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色んな会社のビジネスモデルを調べるブログ

NewPicks佐々木氏、nanapiけんすう氏の2016年のWEBメディアの行く末に関する予測等

今週(2016年1月1日から2016年1月9日まで)の気になったニュースの中で特に個人的に気になった記事を紹介して少しコメントします。

2016年のメディアをめぐる予測に関する記事が目立った一週間

1年のはじめということで各所で今年のメディア動向をめぐる予測が発表されていました。例えばNewsPicks佐々木氏の下記2本の記事。

logmi.jp

newspicks.com ※NEWSPICKS有料記事です。

 

また、上記記事のなかで紹介のあるIn-depthに掲載された、ウェブ編集者の佐藤慶一さんによる

[佐藤慶一]【メディア界のこれから“流通”から“融合”へ】~特集「2016年を占う!」メディア~ | NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス]

 

あたりの記事が参考になりました。

 

今年こそコンテンツの質の時代到来か

筆者としての考察を少し。

2014年に日本にもバイラルメディア・キュレーションメディアの波が押し寄せ、
iemo、MERYの大型買収という印象的なニュースが物語るように、筆者が感じるに
2014年はコンテンツのコスト構造部分を工夫することで面積を広げていくメディアが
存在感を示す1年であったように思います。

それを受けて2015年はじめには、「今年こそコンテンツは質の競い合いになっていく」という意見が多かったように思いますが、振り返ってみると個人的にはあまりその印象もなく、束の間のバブルと言われていたバイラルメディア、キュレーションメディア達もその影を潜めることなくそれなりに堅調な伸びを見せた1年だったのではないでしょうか。

業界筋の意見をきいていると「そろそろきつい・・・」と言った声がないわけではないものの、コンテンツの量で稼ぐ時代は終わった、というほどドラスティックな変化は正直感じられなかった印象です。

今年以降は、よりコンテンツの中身、創り方、表現手法、デザインなどへと差別化の軸が移っていくはずです。
しっかり流通に配慮した上で、モバイル時代におけるコンテンツ制作の「成功の方程式」をいち早く見出したプレーヤーが、一歩抜け出すことになるでしょう。
https://newspicks.com/news/1336796/body/

NewsPicks佐々木氏の言うような変化が訪れるかどうか、
蓋を開けてみないとわかりませんが、業界に身をおく立場の人間としてはその足音が大きくなっているのを感じざるを得ません。


個人的にはWEBメディアにおける広告のあり方も大きくこの1年で変わるのではないかと感じています。
2015年も引き続き流行語であった「ステマ」をきっかけに、多くのWEBメディア達が本来の(ネイティブ)広告の価値を考えざるを得なくなっているでしょう。

WEBメディアの広告って正直まだまだ質の面で雑誌やTVに劣りますし正直つまらないですよね。

雑誌を読んでて「なんだよこれ広告かよ」とかいう人は見たことありませんし、テレビを見てて「え、これステマじゃね?」とかいっている人もいないと思います。
単純にまだWEBメディアの広告の質が低いんだと思います。この点は私の業界の人間として努力の余地が大きいと感じます。

 

 

個人レベルでは有料コンテンツに対しての実験が始まっている?

冒頭の佐々木氏、佐藤氏の記事の中でも2016年はメディアの有料化が本格的に進む1年である、という記載がありますが一部の個人プレーヤーがそのテストを始めている?ような動きが個人的には気になりました。

 

  ブロガーのイケダハヤト氏はnoteを使ってコンテンツの有料化実験を始め、まずまずの手応えを感じている様子。

 

また、nanapiのけんすう氏も同様のサービスを使ってコンテンツの販売を行っているようです。

note.mu

1記事100円という価格でありながら短期間で数万円以上の売上を実現し

ており、こちらも実験としてはまずまず上々?ではないでしょうか。

 

その他はあちゅう氏といった人気ブロガーがこぞってnoteの有料化コンテンツを配信開始している模様。

今後個人的に情報を発信しているユーザーのコンテンツ単位での有料化はちょっとした流行りになるかもしれませんね。個人的に挑戦もしてみたい領域です。

 

以上今週のzowebニュースまとめでした。

 

 

月間2.8億PV、1100万UU。業界の先駆者「@コスメ」のビジネスモデルとは

@コスメを知らないWEB業界人はあまりいないでしょう。
1999年に化粧品口コミサイトとして産声を上げた同サイトは今や月間2.8億PV、1100万UU。口コミ数1200万、商品登録数24万件と他社の追随を許さない圧倒的な存在感を誇っています。

運営者であるアイスタイルの調べでは20~30歳代の女性2人に1人が利用しているとのこと。どれだけ同サイトが女性のコスメ選びの意思決定に寄与しているのかが伺えます。

本稿では@コスメを運営するアイスタイル社のビジネスモデルと事業戦略について同社のIR資料等を元に分析をします。

■株式会社アイスタイルのこれまで

1999年に当時アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)出身吉松氏が立ち上げ。「生活者中心の市場の創造」をミッションとして標榜し、その手段として立ち上がったのが@コスメです。その後2013年3月にマザーズ上場、そして同年12月に東証一部に市場変更を果たしています。

時価総額12,779百万円。PER約40倍。

@コスメを含む4つの事業を展開

アイスタイル社の事業は下記のようになっています。

  • @コスメ
  • 実店舗「@cosme store」の運営
  • ECサイト運営
  • 美容サロン検索サイトispotの運営

同社のIR資料から各事業の売上の推移を引用させていただきます。

 

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※アットコスメの売上は「マーケティング」。

創業依頼順調な成長を続けているのがわかりますね。アットコスメの売上が全体の半分程度を占めているイメージですね。

■@コスメが攻めるコスメ市場について

@コスメが事業を展開する市場について少し説明します。

→広告宣伝比率が高い

もともと化粧品は成分の多くを水が占めているため原価率が極めて低いです。

安くつくることは可能だったとしても使用している銘柄が女性のステータス心理を左右するためブランドの知名度や良いイメージがないと当然誰も買おうとはしません。

そのため他社のプロダクトと差別化を図るために宣伝広告費を多く使う、という構造になっています。

トイレタリー・化粧品は広告比率だけでなく絶対額も大きい市場です。こちらのデータを見れば市場ポテンシャルがわかりやすいかと思います。
※データが古くて申し訳ありません。。。

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※電通「日本の広告費」2013のデータをもとに筆者が作成。

ビジネスモデル

同社の主要事業である@コスメのビジネスモデルを図解すると下記のようになります。

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競合優位性

@コスメには競合という競合は存在しないと筆者は考えています。
同社はまだ女性がネットを使うことが一般的でなかったネット黎明期から化粧品の口コミを収集しデータベース化してきました。数にしてなんと1000万件以上の口コミです。

※仮にクラウドソーシングサービス等を用いて1件数十円程度で集めたとしても億単位の価値があると考えると今更口コミ系サービスで真正面から@コスメと戦うことを選ぶプレーヤーは少ないでしょう。

そのデータ資産こそが 同社の優位性につながっています。

また、アイスタイル社は@cosme storeという実店舗も展開しています。現在では都内に6店舗を構えています。
そこから得たブランド認知/価値も見逃せないポイントかと思います。

実際に真似しようと思ってもネット系企業は真似しにくいですよね。

 

財務諸表分析

・売上&利益率

売上と利益率の推移は以下のようになっています。

 

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売上は順調に伸びているものの、利益率は10%を切っています。
メディア企業であるものの、実店舗の運営等行っているためその他上場メディア企業と比べると低めになっています。

 

コスト分析

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※アイスタイル社IR資料より抜粋

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material_for_fiscal_ym&sid=15515&code=3660

販管費の内訳については同社の決算報告書から抜粋させていただきます。

多くは人件費及びプロモーションコストですね。
販管費率の推移を見る限りは少しづつ下がっています。


最後に

今後の同社の成長の可能性についていくつか述べてみたいと思います。

 

・まだまだ市場シェアをとれる余地は大きい

 

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決算資料からの抜粋です。
化粧品・トイレタリー業界の広告費はおよそ6000億。

ターゲットユーザー一人当たりになおすとおよそ14,000円ですが、そのうち@コスメが獲得しているのは数%だけ。まだまだ獲得可能なパイは残されているようです。


・今後のキモの1つは有料会員の確保!?

@コスメのマネタイズは大部分が化粧品メーカーに対しての広告掲載費用であると考えられます。

 

決算資料を見る限り有料会員からの収益はまだ全体の10%程度です。

※同社IR資料内、セグメント売上及びメディア事業クライアント社数推移資料から推測。

 

同社から発表された@コスメの有料会員数は見つけることが出来ませんでしたが、伸びは確かなようです。

 

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同じくCGMのクックパッドの売上の半数近くが有料会員に対しての課金であることを考えるとまだまだ成長の余地はありそうです。

今後スマホ化・アプリ化を進めていくなかで、どのようなユーザー価値をもって有料会員を増やすかがポイントではないかと感じます。

 

 

実は売上30億の超優良企業。「ほぼ日」の人気の秘密とビジネスモデルに迫る

最近機会があって著名なメディア運営者とお話しをする機会を得ました。
そんな中、参考にしているメディアとして共通の名前が出てきました。

「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」です。

当時の私の理解はといえば、糸井重里さんが運営しているメディアである、程度のもので、単なる偶然かもしれないと思いつつも気になったので調べてみました。
すると意外な事実がたっぷりてんこ盛りだったんです。

ということで今回は「ほぼ日」のビジネスモデルについて分析を行います。

※ほぼ日ファンの皆様からは「うちらのほぼ日をビジネス目線で見るな」とお叱りをうけるかもしれませんがご容赦ください。

■月間数千万PVを獲得する「ほぼ日」とは?

もともとほぼ日は1998年に有名コピーライターの糸井重里さんが立ち上げた情報サイト。コピーライターとして仕事をするなかで、クライアントを意識せず自由にできる仕事を模索する中で誕生したのがほぼ日だそうです。

本人曰く、ビジネスモデルだとかいう類は当初全く意識しない中で立ち上げたようですが、今ではデイリー100万以上のPVを稼ぐ大人気サイトとなっています。

そのトラフィックの内訳をみて見ると半数以上がdirectトラフィックであり、数多くのリピートファンに支えられているメディアであることはわかります。

 

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※執筆時点SimilarWebによる調査データ。直近3か月のトラフィックソースの内訳。

 そのようにファンの心をつかむ人気サイトにはどんなコンテンツが掲載されているのか?サイトを訪れてみました

 

■WEBメディアっぽくないWEBメディア

 f:id:hayashi00:20150604084206j:plain

筆者は仕事がら最近のトレンドであるキュレーションメディアだの、バイラルメディアだの数多くの大量情報消費型のメディアを目にします。

個人的に思うことがあって、そうした今風のメディアってどれも同じに見えます。
似たようなテーマを、似たような人が書いて、しかもサイトのテイストや構成も限りなく近い。

そういった意味ではほぼ日は全く今っぽくない。

何が今っぽくないのか?ときかれると非常に難しいですが、筆者が個人的に感じたのは「丁寧で雑誌っぽい」ということ。

雑誌といってもファッション誌の類ではなくて、ライフスタイル提案型の雑誌。

※あまり雑誌には詳しくありませんがKu:nelとかですかね。

(間違った解釈かもしれませんが)筆者が思うに雑誌って1ページ1ページで完結させようとするものでなくてその雑誌の世界感/空気感が好きで読む気がします。

もちろん「カーサのあの特集が好き」のような買い方はあるかもしれませんが、基本的に愛読者はその雑誌を指名買いするわけです。

ほぼ日はほんとに不思議なメディアです。

記事ごとに全く違ったテンプレートを用いていたり、情報量も全くページによって異なっていたり。そもそも記事カテゴリって概念がない。

しかし記事のひとつひとつに「らしさ」を感じます。
丁寧に暮らす、暮らしを楽しむ。
いずれも完璧に的を射た表現ではないかもしれませんが、そんな何ともほっこりした空気感のあるコンテンツに溢れています。

www.1101.com

 

■まさかの「ポーター賞受賞」受賞履歴を持つほぼ日のビジネスモデルとは?

まさかの、とかいいつつ筆者はその存在を知りませんでしたが、ポーター賞というのは一橋大学大学院によって創設されたもので、独自性のある戦略によって競争に成功した日本企業に贈られます。

糸井さんというクリエイディブ界隈の有名人がつくった会社(個人事務所)が戦略論の大家であるポーターの名前を冠るタイトルを獲得というのがしっくりきませんでしたが、受賞理由を見ると納得せざるをえないようです。

 

・ほぼ日の意外な事実達

 

1.そもそも実は年間数十億以上売り上げのある企業である。

巷では、クリエイティブなことをやっている人たちはあまり儲かっていない、という日本的な見方があると思います。かくいう筆者もその一人でこの事実には驚きました。

2012年時点で売上28億。従業員数は当時49人。純利益3億。

 

2.しかも高い利益率を維持し続けている

2012年のポーター賞受賞の理由を述べているルディ和子さんの記事によると、
過去5年間の営業利益率は10~16%で、業界平均との差異は5年間平均で9.5%高とのこと。

 

3.メディア運営者(パブリッシャー)であるにも関わらず広告掲載をしていないし、ユーザーにも課金していない。

年間で30億も売上のあるほぼ日は実はほとんどのメディアが稼ぎの種にしている広告収益に依存していません。
依存していないどころか全くやっていない。

ではどのようにその売り上げを獲得しているかといえば、物販です。
ほぼ日ではオリジナルブランドであるほぼ日手帳を中心にサイトから物販を行っています。
ほぼ日手帳は2012年に46万部売れたそうです。

 2015現在、いくつかの新興メディア(例えばMeryなどがそうか?)がサイトからの物販のモデルを模索しています。4meee!を買収したエニグモなどもそうでしょうか。

すこし形は異なりますが実はほぼ日はすでにこのメディアを通じた物販モデルで成功を遂げていたんですね。

 ※以前北欧暮らしの道具店の紹介を本サイトでも行いましたが、彼らが仕入れ販売に対してほぼ日はオリジナルプロダクトであるため、利益率が比じゃないはず。

 

■ほぼ日の戦略的な特徴

多くのWEBメディアが広告掲載モデルで儲からないと嘆いているなか、ほぼ日はどのようにして上記のような成功にいたったのか。いくつかポイントがあると思うので想像します。

・糸井重里というカリスマの存在

日々数多くのリピーターが再訪するほぼ日のコンテンツには多様な種類がありますが、人気コンテンツには糸井さん自ら関わっているものが少なくありません。

有名人との対談コンテンツやエッセイ、またレシピコンテンツ等にも登場しています。

むしろほぼ日=糸井さんと捉えている読者の方も少なくないのではないでしょうか。

広告費もかけず、これだけ多くの読者に愛されている理由のひとつは、「糸井さんの作り出す世界観が好き」というファンの存在は否定できないと思います。

 

・商品ページすら上質なコンテンツに仕上げている編集力

ほぼ日は物販モデルで売上をあげていると前述しましたね。

サイトを見ているとわかりますが、通常のECサイトと違って彼らの商品コンテンツは見ていてわくわくします。サイトのベースの世界観とマッチしていてしっかりとしたコンテンツとして成立しているんです。

 

▼例えば

www.1101.com

www.1101.com


ユーザーの心理としてはこの商品がほしいから買う、というよりも「その商品が手元にある暮らしを買う」というイメージではないかと感じます。

・独創的な経営思想/組織論

 糸井氏の考えの中で重要なものがあります。それがおもしろくて稼げていること。

「経済的に自立して持続している

 『ユニークな人々』に

 ぼくの興味はあるわけです。

 『おもしろい』ということと、

 『食えてる』ということが両立してることが、

 さらに希望のある

 『おもしろい』につながるんだ」

 ※引用元:ほぼ日刊イトイ新聞 - “Unusual(変わってる)...”

 

それを実現しているほぼ日の秘密の一つは彼の組織に対しての考え方です。

Hubspot社との対談コンテンツの中にほぼ日の組織に対しての考えを綴った件が登場しますが、これがかなり独創的です。

糸井氏は自社の組織を、従来型のピラミッドでなく、それを倒した船のように捉えていると発言。

働く人たちはみんな、フラットなところにいる。

で、かつてトップにいた人は、

上にいるんじゃなくて、いちばん前にいる。

それは、いくらフラットな組織だといっても、

みんながそれぞれに助け合うように

かみ合っていかないと仕事にならないから。

だから、全体はフラットだけど、

いちばん前で行き先を見てる人が必要なんです。

 従来の慣習にとらわれない、「面白くて稼げてる」を体現する背景にはこうした彼らの独自の組織論が存在しているようです。

※ちなみにポーター賞受賞の理由のひとつはこの点。


■実は今後上場を目指すというほぼ日。吉と出るのか凶とでるのか、、、?

色々とほぼ日について見てきましたが糸井重里という人物の存在は大きい。しかしながら代表の糸井氏は御年67歳。いずれ彼抜きでのほぼ日を実現する必要がありますよね。

実はもうほぼ日はこのカリスマ不在体制でのほぼ日のあり方について模索しています。

先日ニュースにも流れていた通り、実はほぼ日は今後数年の間に上場を視野に入れているとのことです。

www.jiji.com

なぜ上場するのか、彼らの良さが死んでしまうのでは?
そうした声もネット上にはちらほらみかけます。

CFOの篠田氏がこの記事内で語っていますが、糸井重里というカリスマなしでやっていける体制を目指すなかでの手段としてIPOということのようです。

現在のほぼ日は糸井というブランドで信用を得ているが、彼不在になった場合を考えると上場企業という信用が必要。

ということでしょうか。

糸井重里というカリスマなしでのほぼ日。
これがうまく実現するかどうか個人的にも非常に興味がありますね。

 

Buzzfeedの先をいくメディア?「Nowthis」がとる WEBサイトを持たない分散型コンテンツ戦略とそのビジネスモデルとは?

バイラルメディアの元祖ともいえるBuzzfeedが提唱していた分散型コンテンツという戦略。

それは今ついに計画の段階から検証の段階に歩を進めており、ついには彼らの提唱していた戦略を実践に移すプレーヤーも現れました。

本稿ではそもそもBuzzfeedが提唱していた分散型コンテンツが何たるかを示したうえで実際にそれがどういった形でメディアの形に変化を与えるかについて、海外振興メディアを例に挙げながら論じたいと思います

 

Buzzfeedの提唱している「分散型コンテンツ」とその戦略の意図

皆さんは「分散型コンテンツ」という言葉をご存知でしょうか。
筆者がそれに初めてそれに出会ったのはこちらの記事でした。

mediadisruption.net

 

記事によるとバイラルメディアの祖ともいえるBuzzfeedがメディアビジネスの将来を左右する構想をいだいているというのです。

同記事はBuzzfeed編集長であるBen SmithとBusiness Insiderの記者とのインタビューをもとに論考を行っている記事です。
要点となる部分を引用させていただきます。

同社のアイデアに、「分散型 BuzzFeed」がある。それは20人ほどのチームが、Tumblr や Instagram、そして SnapChat などの人気のある他のプラットフォームに完全に依存するコンテンツを産出しようというものだ。

すべて のBuzzFeed のコンテンツは、他のプラットフォーム上で生きていけるだろうとした。たとえば、Facebook。その当時でも BuzzFeed の主要なトラフィックはそこからきていることを示したのだった。

つまりBuzzfeedはもはや自社のWEBサイトを持つ必要すらなく主要SNSプラットフォーム内にコンテンツを配信していく戦略をとってもいいのではないか?という考えなわけです。

自社WEBサイトをなくす、というのは幾分突飛な響きに感じるかもしれませんが、仮にそれを実現した場合なにが起きるのか。それはビジネスモデルの変革です。

つまり今までのメディアが自社メディアの集客にこだわらなくては行けなかった理由はそこに表示させている広告をユーザーに見てもらうことで収益を発生させていたから。

そうしたビジネスモデルは本質的には大きく変わることなくWEBメディア創世記から現在に至っていますが、分散型コンテンツの構想の場合この伝統的とも言えるWEBメディアのビジネスモデルを変革する可能性を秘めているのです。

しかしながらこの記事がリリースされた2014年8月時点では当時はこの分散型コンテンツという考え方があくまでアイディアベースの構想としてインタビューの中で語られていたにすぎず、分散型コンテンツを支えるビジネスモデルについても触れられることはありませんでした。

しかし2015年3月にBuzzfeedのCEOであるJonah Peretti氏が行った公演で、Buzzfeedが実際に上記構想に近づいている旨が同社の戦略として語られたのです。

リンク情報を流して集客を期待するのは「すでに時代遅れ」のものであるとのこと。
「リファラルによるトラフィックは、コンテンツ閲覧者に比べると非常に小さな数字となっています」と言っている。
確かに、インプレッション数を見るとTwitter上で8億4700万、Pinterestで60億、そしてさらにFacebookでは113億という数字になっているのだ。

引用元:
BuzzFeed CEO曰く「リンクのシェアは時代遅れ。コンテンツを流せばチャンスが広がる」 | TechCrunch Japan


簡単にいうと、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアで流れているBuzzfeedのコンテンツを見たユーザーを見た人は、実際にそこからリンクされているBuzzfeedのサイトに訪れるユーザー数に比べて圧倒的に多いのだから、自社サイトへのリンクでなく、各外部プラットフォームに最適化されたコンテンツを配信していくのだ。ということ。
その規模については下記のチャートを見ていただければおわかりかと思います。

f:id:hayashi00:20150517105131j:plain

 

※上記記事内の画像を元に筆者が作成。

その発想を支えているのはBuzzfeedの収益源となっているネイティブ広告です。
ネイティブ広告においては当該記事がどれだけ人の目に触れるか、がキモであって、それはサイト全体のPVがどれだけかに勝る指標になります。

であればFacebookに自社記事へのリンクを張るのではなく、コンテンツをそのまま配信してしまおう、そちらのほうがより多くのユーザーの目に触れる。という理屈です。

しかし実際にBuzzfeedが自社サイトのトラフィックを無視してどんどん縮小しているかというとそうではなく、約月間2億ユニークという圧倒的なトラフィックは未だ健全のようです。

 

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※quantcastを用いて調査。

ここまで大きく育ったBuzzfeedが一気に舵をとることはそうたやすいことではないでしょう。そういった意味ではBuzzfeedの分散型コンテンツ構想(脱自社サイト化)は未だ実証(移行へのテスト)フェーズであるといえるのではないでしょうか。


■脱自社サイト化に乗り切った「Nowthis」の登場

そんな中出会ったのがこの記事でした。

gendai.ismedia.jp


どうやらBuzzfeedの構想を実践する新興企業が現れたようです。それがNowthis。

ナウディスはおもに1分以内の短い動画ニュースを配信するメディア。2012年にハフィントンポスト共同創業者のケネス・レラー氏と元ハフィントンポストCEOのエリック・ヒッポー氏らによって立ち上げられました。

サイトに訪れるとそこに彼らのメッセージが強烈に込められています。

 

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ホームページなんて言葉はもう古い。ニュースはもうあなたのいる「そこ」にいるのだから

 

※あまりうまい翻訳ではないかもしれませんが、、。


自社サイトはこのTOPページが1枚だけ。あとは各ソーシャルプラットフォームへの誘導があるだけなのです。

・Nowthisのコンテンツ分散化

ツイッター、フェイスブックの活用はもちろん、Nowthisは8つのSNSおよびチャットサービスを利用しています。
プラットフォーム単位でユーザーの志向やサービス上の制限があるため、例えばヴァインでは6秒、インスタグラムでは15秒と、動画の長さを再編集するし最適化したうえで配信を行っています。

ちなみに記事執筆時点で

・Facebook・・・ 77万FAN
・Twitter・・・ 36万フォロワー
・Youtube・・・ 14万フォロワー
・Instagram・・・ 月間500万再生


■Nowthisのビジネスモデル

彼らの収益モデルを図解すると下記のようになっています。

 

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・レベニューシェアに関してはメディア界においては珍しいことではないです。
日本でいうとYahooニュースに対してコンテンツ配信をし、Yahooニュース内でのPVにあわせて収益をバックしてもらうというもの。
※もちろんこうした有料での契約はどのメディアでもできるわけではありませんが。。

・ブランドコンテンツに関しては彼らのコンテンツの形式が動画、という点が脱自社WEBサイト化を後押ししています。

どういうことか。

ブランド広告を自社サイトに誘引することなく価値を出すためには他社プラットフォームに配信したコンテンツがそれ単体でコンテンツ価値を出していなくてはいけません。
従来型の画像+文字のコンテンツでは伝えられる情報量などが限られますが、動画であればそれが可能になります。

・データ販売

まだ彼らも模索中とのことですが、どんなコンテンツが流行るかを常に調査しデータを保有している強みを活かしてビジネスを展開したいという思惑のようです。

■分散型メディアのメリット / デメリット

・メリット

月に何億PVを獲得しようが自社サイトでないため運用コストが安い点は大きな魅力であると考えられます。サーバー代もかからなければそのインフラを支えるエンジニアも必要がない。

・デメリット

すべてが他社プラットフォームのルール下にある点。
例えば仮にFBで大きな仕様変更等があったらそれに従わざるを得ない。なにせ彼らのプラットフォーム内で勝手にお商売をしているわけですから。しかし他者依存という点では従来型メディアもGoogleのアルゴリズムや提携メディアの配信ポリシーに大きく影響を受けているので同じではないか。
あとは検索エンジンからの流入が期待できないことでしょうか。


■今後分散型メディアは増えていくのか?

Nowthisの場合は動画というコンテンツ形式であるためいち早くこの戦略がとれたように思います。
また、今後の情報がすべて動画という形式に置き換わっていくかというともちろんそうでないでしょう。

しかしながら現在動画で配信されるべき(したほうがわかりやすいし面白い)情報がテキストベースで流通していることも事実です。
そういった意味では日本でもNowthisのようなモデルを選択してくるプレーヤーも現れるのではないかと思います。

既存のメディアは自らのサイトを捨て、Nowthis化すべきなのか?
筆者個人としてはメリットデメリットを考えた場合に脱WEBサイト化を進めるというのは現時点では本当に限られたプレーヤに対しての選択肢であるように感じます。

Buzzfeedの次の一手や、欧米主要メディアの反応も気になるところですが、
現時点では、「一部動画を中心としたメディアが脱自社サイト化していくだろう」という予想にとどめ、今後の各社の動向に注視したいと思います。

追記1:

ちょうど記事を書き終えるタイミングで

gendai.ismedia.jp

 

こちらの記事を拝見しました。

同記事はソフトバンク・キャピタルでヴァイス・プレジデントを務めるフィル・シェブリン氏へのインタビュー記事ですが、氏曰く

「バズフィードは収入を拡大するために分散型コンテンツをやろうとしている。それぞれのプラットフォームで稼ぎたいんだ。

(中略)

プラットフォームごとにコンテンツを出すのは、ある意味ハリウッドのビジネスモデルに近い。ハリウッドはまず初めに映画館にコンテンツを流す。次に飛行機に出す。次にケーブルのVODに出す。最後にタダでテレビで流す。人々は何度も同じコンテンツを別の場所でなら見る。なぜなら、忘れるからだ。Webでこれに近いものができるのではないか、というのが分散型の考え方の1つだ。

 Buzzfeedはそもそも自社サイトを捨てる戦略でなく映画のようなコンテンツ・ビジネスと一緒でうまく2次利用しようとしている、というわけですね。なるほど。

確かにBuzzfeedがいきなり脱自社サイト化しました、
というのは考えづらいのでそのように考えるとしっくりきます。

 

追記2:

本稿ではテキスト+画像記事は分散型コンテンツに向かない、と位置づけましたが、Facebook社が発表したインスタント記事はもしかしたらそれを変える可能性がありますね。今後の動向に注目です。

techcrunch.com

 

 

今後生き残りたいメディアはプラティッシャー化すべきであると思う件

「プラティッシャー」という言葉が登場してからずいぶんと時間が経ちました。日本では現Newspicks編集長の佐々木氏やドワンゴ川上氏等がその必要性を説いていたように思います。

筆者自身も日本でCGM型のWEBメディアの運営に携わる立場として、中期戦略を練る上で思考を重ねましたが調べれば調べるほど上記のような考えに至るわけです。

プラティッシャーという言葉は一時のプチバズワードのように扱われて、もうあまり言葉としてメディア上で見かける機会が少なくなった気がしますが、筆者個人としては流行り廃りの関係ない重要なテーマであると感じています。

そこで本稿ではプラティッシャーとはなんたるかを改めて記すとともに、その必要性について論じたいと思います。

■そもそもプラティッシャーとは?

プラティッシャーとは

パブリッシャーとプラットフォームの2つの側面を持つ存在を指す造語です。

ソーシャルメディア「Sulia」のCEOであるジョナサン・グリックさんという方がこの言葉の産みの親のようですね。

▼参考記事

「プラティッシャー」の頓挫:〝バーベルの中間〟はデッドゾーン | 平 和博

 

少し脱線しますがプラティッシャーという言葉自体はあまり評判がよくないようで、ジェイソン・キントという識者曰く、

「アヒルにビーバーの尾っぽをつけるか、ビーバーにアヒルのくちばしをつけるようなもの」

 

元記事:Say What? Technology-Infused Publishing Is Good Business. | Re/code


とのことです。欧米ですね。

そんなコジャレた皮肉を言っている暇があったらそれにかわるイケてるネーミングの1つでも提案してもらいたいものですが、、。


さて、本筋に戻ります。

 

2つの側面とはどういうことか、単純化して語ると

以下のようになります。

 

・パブリッシャー(コンテンツを生み出す)

・プラットフォーム(コンテンツが集まってくる)

 

少し乱暴な気がしますがこういうことです。
実施のサービスをあてはめてみるともう少しピントきやすいかもしれません。

 

f:id:hayashi00:20150508073109j:plain


自らが記事を書きそれを配信するのがパブリッシャー。

例えばこういったサイトがパブリッシャーですね。もちろんこの例以外のにも山ほどありますが、、、

※特にこれを選んだ理由はありません。よく勉強会で題材にしているからです。


プラットフォームは例えばYahooニュースやライフドアニュースのようなニュース

ポータルやニュースアプリがそれに該当します。

 

彼らは自ら記事を書くのでなく、契約を結んだパブリッシャーから提供された記事を

配信しています。その代わりパブリッシャーに対しては関連記事としてPVをバックしています。

※契約パブリッシャーへのコンテンツ利用料は有料のケースもありますが無料の場合が多い。

 

パブリッシャーはなぜわざわざ自らがコストをかけて作成したコンテンツをニュースポータルに提供するのか?
それはそうすることがパブリッシャーにとってPVを稼ぐ上で一番の近道だからです。

プラットフォーマーにはコンテンツを拡散(流通)させる力(ユーザー数)がありますから。

であれば、

「yahooニュースさんに記事を無償で提供してその分関連リンクからPVをバックしてもらおう」という話になるわけですね。

プラットフォーマーの力をかりることなくPVをかせぐことは通常パブリッシャーにとっては非常に困難なことなのです。


逆にプラットフォーマーは質のよいコンテンツを提供してくれるパブリッシャーの存在なくして成り立ちません。原則自らはコンテンツをつくらないわけですから。

このように日本のWEBメディア業界においてはパブリッシャーとプラットフォーマーの持ちつ持たれつな関係性が存在してきたわけです。


・パブリッシャーからみた限界:上限が見えているいつまでたっても楽にならないビジネス

 

こうしたなか、

一部のメディアが両社の性質を兼ねることを目指して動き出しました。

 

例えば東洋経済オンラインもその一つ。

詳しくはこちらの記事を参考にしていただければ思います。

somewrite.jp


要点だけ引用させていただきます。

佐々木氏「経済カテゴリーではPVでトップになりましたが、コンテンツを拡張したり、テクノロジーを強化したりしないとPVはこれ以上伸びない。マネタイズも広告だけだと遠くない将来に上限がくると感じています。現状の東洋経済オンラインはパブリッシャーの立ち位置ですが、今後はよりプラットフォームに近づいていかなければ生き残れないと考えています」

 

多くのパブリッシャーは

 

■収益

・純広告、アドネット広告

・ネイティブ広告/タイアップ広告

 

■コスト

・記事作成(インハウス編集、外部ライター)

 

というイメージでしょうが、
収益面はPVに比例=作成記事本数に比例。コスト=記事本数に比例。

 

つまりどこまでいってもあまりレバレッジのきいた状態に

なりません。しかもプラットフォーマーのユーザー=流通力にも限界がありますから例え利益率も無視して記事を配信しつづけてもいずれPVの伸びには限界がきます。

 

・プラットフォーマーからみた限界:ユーザーを囲える理由が必要

グノシー、スマートニュースといったニュースアプリが話題になっていますがそれでも日本におけるプラットフォームとしては未だYahooニュースが圧倒的です。

▼2015年2月15日の記事

www.excite.co.jp

主要なニュースアプリで最も利用者が多かったのは「Yahoo!ニュース(39.7%)」で、「SmartNews(15.7%)」「LINE NEWS(13.1%)」「Gunosy(11.2%)」と続いた。

 

良質なコンテンツを生み出すパブリッシャーの数は限られています。

日本だとおそらく1000以下ではないでしょうか。

そう考えるとどのニュースプラットフォームも同じようなコンテンツを配信することになります。

 

ユーザーからしてみれば

 

・Yahooさんが配信しているニュースだから価値を感じている

・ライブドアから配信しているニュースでないと読む気がしない

 

という心理はほとんど発生していないはずで、毎日なんとなく見てしまうというだけのはずです。

 

つまりプラットフォーム側はユーザーを囲うために最大限の努力をする必要があるわけです。

ニュースアプリの「〇〇万人ダウンロード達成!」を見ると彼らの努力が伺えますよね。

 

ニュースアプリは機械学習等のテクノロジーを用いてそのアプリの独自性をアピールしていますが、筆者は正直そこは現時点では本質的なサービスの優位性にならないと感じています。こと日本に限ってはテクノロジーを駆使して分別するほど良質なコンテンツは溢れかえってはいませんし、パーソナライズのアルゴリズムもおそらく各社似通ってくるでしょう。

 

その証拠にといってはなんですが、筆者のスマートニュースとグノシーの記事一覧画面はそっくりです。

 

そこでプラットフォーマーとしては自社独自の〇〇を模索していくなかで、

自社独自の「コンテンツ」の可能性を模索してパブリッシャー的な機能を自社でも強化するようになってきているのです。

 

 

いかがでしたか。
こうした潮流を知ってから最近のメディア界隈の動きをみると各社の思惑が少し見えてくるのではないでしょうか。

 

本ブログではプラティッシャーに関する目立ったニュースについて今後も独自の論考を行いたいと思います。


それでは今日はこのへんで。

 

老舗メディア「オールアバウト」のビジネスモデルを研究してみた

■はじめに

2015年現在、WEBメディアに関わる仕事をしている感じるのは、「タレント(才能をもった個人)の囲いあい」が始まっているということです。
その分野に詳しい・もしくは経験のある個人を囲い、コンテンツ作成者としてメディアのビジネスモデルに組み込むことがメディアとしての成功要素の1つになっているとすら感じます。

そんな中ふと個人的に思い出した、というか急に気になりだしたのがオールアバウト。元祖個人を囲う型メディアですね。

もちろん前々から会社(メディア)としては認知していましたが、しっかりと分析したことがなかったのでこの機会に少し詳しく調べてみました。

■オールアバウトとは?

もともとはリクルートと外資との合弁会社です。
All About(オールアバウト)は、株式会社オールアバウトが運営する生活情報サイトである。

2001年に株式会社リクルートとアメリカ合衆国のAbout Inc社との合弁会社として運営をスタート。

 引用元:http://ja.wikipedia.org/wiki/All_About

12年後の2005年09月に株式上場し、以来7年間上場を維持しています。オールアバウトは大日本印刷系のグループに属し、自身も子会社2社でオールアバウトグループを構成しています。

株主には大日本印刷株式会社(32.07%)と株式会社リクルートホールディングス(29.96%)とヤフー株式会社(19.88%)が名を連ねています。

 引用元:https://kmonos.jp/2454.html

 

・1000名近い専門家が1300を超えるジャンルで執筆

AllAboutは各業界の専門家(ガイド)がつくり上げる総合情報メディアです。
各業界1人を原則として専門家を囲っており、2015年3月現在で、総勢890人の専門家が1300を超えるテーマで執筆。累計15万本以上の記事を書き上げてきたとのこと。

記事数的にはnanapiの1.5倍位でしょうか。

その分量をクラウドソーシング的でなく丁寧にお金をかけてつくったと思うとすごいですね、、。

閲覧数に関しては決算ハイライトから引用させていただきます。

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※平成27年3月期第2四半期決算説明会資料より抜粋。

 

現在では月間2億以上のPVがあるようです。
何と言ってもその専門家ネットワークが強みで、各専門家がライティングしたコンテンツを社内編集部が調整し、Allabout及び、姉妹サイトであるターゲット特化型メディアのFORMforF等に掲載していいます。

 

■オールアバウトのビジネスモデル。マネタイズは広告収益。


同社のビジネスモデルを図解すると下記のようになります。

 

f:id:hayashi00:20150404213715j:plain



私は個人的に勘違いをしていたのですが、コンテンツの執筆主であるガイドに対しては報酬が支払われてるんですね。
元関連サイトの専門家プロファイルは専門家から課金でしたのでちょっと混じって考えていました。

報酬に関しては随分古そうな情報ですが、下記のサイトに記載がありました。

 

 基本業務委託料:3万円/月

 インセンティブ:3ヶ月ごとに評価

 ガイドの報酬は、3万円+αというわけですね。

 引用元:http://directory.e-kurage.com/allabout2.htm


広告主に対しての提供メニューは色々とあるようです。
純広告やタイアップ記事などのオーソドックスなものから、


・スポンサードサイト・・・広告主のオウンドメディアをAllAboutが製作・運用


なども取り扱っています。

コンテンツマーケティングが盛り上がってきた今でこそよく見るタイプの広告ですが、10年以上前からこの取組をしていたと考えるとなかなかうまいなと感じます。

■財務諸表分析。営業利益率は脅威!?の3%弱。

個人的には非常に意外だったのですが、同社の利益率は非常に低いです。
メディア企業としてはかなり珍しい数字なのではないでしょうか。

 

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※第23期第3四半期四半期報告書を参考に筆者が作成

 

ガイドに対しての報酬や編集体制、広告営業体制等が重いのでしょうか、、。

 

■今後のオールアバウトはビジネスモデルの転換を余儀なくされているのでは?

上記でみたように同社は利益率が低く、圧迫しているのは丁寧な編集体制であると予想します。
つまりコンテンツを作り出す上でのコスト構造を変えない限りはドラスティックな結果は得られないと考えられます。

サーチだよりであったトラフィックを提携メディア等から増加させるためのまとめ記事の取り組みもあるようです。ゼロから記事を書くのよりは随分ましなのでしょうが、それでもやはりコストのかかる作業でしょう。

現在WEBメディア界隈では元オールアバウト編集長さん達が各種流行りのメディアの編集長として大活躍している例をよく目にします。

そんなWEB編集人財輩出会社であるオールアバウトですが、今後何か大きな転換はあるのでしょうか。個人的に気になるところです。

 

少し真面目にキュレーションメディアの今後について考えてみた

■はじめに

いわずもがなですが、2014年からキュレーションメディアと呼ばれるタイプのメディアが急増しています。

2014年のキュレーションメディア創世記段階では、バイラルメディアの急成長の背景もあり最終的にどうなるのか、という議論が意外となされないまま現在に至っているように感じます。

しかしiemo、meryといった大きめの事例をはじめ直近で言うと4meee!もバイアウトの道を選びました。こういった出口に至った例を見て一部識者の中には、「キュレーションメディアはバイアウトを目指したほうがいい」的な見方が生まれてきました。

そこでいよいよ個人的に今後キュレーションメディアがどうなるのかについて考えてみることにしました。
※当然筆者の勝手な想像も含まれておりますので予めご了承ください。

ちなみにキュレーションメディアと一口にいっても広いので、本稿では下記のような読み物メディア的な形式のものを想定しています。

 

 

■キュレーションメディアってなんでこんなに話題になってるの?

 

・Googleで「キュレーションメディア」と検索された回数の推移

 

上記のグラフを見てもわかるように2014年以降このワードが注目されているのは確かなようです。
しかし、キュレーションメディアの何がそんなにすごいのか?

それは彼らの成長のスピートです。

 

下記のデータを御覧ください。

  • TABILABO ・・・ ローンチから5か月で3000万PV
  • 4meee!  ・・・ ローンチから6カ月で2500万PV
  • CuRAZY ・・・ ローンチ初月で870万PV 

 出典

4meee: http://thebridge.jp/2015/01/4meee-surpass-25m-pv-in-6months
旅ラボ:http://tabi-labo.com/35338/tabilabopress01/
CuRAZY:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000008508.html


枚挙にいとまがありませんが上記の例を見るだけでもキュレーションメディアがどれだけ早くPV成長をしているかが伺えます。

 

同じようなメディア規模でいくと

  • 美レンジャー ・・・ 2500万PV  (2011年~)
  • lifehacker ・・・ 3890万PV  (2008年~)

※いずれも媒体資料より。

といえばよりその凄さが伝わりやすいのではないでしょうか。

 

■どうやったらそんなことが可能になるのか?キュレーションメディアの勝ちパターン

 

もちろん「The成功のセオリー」なんて存在しないのは承知のうえですが、キュレーションメディアは概ね下記のような流れで成長をしています。

 

1.記事を安く大量に仕入れ(クラウドソーシング、アルバイトで内製)

2.SNSでバズるようにする。(FB広告、ニュースアプリと提携)

3.PVが一定ラインを超し、アドネット以外の純広などがとれるように。

4.上記の収益を更に記事やFB広告などに投資

繰り返し

 

特にポイントになっているのは1と2です。

 

1.キュレーションメディアを支えているのは大量の「そこそこ記事」

 実施にサイトを見ていると感じることですが、最近誕生したキュレーションメディアはとにかく誕生直後から更新頻度・本数が多いです。

 

この生産体制を支えているのがランサーズ、クラウドワークス等を使った外注です。サービスによっては独自にライター(っぽく書けるちょっと文章とセンスのよい人)を囲っていたりします。
4meeeやbySなどがその典型例といえるでしょう。

 

▼4meee生産体制参考記事


女子向けキュレーションメディア「4meee!」が6カ月で2500万PV到達、その成長の理由とは - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

 

従来型のニュースメディア(=オールドメディア)からしてみたら1本500円とか1000円で記事をガンガン配信されたらたまりません。その何倍ものコストをかけているはずですから。※10倍以上の例もあるでしょう。

 

記事作成にかかわるコストを

  • A:取材/リサーチ
  • B:ライティング

にわけた場合キュレーションメディアだとAは格段に安くなります。
なにせそのほとんどがWEBリサーチですから。
Bに関しても新聞社の記者やプロのライターと比べて当然アルバイトやクラウドソーシングのほうが安くなるので2重にコスト安です。

スマホがここまで普及し、ニュースアプリが浸透したこともあり、より細切れの情報に対してのニーズが高まりました。

もちろんその限られた分量でもプロの仕事というものは差がつくものでしょうが、やはり差が目立ちにくくなったことは事実だと思います。

キュレーションアプリの多くが画像(+タイトル)重視であることを考えるとなおさらです。

「画像を準備するにもコストがかかるだろう?」という疑問は彼らから言わせればナンセンスです。

無料でどこからか調達してきているわけですから。


2.SNSでバズるようにSNS広告に大量投資

 キュレーションメディアに近い概念として2014年日本のメディア界を騒がせた「バイラルメディア」というものがあります。

定義は様々でしょうがトラフィックのほとんどをSNSから得ている特徴がありました。

キュレーションメディア=バイラルメディアとは考えていませんがSNSからのトラフィックを重視する点に関しては同じでしょう。
事実最近露出の多いキュレーションメディアのほとんどはFBいいねを10万以上獲得しています。

彼らの多くはSNSから安定的なトラフィックを稼いでおり、その土台づくりとしてFB広告に予算投下をしているはずです。

 

「まじめに続けていればその位いいね獲得できるじゃないの?」という声がきこえてきそうですが、例えばぐるなびが運営しているippinは数少ない広告投下をしていない例と見られますが、

FBいいねは本記事執筆時点で若干1575です。

ippinはニュースアプリと連携もしていますのでPVがほとんどない状況ではないはずです。

前述の小学館の運営する美レンジャーを例にあげると、PV2500万(※媒体資料より)に対していいねは1万を切っています。

単純にPVに比例していいねが獲得できるわけではないです。
だからこそ「ソーシャルメディアマーケティング」なんて言葉も生まれるわけですね。

 

当たり前ですが、いいねを大量に獲得しているとFB投稿経由からのトラフィックが増加します。

一度投資していいねの母数を獲得すれば拡散の確立が高まるため効率のよい投資として判断されているのではないでしょうか。

 

平均いいね単価50-100円の間と想定し、オーガニック--有料比率を2:8程度と考えると10万いいねに至るまでに500万-1000万円程度はコストとして投下済みと筆者は予想しています。

 

結局今後どうなるの?→読み物メディア的な広告掲載モデルでは限界が訪れる

 

キュレーションメディアの売上=PV数と考えると単純に

 

売上=記事数×提携メディア数×バイラル率※1

 

の3つの要素が売上を左右するということになりますが、下記2点がキュレーションメディアの成長の限界を考える上でのポイントかと思います。

※1:筆者の造語です。単純に記事単位でのバズりやすさを意味します。

 

1.提携メディアにも当然枠数の限界がある

各種ニュースアプリの提携メディア数はすでに数百になっており、どんな記事でも載るというわけではありません。また今後も枠を狙った争いは熾烈になっていくでしょう。提携すること自体もハードルが高くなるでしょうし、提携出来ても必ず掲載に至るわけではありません。


2.Facebookユーザーも有限であるため、バイラル率を高めるにも限界あり

キュレーションメディアを運営する上で大事なのはFBファン数を獲得することであり、そのために各社FB広告を駆使しているであろうことを記載しましたが、もちろんFBユーザーは有限であり、なかでも自社メディアがターゲットとするユーザーで高いエンゲージが狙えるユーザーは限られています。

 

そのため売上の一部を再投資していけば無限に成長ということはもちろんありません。PVがどの程度までいったら成長が鈍化するかはターゲット属性+メディアの特性次第でしょうが、早ければ1000万PV未満というところではないでしょうか。

 

上記の理由から今後キュレーションメディアがとるべきは下記の戦術ではないかと予想しています。



a.編集の質/独自色を強めて提携メディア内での存在感を強化

グノシー、スマートニュースなどのニュースアプリが今後どんどん登場することは正直考えづらいと思うので狙うのであればその中でのヒット率を上げることです。

筆者が思うに今後のキュレーションメディアの世界では、しっかりとした企画力・編集力のあるプレーヤー以外はほとんど生き残らないのではと思います。

逆にいうと質のよいキュレーションメディアはまだまだ少数であると感じますからしっかりとしたレベルの編集者が携われば勝ち目は高いです。

Tabilaboなど一部のメディアでは外部から有力編集者を迎え入れて独自色を高める動きをすでにとっていますね。

キュレーションメディア「TABI LABO」がピボット——佐々木俊尚氏を共同編集長に迎え、モバイル志向のカルチャーメディアに進化 - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

 

b.純広告、アドネット広告以外のマネタイズに着手

すでにMeryが取り組んでいるECや、旅行系メディアで見られるような送客課金モデルを取り入れることで収益率を向上させる動きがとられるでしょう。

そう考えると旅行系キュレーションメディアで収益化に困っているプレーヤーは買収の対象になりやすいかもしれません。

 

c.コンテンツが無料で集まる仕組みを構築

これはそもそもサイトのコンセプトやシステムを大きく変更することになりますが、成功した場合非常に強いです。

例えばユーザーレシピまとめのCookpadニュース、食べログまとめやママ系QAのママリなどがそれにあたるかと思います。無料でコンテンツ集まるモデルを確立出来ているメディアはいつの時代もやはり強いです。



以上キュレーションメディアについて個人的に思うところをまとめてみました。

すでにiemoのように単純な広告掲載モデルと全く違うところでマネタイズを狙っているメディアも現れていますが、むしろそうでないメディアの方が多数派であるように思います。

おそらく数人でまわして月々何百万位の利益を獲得するには非常においしいモデルな気もしますがアップサイドに限界があるように思いますので今後の各社の動きをウォッチしようと思います。