  • 美レンジャー ・・・ 2500万PV  (2011年~)
  • lifehacker ・・・ 3890万PV  (2008年~)

※いずれも媒体資料より。

といえばよりその凄さが伝わりやすいのではないでしょうか。

 

■どうやったらそんなことが可能になるのか?キュレーションメディアの勝ちパターン

 

もちろん「The成功のセオリー」なんて存在しないのは承知のうえですが、キュレーションメディアは概ね下記のような流れで成長をしています。

 

1.記事を安く大量に仕入れ(クラウドソーシング、アルバイトで内製)

2.SNSでバズるようにする。(FB広告、ニュースアプリと提携)

3.PVが一定ラインを超し、アドネット以外の純広などがとれるように。

4.上記の収益を更に記事やFB広告などに投資

繰り返し

 

特にポイントになっているのは1と2です。

 

1.キュレーションメディアを支えているのは大量の「そこそこ記事」

 実施にサイトを見ていると感じることですが、最近誕生したキュレーションメディアはとにかく誕生直後から更新頻度・本数が多いです。

 

この生産体制を支えているのがランサーズ、クラウドワークス等を使った外注です。サービスによっては独自にライター(っぽく書けるちょっと文章とセンスのよい人)を囲っていたりします。
4meeeやbySなどがその典型例といえるでしょう。

 

▼4meee生産体制参考記事


女子向けキュレーションメディア「4meee!」が6カ月で2500万PV到達、その成長の理由とは - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

 

従来型のニュースメディア(=オールドメディア)からしてみたら1本500円とか1000円で記事をガンガン配信されたらたまりません。その何倍ものコストをかけているはずですから。※10倍以上の例もあるでしょう。

 

記事作成にかかわるコストを

  • A:取材/リサーチ
  • B:ライティング

にわけた場合キュレーションメディアだとAは格段に安くなります。
なにせそのほとんどがWEBリサーチですから。
Bに関しても新聞社の記者やプロのライターと比べて当然アルバイトやクラウドソーシングのほうが安くなるので2重にコスト安です。

スマホがここまで普及し、ニュースアプリが浸透したこともあり、より細切れの情報に対してのニーズが高まりました。

もちろんその限られた分量でもプロの仕事というものは差がつくものでしょうが、やはり差が目立ちにくくなったことは事実だと思います。

キュレーションアプリの多くが画像(+タイトル)重視であることを考えるとなおさらです。

「画像を準備するにもコストがかかるだろう?」という疑問は彼らから言わせればナンセンスです。

無料でどこからか調達してきているわけですから。


2.SNSでバズるようにSNS広告に大量投資

 キュレーションメディアに近い概念として2014年日本のメディア界を騒がせた「バイラルメディア」というものがあります。

定義は様々でしょうがトラフィックのほとんどをSNSから得ている特徴がありました。

キュレーションメディア=バイラルメディアとは考えていませんがSNSからのトラフィックを重視する点に関しては同じでしょう。
事実最近露出の多いキュレーションメディアのほとんどはFBいいねを10万以上獲得しています。

彼らの多くはSNSから安定的なトラフィックを稼いでおり、その土台づくりとしてFB広告に予算投下をしているはずです。

 

「まじめに続けていればその位いいね獲得できるじゃないの?」という声がきこえてきそうですが、例えばぐるなびが運営しているippinは数少ない広告投下をしていない例と見られますが、

FBいいねは本記事執筆時点で若干1575です。

ippinはニュースアプリと連携もしていますのでPVがほとんどない状況ではないはずです。

前述の小学館の運営する美レンジャーを例にあげると、PV2500万(※媒体資料より)に対していいねは1万を切っています。

単純にPVに比例していいねが獲得できるわけではないです。
だからこそ「ソーシャルメディアマーケティング」なんて言葉も生まれるわけですね。

 

当たり前ですが、いいねを大量に獲得しているとFB投稿経由からのトラフィックが増加します。

一度投資していいねの母数を獲得すれば拡散の確立が高まるため効率のよい投資として判断されているのではないでしょうか。

 

平均いいね単価50-100円の間と想定し、オーガニック--有料比率を2:8程度と考えると10万いいねに至るまでに500万-1000万円程度はコストとして投下済みと筆者は予想しています。

 

結局今後どうなるの?→読み物メディア的な広告掲載モデルでは限界が訪れる

 

キュレーションメディアの売上=PV数と考えると単純に

 

売上=記事数×提携メディア数×バイラル率※1

 

の3つの要素が売上を左右するということになりますが、下記2点がキュレーションメディアの成長の限界を考える上でのポイントかと思います。

※1:筆者の造語です。単純に記事単位でのバズりやすさを意味します。

 

1.提携メディアにも当然枠数の限界がある

各種ニュースアプリの提携メディア数はすでに数百になっており、どんな記事でも載るというわけではありません。また今後も枠を狙った争いは熾烈になっていくでしょう。提携すること自体もハードルが高くなるでしょうし、提携出来ても必ず掲載に至るわけではありません。


2.Facebookユーザーも有限であるため、バイラル率を高めるにも限界あり

キュレーションメディアを運営する上で大事なのはFBファン数を獲得することであり、そのために各社FB広告を駆使しているであろうことを記載しましたが、もちろんFBユーザーは有限であり、なかでも自社メディアがターゲットとするユーザーで高いエンゲージが狙えるユーザーは限られています。

 

そのため売上の一部を再投資していけば無限に成長ということはもちろんありません。PVがどの程度までいったら成長が鈍化するかはターゲット属性+メディアの特性次第でしょうが、早ければ1000万PV未満というところではないでしょうか。

 

上記の理由から今後キュレーションメディアがとるべきは下記の戦術ではないかと予想しています。



a.編集の質/独自色を強めて提携メディア内での存在感を強化

グノシー、スマートニュースなどのニュースアプリが今後どんどん登場することは正直考えづらいと思うので狙うのであればその中でのヒット率を上げることです。

筆者が思うに今後のキュレーションメディアの世界では、しっかりとした企画力・編集力のあるプレーヤー以外はほとんど生き残らないのではと思います。

逆にいうと質のよいキュレーションメディアはまだまだ少数であると感じますからしっかりとしたレベルの編集者が携われば勝ち目は高いです。

Tabilaboなど一部のメディアでは外部から有力編集者を迎え入れて独自色を高める動きをすでにとっていますね。

キュレーションメディア「TABI LABO」がピボット——佐々木俊尚氏を共同編集長に迎え、モバイル志向のカルチャーメディアに進化 - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

 

b.純広告、アドネット広告以外のマネタイズに着手

すでにMeryが取り組んでいるECや、旅行系メディアで見られるような送客課金モデルを取り入れることで収益率を向上させる動きがとられるでしょう。

そう考えると旅行系キュレーションメディアで収益化に困っているプレーヤーは買収の対象になりやすいかもしれません。

 

c.コンテンツが無料で集まる仕組みを構築

これはそもそもサイトのコンセプトやシステムを大きく変更することになりますが、成功した場合非常に強いです。

例えばユーザーレシピまとめのCookpadニュース、食べログまとめやママ系QAのママリなどがそれにあたるかと思います。無料でコンテンツ集まるモデルを確立出来ているメディアはいつの時代もやはり強いです。



以上キュレーションメディアについて個人的に思うところをまとめてみました。

すでにiemoのように単純な広告掲載モデルと全く違うところでマネタイズを狙っているメディアも現れていますが、むしろそうでないメディアの方が多数派であるように思います。

おそらく数人でまわして月々何百万位の利益を獲得するには非常においしいモデルな気もしますがアップサイドに限界があるように思いますので今後の各社の動きをウォッチしようと思います。

 

 

ついに上場承認のiid (イード)社のビジネスモデルについて分析してみる。

はじめに

レスポンス、RBB TODAYなど30以上のメディアを運営するiidがついに上場とのこと。
複数業界の多数のメディアを持つメディア・コングロマリット企業として前々から注目していた企業ですが、上場を機に彼らの有価証券報告書の内容を参考に色々と分析したいと思います。


iid(イード)とは?

f:id:hayashi00:20150301232804p:plain


・どんな会社?

 

元々は1990年に日産自動車の100%出資子会社としてスタート。
マーケティングリサーチをベースとしたデザインマネジメント・コンサルティング会社として設立されています。

その後2000年にブロードバンド系総合情報サイト「RBB TODAY」の営業権を取得したところからメディア運営の領域にも進出。

その後数々のM&Aを繰り返し、今では7業界34のメディアを運営する企業となっています。

 

・どんな事業

彼らの事業は大きく2つに大別することができます。


▶CMP

・メディア運営及び、自社メディアを使った企業支援(広告掲載など)。

 運営メディアから得られる広告収益を主にマネタイズしていると考えられます。また、企業に対してコンテンツやデータを販売することもあるようです。

 

全保有メディア合算で約1億PVほど。
主要メディアのPV等については下記。

 

レスポンス:54,637
RBB TODAY: 17,049
インサイド:7,992
(単位:千PV)


▶CMS

・インターネットリサーチ、ユーザテストなど
・ECシステムのASP


・事業の特徴

 iidは2000年にメディア運営事業に乗り出して移行、15年で30を超えるメディアを保有するに至っています。その背景にあるのは多数のM&Aです。

彼らは自社が運営するメディアを、自社開発の「iid-CMP」というコンテンツ管理プラットフォームを用いて管理しています。

 各種WEB集客・広告収益に最適化されている点等、様々なメリットがうたわれていますが、なんと言っても筆者が一番注目に値すると感じたのは、「記事交換機能」です。有報から抜粋させていただくと、

掲載されているニュース記事を、「iid-CMP」上の他のWebメディアでも担当編集者の判断で掲載することが出来る機能

 とのことで、要は自社メディアが増えれば増えるほど共有出来る記事が増えるため、メディア同士でシナジーを生むことが出来るわけです。

だからこそ彼らは「2年以内に単月黒字化」という独自の基準を設けています。

 

iid(イード)社のビジネスモデル

 

同社のビジネスモデルは下記のようになっています。



f:id:hayashi00:20150301233055j:plain


おそらくベストケースとして考えられるのは、CMP事業(メディア運営)でセグメントされた領域に興味のあるユーザーを囲い→彼らに関するデータを販売 → 彼らがリサーチに参加 

のように両事業がシナジーを生むことかと思います。
そういった意味では「e燃費」などがその例に当たるのではないでしょうか。

■市場分析

有価証券報告書を見ると

 当社グループはコンテンツマーケティング企業としての地位を確立するために・・・

 とありますが、事業の内容を見ると


・メディア運営
・マーケティング・リサーチ

の2つに分けられます。
しかし今後自社メディア網、及びコンテンツ編集力を活かし企業のコンテンツマーケティング支援に乗り出すことも視野に入れての有報での記載だと思いますので

・コンテンツマーケティング支援

 

の市場についても触れておきましょう。

 

・メディア運営の市場規模

→メディア運営については市場規模の天井を測ることは困難ですので割愛します。

 

・マーケティング・リサーチの市場規模

約1800億ほどの市場。インターネットのみで600億弱。

 

f:id:hayashi00:20150301233250j:plain

引用元:日本マーケティング・リサーチ協会「第39回経営業務実態調査」

 


・コンテンツマーケティング支援の市場規模

→たいぶ乱暴な予測になりますが。
マーケティング手法の一種ですので、広くは広告市場の一部なので以下のように考えます。

 

f:id:hayashi00:20150301233311j:plain

 ※株式会社電通「日本の広告費2013」を参考に筆者が作成。


まだまだ確立されていない市場のため正確な予測は困難ですし、コンテンマーケティングの定義次第な気もしますが、2015-2016にかけては取り急ぎ上記を大きく上回る市場ではないとでしょう。

 

 

収益・コスト分析

・売上・利益率

ここからは有価証券報告書(Iの部)をもとに数字を紐解きます。

まずは売上及び利益率の推移から。

 

f:id:hayashi00:20150301233344j:plain


メディア銘柄にしては原価率が高いことがわかります。
営業利益も15%を切っていますね。



・事業別売上:どの収益が大きい?

 

セグメント別に数字をチェックします。

f:id:hayashi00:20150301233415j:plain

 CMSの営業利益率の低さが全体の利益率を押し下げている原因のようですね。

 

・どんなコストが発生している


・原価の内訳

 

f:id:hayashi00:20150301233509j:plain

 原価の大部分を占めるのは外注費。

 

・販管費

 

販管費の内訳をみると以下のようになっています。

 

f:id:hayashi00:20150301233527j:plain


H26にかけて広告に投下した分販管費率があがっていますね。



【結論】iid=コンテンツにしっかりとお金をかけている手堅いメディア企業。成長のポイントは今後のM&A次第か!?

 

営業利益率15%前後と、メディア銘柄としては高収益体質とはいえないものの、堅実に成長が狙えるのではないでしょうか。

 

しかし、

自社メディア30サイト以上の合計で1億PVの内上位3サイトで8000万PV程度を獲得しているため、その他サイトのPVは平均で100万PVを切っているため、まだまだということになります。

M&Aで迎え入れたメディアがヒットするか否かが今後のiidの肝だと思われます。

 

メディア銘柄であればPER50-70倍ついている例が見られますが、iid社の場合は30-40倍に落ち着くのではないか?

 

と勝手に予測をさせていただき、しめとさせていただきます。



秀逸オウンドメディア「弁護士ドットコムNEWS」を分析してみました。<コンテンツマーケティング編>

 はじめに

前回の記事に続き本稿では弁護士ドットコムの成長を支えたコンテンツマーケティングについて分析を行います。(筆者の独自の解釈が含まれますがご容赦ください。)

 

▼前回記事


秀逸メディアと名高い「弁護士ドットコム」を分析してみました。<ビジネスモデル編> - ZOWEB

 

弁護士ドットコムはYahooニュースとも提携しているオウンドメディアである「弁護士ドットコムNEWS」を運営しており、オウンドメディアを集客エンジンとしサービスを成長させてきました。

同サイトの分析を通してコンテンマーケティング成功の秘訣を紐解きたいと思います。

 

全体像

 弁護士ドットコム、そして「弁護士ドットコムNEWS」の関係性は以下のようになっています。

 

f:id:hayashi00:20150222173843j:plain

 

※「みんなの法律相談」もコンテンツマーケティング的な観点からいえば立派な分析対象ですが、今回はオウンドメディアの成功例としてドットコムNEWSにフォーカスすることにします。

 

弁護士ドットコムNEWSが各種ニュースメディアに記事を配信し、トラフィックバックを受けることで法律(法的なもめごと?)に関する見込み客を囲い、大本のサービスである弁護士ドットコムに送客するという構図ですね。


弁護士ドットコムニュースとは?

f:id:hayashi00:20150222172619j:plain

 

弁護士ドットコムニュースは、最近のニュースに対して法律の観点から専門家の解説をつけた記事を配信する法律系ニュースサイトです。

もともとその領域をカバーしているプレーヤーが不在であったためほぼ立ち上げと同時にYahooニュースと提携がスタートしているようです。立ち上げ間もないメディアがメディア界の重鎮と提携出来るケースはかなり稀有な例でしょう。

 

・身近なニュースになぞらえて法律を語っているので受け入れやすい

法律というと無条件に堅苦しい印象がありますが、たとえば同サイトに掲載されている記事をみると以下のようなものです。

 

・ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに——カップルが使うのは違法?

・47歳男性。妻と「10年間セックスレス」で気が狂いそう――望めば「離婚」できる?

・ろくでなし子さんの「まんこ」発言に裁判官「それ以上続けると意見陳述制限します!」

 

週刊誌的・ワイドショー的なネタを題材にすることでとっつきにくさを払拭しています。元々同社の理念が「専門家をもっと身近に」であることを考えると非常に理念にもマッチしたコンテンツであるといえるでしょう。

 

大本のサービスが法律に関するQAという性質上、サイトとしての認知・信用を獲得するという点でトラフィック以外にもメディア提携で得ているものは大きいと考えられます。



・弁護士ドットコム全体で月間700万訪問者を獲得。直近の3年で9倍の成長!ドットコムニュース単体でも500PV近くを獲得している!?

 

f:id:hayashi00:20150222172642j:plain



同社プレスリリースから引用

 

また、少し前のインタビュー記事をみると、

 

弁護士ドットコムトピックス単体で月間訪問者数は200万人、PVは300万を超えることもある。弁護士ドットコム全体では月間訪問者数440万人、PVは1,100万に上る月もある。

 

という記載があります。

2014年2月時点でのインタビューであるため、ここから本体サービスに対する流入はプレスリリースが行われた2015年2月まで大きく変わっていないと想像します。(決算書に広告費に対する投資が見られなかったため。)

 

そのため、仮に弁護士ドットコム本体が240万訪問→350万訪問に成長しているとすると、ドットコムニュースで獲得している訪問数が350万。

 

同様に上記のインタビュー記事から

訪問あたりPVを1.5と読み取り、現在のドットコムニュースのPVを予測すると

350万訪問×1.5PV=525万PV

 

500万PVを超えるニュースメディアに成長していると予測します。

 

日経新聞のインタビュー記事

 

記事本数は月間130本になり、編集部の人員も「もう少し増やすかもしれない」という。これまでの記事が累計で1500本を超えており、

 

という記載があります。

ここから推測すると2015年2月現在約2000本の記事があるわけですが、そう考えると

500万PV÷2000=2500PV

1記事あたり2000PV以上を獲得している計算になりますね。(もちろん実際は記事あたりの偏りがだいぶ大きいでしょうが。)

 

法律+新聞社のバックグラウンドを持つ編集長率いる編集チーム

 

冒頭でも少しご紹介した通り弁護士ドットコムニュースの記事は

 

・前半=時事トピックスの説明

・後半=弁護士が法律の観点からニュースを解説

 

という形式になっており他のニュースメディアと比べると独自性の強いスタイルを持っています。

月間で100本以上の記事を配信している彼らの体制は



5人の社内編集者兼ライターと20人ほどの外部ライターらが記事制作を支える。

出典:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO75600560T10C14A8000000/?df=2

 

とのことで、それを率いるのが
朝日新聞の記者から、J-CASTニュース、ニコニコニュース(ドワンゴ)編集長を歴任という経歴を持つ亀松太郎氏です。

 

亀松氏は以前司法試験への挑戦経験もあるとのこと。そう考えるとこのメディアの編集長として氏以上の適任者は考えられないかもしれませんね。

 

コンテンツマーケティングとしての総合評価

以上弁護士ドットコムの運営する「弁護士ドットコムニュース」にフォーカスし分析しましたが、最後に筆者の独断と偏見に基づき評価を行います。



f:id:hayashi00:20150222173202j:plain

 

  • コンテンツの独自性 :4.5

法律の専門家を囲っている彼らならではのコンテンツであり、ビジョンにもあったコンテンツであることから高い評価。

 

  • コンテンツの質 :4

もと新聞社レベルの編集が携わっている、という点で◎。
法律をもっと身近に、というテーマに沿うのであれば一般ユーザーの声などをうまく取り込むことでより読み応えのあるものになるのでは?



  • コンテンツの量 :3

現在月に130-150本?と予想するが、デイリー4-5本と考えると特段多い本数ではない。ストック性のあるコンテンツに関しては本体サイトに存在しているが(法律相談コンテンツ)スマホからは有料会員のみ、というマネタイズのポイントにしているため、ニュースコンテンツの中にうまくストックできるコンテンツも増やすのがよいのでは。

 

  • コンテンツのデリバリー(波及):4.5

多数の有力WEBメディアとの提携が◎。
ニュースアプリ等での存在感がさらに増せばなおよし。

 

  • コンテンツをつくる体制・組織: 3.5

法律の背景をもった編集長を含む強固なインハウス体制は良。
編集長への依存度が未知!?



秀逸メディアと名高い「弁護士ドットコム」を分析してみました。<ビジネスモデル編>

■はじめに

「専門家をもっと身近に」を理念を掲げ、法律相談ポータルサイトを運営する「弁護士ドットコム株式会社」が2014年末上場を果たしました。

同社はYahoo!トピックスにも頻繁に掲載される日本屈指のオウンドメディアを運営する、言わずと知れたコンテンツマーケティングの勝ち組。

今回は彼らのビジネスモデル及びコンテンツマーケティングについて考察します。
※内容がずいぶん長くなってしまったため、本稿ではまずビジネスモデルや収益分析を行い、後編としてコンテンツマーケティング分析を行います。

 

■弁護士ドットコムとは?

設立は2005年。

もともと大手法律事務所に勤務していた代表の元榮(もとえ)氏が、インターネットを使って法律を一般の人にもっと近づける方法はないか、と考え事業を興したのがきっかけ。

 

f:id:hayashi00:20150215110618j:plain

出典:wikipedia


元榮氏も自身が大学生時代に交通事故にあい、その際にどうやって法律のプロに相談していいのかに困った経験から本事業の可能性を信じていたようです。

 

・どんなサービス?

 

f:id:hayashi00:20150215110804j:plain


弁護士ドットコムは日本最大級の法律相談ポータルサイト。
離婚、借金、相続といった比較的身近な問題に対して相談出来る弁護士を検索できるポータルサイトです。

2015年2月段階で約7000人以上の弁護士が同サイトに登録していて、これは日本全国の20%に相当します。

 

f:id:hayashi00:20150215110824j:plain



サイトに会員登録すると、法律の相談内容を書き込む事ができ、登録弁護士の何人かがそれに対して返答。場合によってはそこから仕事の依頼につながるという仕組みになっています。

 

弁護士ドットコムのビジネスモデル

 

同社のビジネスモデルは下記のようになっています。

 

f:id:hayashi00:20150215110916j:plain


参考:弁護士ドットコム「成長可能性に関する説明資料」

 

同社の運営する「税理士ドットコム」はマッチング手数料モデルですが、弁護士ドットコムではマッチングでなく、広告掲載モデルです。サイト内検索時の上位表示やプロフィール詳細表示などですね。


■市場分析

同じく同社発表の「弁護士ドットコム「成長可能性に関する説明資料」を参考に市場について以下考察します。
上記のビジネスモデルで触れたとおり、同サービスの主な課金ポイントは

 

  1. 登録弁護士に対しての広告掲載
  2. 有料会員ユーザー

  

・弁護士に対しての広告課金

 

2015年2月14日現在で弁護士ドットコムには約7900人の弁護士登録があります。
現在日本には3.5万人の弁護士の先生が存在しますから20%強が同サービスに登録済みということですね。

同社の資料にも記載がありますが、そもそも弁護士の世界というのは広告も禁止されていたし、依頼主からいただく報酬も自由化されていなかったそうな。


それが2000年の広告解禁、2004年の報酬の自由化を経て状況が一変。
また、司法試験の制度がかわった、2006年以降弁護士の数が倍増しています。

 

f:id:hayashi00:20150215111110j:plain

 

つまり今後弁護士の先生達はしっかりと自分達をアピールせざるを得ない状況なるわけです。

今後15年をかけてさらに倍増するであろうことを考えると成長市場であると考えられます。



・一般ユーザーへの有料課金

 

そもそも弁護士ドットコムが存在するまでは、法律に関するQAプラットフォームなるものが存在しませんでした。

しかし市民生活を営む上で当然法律に絡む問題は存在していた。つまり多くのユーザーが誰に相談していいかもわからず、弁護士に頼むなんて自分のおさいふ事情を考えると無理、、と諦めてしまっていたわけですね。

 

今後も社会が複雑化していくなかでニーズは増すと考えてよさそうです。



・市場規模

 

弁護士ドットコムが発表している資料の中には

 

2000年:6495億=1人当たり収入3,793万円×17,126人
2010年:9511億=1人当たり収入3,304万円×28,789人


と記載があります。

個人・法人で大きさがだいぶ違うかもしれませんし、海外と比べてみたいところですが、本稿では割愛します。

少し乱暴な記載な気もしますが、
9500億×WEB広告比率15%と過程しても1000億はかたいのではないでしょうか。

競合といえる存在も無い中で上場時の同社の売上が数億円であったことから考えるとまだまだ今後大きく成長が見込めるといえそうです。

 

■収益・コスト分析

 

・売上・利益率の推移

 

ここからは新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)をもとに数字を紐解きます。

まずは売上及び利益率の推移を確認します。

 

f:id:hayashi00:20150215111309j:plain



・事業別売上:どの収益が大きい?

次に事業別の売上。

 

f:id:hayashi00:20150215111328j:plain



直近の売上拡大・利益率の向上は「弁護士マーケティング支援サービス」の開始によるものであると考えられます。

プラットフォームとして魅力的な規模になるまで弁護士からは課金せずコンテンツとトラフィックを集めて最近課金をスタートした、という構図でしょうか。

 

今のところ登録弁護士の10%程度がマーケティング支援サービスを利用しているようです。

f:id:hayashi00:20150215111451j:plain




・どんなコストが発生している?

 

販管費の内訳をみると以下のようになっています。

 

f:id:hayashi00:20150215111348j:plain



大部分が給与まわりですね。

課金ポイントが増したH26から販管費率が向上しています。H27以降ももう少し下がりそうですね。

 

今後の展開等

 

いかがでしたでしょうか。
法律の世界のQAサービスという特異なポジションを確立し、これからいよいよ収益化という様子でしたね。

弁護士に留まらず税理士の世界にもヨコ展開しさらなる拡大を狙っている点も評価のポイントでしょう。


上場時に初値が高くつきすぎたためか株価の推移は必ずしも絶好調とはいえないかもしれませんが、、。

 

f:id:hayashi00:20150215111438j:plain



とはいえブルーオーシャンである同市場において彼らの存在感は今後も大きくなり続けると考えて間違いないのではないでしょうか。

 

最後に今後の彼らの取り組みをご紹介し締めくくりたいと思います。

 

f:id:hayashi00:20150215111513j:plain

出典:http://www.slideshare.net/thekingofnights/201412-com

 


次回は同社の成功の裏にあるコンテンツマーケティングの取り組みについて考察します。

(2/22アップ予定。)

 

ECサイトのメディア化に成功。コンテンツマーケティングの雄「北欧、暮らしの道具店」を分析

はじめに

多くのECサイトが広告費に圧迫され苦しむなか、早くからコンテンツマーケティングに取り組み成功を収めている企業があります。

その名も「北欧、暮らしの道具店」。

多くのメディアで取り上げられ、名前を知っている読者も少なくないのではないでしょうか。

今でこそ売上、閲覧者共に右肩あがりを続けている勝ち組ECサイトとなった彼らですが、一介の北欧雑貨ECサイトに過ぎなかった彼らがなぜここまで成功を収めることが出来たのか?

本稿ではその理由について勝手に分析します。

「北欧、暮らしの道具店」とは?

f:id:hayashi00:20150208144613j:plain

 

IKEAの日本定着以降北欧雑貨が人気を博しています。
実店舗はもちろんのこと、多くのネットショップが北欧雑貨を取り扱うようになりました。

「北欧、暮らしの道具店」もまたそのなかのサイトの1つ。

北欧雑貨を中心に取り扱うセレクトショップとして産声を上げました。

 

以前は百貨店や楽天市場でも出展していたそうですが、高い出店料や広告料に苦しんでいる状況を打破すべくコンテンツマーケティングに乗り出したのです。

 

「北欧、暮らしの道具店」が行っているコンテンツマーケティングの全体像

f:id:hayashi00:20150208145623j:plain

 

トリプルメディアをうまく活用しています。

 

コンテンツマーケティングによってどんな効果が得られているか?

 

コンテンツマーケティングの定義については様々でしょうが、シンプルに

 

見込み客獲得 ▶ 顧客化 ▶ 顧客定着

 

をコンテンツを用いて有無ものである、ととらえた場合以下のような効果を生んでいると考えられます。

 

・見込み客獲得

 

・読み物系ページに、見込みユーザーを誘引

広告に依存していた以前までであれば接触することが出来なかった「すぐには買わないけど次インテリアを買うとしたらここで買おっと」というユーザーの獲得に成功しています。

 

商品にまつわる記事だけでなく、

・勝利のレシピや

http://hokuohkurashi.com/note/75938
http://hokuohkurashi.com/note/73516


・暮らしにまつわるハウツー

http://hokuohkurashi.com/note/77008

 

を配信しています。
今までのKWD連動広告や単ワードのSEO対策では得ることの出来なかったユーザーとの出会いがあるでしょう。

 

・「北欧雑貨」等の人気KWDでも上位表示

公表ではバックリンク対策は行っていないということでしたが、「北欧雑貨」等の人気KWDで検索すると2位の位置につけています。(2015/2/8時点。)

これはコンテンツにナチュラルにリンクが集まった結果であると推測されます。

 

例えば下記のようにリンクが集まっているようですね。

 

・ソーシャル系 (はてぶ、Naver、個人ブログ等)

http://matome.naver.jp/odai/2141092319375596701

http://d.hatena.ne.jp/babyjuma/20140607/1402130352

・メディア紹介(コンテンツマーケ企業として)

http://blog.sixapart.jp/2015-01/ownedmedia-casestudy.html

 

・おすすめショップとして

http://www.saide-magazine.com/tyosatai/bangai/shop.html

 

・顧客化

彼らのサイトとその他サイトで違う点として、圧倒的な商品情報が記載されている点が挙げられます。

 

f:id:hayashi00:20150208145651j:plain

 

単純にサイズや値段等のスペックが記載されているだけでなく、その商品が暮らしのなかでどのように使われるとよいか、がコンテンツとして展開されていてまさに雑誌を見ている感覚に陥ります。


その結果サイトに訪れたユーザーが顧客化する確立も高いと考えられます。

同じ商品であっても「このサイトから買いたい」とすら感じされるクオリティです。


・顧客定着

 

上記でも説明した通り、彼らが提供しているのは商品でなく、その商品が存在することによって得られる「上質な暮らし」を提供しています。

そのため一度購入したユーザーも、「次は何を買い足そうかな、」とリピートにつながるでしょう。

仕組みとして彼らが用いているのは下記の手段です。

 

  • メルマガ
  • Facebook
  • インスタグラム
  • ディスプレイ広告(リマーケティング)


いずれも顧客の再来訪(+ロイヤリティアップ)に一役買っています。



その他面白いと感じた点

 

・コンテンツ生産体制。スタッフ自らつくり上げるハイクオリティコンテンツ

「北欧、暮らしの道具店」は採用の要件に、文章のライティングや写真撮影のスキルを取り入れています。

 

だからこそハイクオリティなコンテンツを内製することが出来るのですね。



・自社に関するデータを何でも公表。

彼らの売上やサイトのトラフィック関連の情報はサイト上からチェックすることが出来ます。

株式会社クラシコム - 会社説明 | Facebook

採用関連のページからリンクされていることが多いので、自分たちのことを徹底的に理解した上で一緒に働くかどうか判断して、的な意味合いでしょうか。

これもコンテンツマーケティングですね。

 

・自社ブランドの展開

もともと彼らはセレクトショップなので、利益構造を考えると難しい面もあるはずです。さすがに同じものを他店の数倍の値段で売ることは出来ませんから。

百貨店ほど大量に仕入れるわけではないので仕入れの交渉力が極端に強いというわけでもないと思います。

 

そもそも雑貨・インテリアというのは一定頻度で必要になる、絶対に必要、というものではありませんから商売として難しい。

 

そこで彼らが乗り出しているのが自社ブランドの展開です。

(※全然別の理由かもしれません。あしからず。。)

 

それがこのジャム。

f:id:hayashi00:20150208145239j:plain

出展:http://hokuohkurashi.com/note/68356


自社商品であるからこそ価格のコントロールも出来ますし、なくなってしまうのでファンならリピートするかも。

ただ商品を売るのでなく、「憧れの暮らし」を売っている彼らならではの戦略であると感じました。


■終わりに

 

コンテンツマーケティングが今のように流行り言葉になる前から彼らのように腰を据えて取り組んでいた例も少なくないはずです。今後も本ブログでは良質な例を継続してい取り上げていく予定です。

 

※分析しながらサイトを見ていたら私も何か買いたくなってしまいました。