ご相談受付はじめました
ブログ読者の方から事業の相談をいただく機会がちょっとずつ増えてきました。
普段の会社の事業とは別の世界のことを知ったり考えたりするのはとても自分にとって良い刺激になっています。
※なにより出不精な自分にとってあちらから「会いたい」といってもらえるのは非常にありがたいです。
このブログは基本的には私が個人的に知りたいな、と思ったことを調べてまとめている記事が大半なのでよいネタ探しにもなります。
より深く交流を図るために平日のランチタイムを利用して「事業について意見がほしい」という方の相談にのりたいと思います。
※先日「KOMUGI!」というブログを発見し、その企画がとてもよいなと思い私も真似させていただこうと思います。
本ブログを読んで私の特性を理解していただければ幸いですがざっと記載をしておくと
渋谷にあるITベンチャーで新規事業を担当
・Webメディア事業の新規立ち上げ、グロースをしています
・検索エンジンマーケティング(SEO)に詳しいです
・コンテンツマーケティングという手法が好きです
です。
特にWebメディア事業に関してはそれなりにシャープ目なお話ができるのではないかなと思います。
もし興味のある方は下記からご連絡ください。
info@khayashi.com
※ご相談したい内容と希望日時をご連絡ください。
上場はてなのビジネスモデル | ちょっと気になるコンテンツマーケティング事業解説
東京証券取引所マザーズ市場への新規上場承認に関するお知らせ - プレスリリース - 株式会社はてな
またまた書き出しが遅れて今更感のあるテーマですが、はてぶろユーザーとしてここは避けられないかと。ということで今回は2016年1月に上場承認が発表されたはてなの事業分析を通して今後の彼らの展望にせまりたいと思います。
基本的にはIの部に記載されている情報をもとに執筆します。
株式会社はてなのこれまで
いわずと知れた「はてなブックマーク」の運営元である株式会社はてなですが、その歴史は平成13年の設立までさかのぼります。
平成15年にはブログサービス「はてなダイアリー」を、そして平成17年に「はてなブックマーク」の運営を開始しています。
太古の昔から存在していたように感じるはてぶですが、まだ10年もたっていないんですね。アメブロが2004年からサービス開始していたことを考えると実は思っていたより若いサービスだな、というのが個人的な感想。
ブックマーク、はてぶろ以外にも、写真・動画共有サービスの「はてなフォトライフ」、QAサイトの「人力検索はてな」を運営しています。
はてなはこれらサービスをユーザーが作り出すサービスという意味で、UGC(UserGeneratedContent)とよんでおり、現在それらの累計で450万の登録ユーザーを抱えています。
・はてなを支える3つの事業セグメント
はてなというと上記でふれたUGCサービスの印象が強いですが、実は下記のように。UGCを含め3つの事業の柱を有しています。
・コンテンツマーケティング事業
Iの部で「コンテンツマーケティング事業」を大きく謳っているのは私の記憶にある限り、イード社に続き2社目でしょうか。(ちがってたらごめんなさい。。)
彼らの言葉を借りると、コンテンツマーケティングとは・・・
顧客の新規獲得や関係性維持のために、メディアやコンテンツを作成したり共有したりするマーケティング手法のことです。
具体的にどのようにはてな社がコンテンツマーケティングの支援をしているかというと、はてなブログのようなCMSを利用して企業にオウンドメディアを制作し、ニーズがあればはてなブログ利用ユーザーをライターとしてあっせんする、という内容ですね。
編集などについてのアドバイスもしているようです。編集についてはそんなに強いイメージはありませんが。
実際の事例として見つけることができたのは下記のような事例です。
▼リクナビNEXTジャーナル
▼ぐるなび運営「みんなのごはん」
▼楽天運営「それ どこで買ったの?」
▼「それ どこで買ったの?」にてはてぶろユーザーが寄稿している例。
500以上のブックマーク、3000を超えるFacebookアクションが発生しています。
下記のブログにあるようにはてなさんが直接ブロガーの皆さんに声掛けしていっているようですね。
はてなブログの利用ユーザーは書き手であると同時にはてぶ内、あるいはSNSで拡散力を持ったインフルエンサーでもあることが多いので、こうしたコンテンツ作成者を供給できるのはコンテンツマーケティング事業を展開するうえで同社の大きな強みの1つであるといえるでしょう。
(残念ながらまだ私には声がかかりません。無念です。)
また、はてなが所有する各種メディアから広告を使って、クライアント企業のコンテンツを露出・ユーザー送客が出来る点も自社でメディアを抱えている彼らならではの強みですね。
・コンテンツプラットフォーム
これがUGC事業ですね。
収益としては有料ユーザー課金+広告(アフィリエイト)の2つのようです。
・テクノロジーソリューション
同社がUGCメディア運営で培ってきた技術力をもとにした事業。主に
a.サービス受託開発
b.ビックデータサービス
└広告配信先として不適切とみなしたサイトにDSP広告を出さない、「アドベリフィケーション」という技術をDSP事業者に提供。
└クラウドサービスの負荷状況を監視できる、「Mackerel(マカレル)」。
上記の3つの事業それぞれの売上についてはIの部にある通りで、ほぼ三等分になっています。
長らく続けてきたUGCサービスをベースにその他2つの事業を始めた(特にコンテンツマーケティング事業については)、という背景だと思いますのでまたまだ真価が問われるのはこれからでしょう。
※任天堂単体で3億円近い取引がるのはすごいですね。依存度が大きい気がしますが大丈夫なんでしょうか。
ビジネスモデル
今回は彼らの3つの事業の柱の1つであるコンテンツマーケティング事業について、そのビジネスモデルを図解し分析してみます。
財務諸表分析
・【PL】売上&利益率
売上と利益率の推移は以下のようになっています。
売上は10億円強と小ぶりなものの、20%を超える営業利益はさすが元祖UGCメディアといったとこでしょうか。直近数年で大きな成長をとげているとは言い難いかもしれません。
直近で立ち上げた2つの受託事業で手堅く売上を伸ばしにいっている、というところでしょうか。
・BS
http://www.yutorism.jp/entry/hatena
こちらのブログを参考にチャートを作成させていただきました。
細かい解説は割愛しますが、
買掛金のみの流動負債、いわゆる無借金経営、流動資産も大部分が現預金と非常に安全性の高い財務構成のようです。
まとめ
すでにキャッシュリッチな体質であり、
上場してどこに資金を投下するのか個人的にはちょっとわかりませんが今までベールに包まれていたはてなの全貌が明らかになって面白かったですね。
システムの受託に関してはどこまで伸びるのか(今でもすでに任天堂さん一極ですし)わかりませんが、個人的にははてなのリソースを使ったコンテンツマーケティング事業をどこまで拡大していくのか気になるところです。
時価総額予測20億きってるってどうなのよ?という意見も出ているようですが、
1億の当期利益予想でも時価総額18億円。。。これは稀に見る寒さ。ここ最近、東京も寒いですしね。この水準の寒さは2014年6月のレアジョブ公募時時価総額22億円以来の寒さです。
はてぶろユーザーの私としては是非頑張ってもらいたいもんです。
NewPicks佐々木氏、nanapiけんすう氏の2016年のWEBメディアの行く末に関する予測等
今週(2016年1月1日から2016年1月9日まで)の気になったニュースの中で特に個人的に気になった記事を紹介して少しコメントします。
2016年のメディアをめぐる予測に関する記事が目立った一週間
1年のはじめということで各所で今年のメディア動向をめぐる予測が発表されていました。例えばNewsPicks佐々木氏の下記2本の記事。
newspicks.com ※NEWSPICKS有料記事です。
また、上記記事のなかで紹介のあるIn-depthに掲載された、ウェブ編集者の佐藤慶一さんによる
[佐藤慶一]【メディア界のこれから“流通”から“融合”へ】~特集「2016年を占う!」メディア~ | NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス]
あたりの記事が参考になりました。
今年こそコンテンツの質の時代到来か
筆者としての考察を少し。
2014年に日本にもバイラルメディア・キュレーションメディアの波が押し寄せ、
iemo、MERYの大型買収という印象的なニュースが物語るように、筆者が感じるに
2014年はコンテンツのコスト構造部分を工夫することで面積を広げていくメディアが
存在感を示す1年であったように思います。
それを受けて2015年はじめには、「今年こそコンテンツは質の競い合いになっていく」という意見が多かったように思いますが、振り返ってみると個人的にはあまりその印象もなく、束の間のバブルと言われていたバイラルメディア、キュレーションメディア達もその影を潜めることなくそれなりに堅調な伸びを見せた1年だったのではないでしょうか。
業界筋の意見をきいていると「そろそろきつい・・・」と言った声がないわけではないものの、コンテンツの量で稼ぐ時代は終わった、というほどドラスティックな変化は正直感じられなかった印象です。
今年以降は、よりコンテンツの中身、創り方、表現手法、デザインなどへと差別化の軸が移っていくはずです。
しっかり流通に配慮した上で、モバイル時代におけるコンテンツ制作の「成功の方程式」をいち早く見出したプレーヤーが、一歩抜け出すことになるでしょう。
https://newspicks.com/news/1336796/body/
NewsPicks佐々木氏の言うような変化が訪れるかどうか、
蓋を開けてみないとわかりませんが、業界に身をおく立場の人間としてはその足音が大きくなっているのを感じざるを得ません。
個人的にはWEBメディアにおける広告のあり方も大きくこの1年で変わるのではないかと感じています。
2015年も引き続き流行語であった「ステマ」をきっかけに、多くのWEBメディア達が本来の(ネイティブ)広告の価値を考えざるを得なくなっているでしょう。
WEBメディアの広告って正直まだまだ質の面で雑誌やTVに劣りますし正直つまらないですよね。
雑誌を読んでて「なんだよこれ広告かよ」とかいう人は見たことありませんし、テレビを見てて「え、これステマじゃね?」とかいっている人もいないと思います。
単純にまだWEBメディアの広告の質が低いんだと思います。この点は私の業界の人間として努力の余地が大きいと感じます。
個人レベルでは有料コンテンツに対しての実験が始まっている?
冒頭の佐々木氏、佐藤氏の記事の中でも2016年はメディアの有料化が本格的に進む1年である、という記載がありますが一部の個人プレーヤーがそのテストを始めている?ような動きが個人的には気になりました。
重要な方向転換をしてみました。/ まだブログ記事を「全部無料で公開」して消耗してるの?うちは有料販売に舵を切ります。 : まだ東京で消耗してるの? https://t.co/H8pz20h7aU pic.twitter.com/tZvuXHuL7e
— イケダハヤト (@IHayato) January 6, 2016
ブロガーのイケダハヤト氏はnoteを使ってコンテンツの有料化実験を始め、まずまずの手応えを感じている様子。
また、nanapiのけんすう氏も同様のサービスを使ってコンテンツの販売を行っているようです。
1記事100円という価格でありながら短期間で数万円以上の売上を実現し
ており、こちらも実験としてはまずまず上々?ではないでしょうか。
昨日かいたnoteの売上が3万円を超えました、お買い上げいただいた方、本当にありがとうございます。
https://t.co/3A5bgU34PM pic.twitter.com/hAEOibMyG3
— けんすう (@kensuu) January 7, 2016
その他はあちゅう氏といった人気ブロガーがこぞってnoteの有料化コンテンツを配信開始している模様。
今後個人的に情報を発信しているユーザーのコンテンツ単位での有料化はちょっとした流行りになるかもしれませんね。個人的に挑戦もしてみたい領域です。
以上今週のzowebニュースまとめでした。
月間2.8億PV、1100万UU。業界の先駆者「@コスメ」のビジネスモデルとは
@コスメを知らないWEB業界人はあまりいないでしょう。
1999年に化粧品口コミサイトとして産声を上げた同サイトは今や月間2.8億PV、1100万UU。口コミ数1200万、商品登録数24万件と他社の追随を許さない圧倒的な存在感を誇っています。
運営者であるアイスタイルの調べでは20~30歳代の女性2人に1人が利用しているとのこと。どれだけ同サイトが女性のコスメ選びの意思決定に寄与しているのかが伺えます。
本稿では@コスメを運営するアイスタイル社のビジネスモデルと事業戦略について同社のIR資料等を元に分析をします。
■株式会社アイスタイルのこれまで
1999年に当時アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)出身吉松氏が立ち上げ。「生活者中心の市場の創造」をミッションとして標榜し、その手段として立ち上がったのが@コスメです。その後2013年3月にマザーズ上場、そして同年12月に東証一部に市場変更を果たしています。
時価総額12,779百万円。PER約40倍。
@コスメを含む4つの事業を展開
アイスタイル社の事業は下記のようになっています。
- @コスメ
- 実店舗「@cosme store」の運営
- ECサイト運営
- 美容サロン検索サイトispotの運営
同社のIR資料から各事業の売上の推移を引用させていただきます。
※アットコスメの売上は「マーケティング」。
創業依頼順調な成長を続けているのがわかりますね。アットコスメの売上が全体の半分程度を占めているイメージですね。
■@コスメが攻めるコスメ市場について
@コスメが事業を展開する市場について少し説明します。
→広告宣伝比率が高い
もともと化粧品は成分の多くを水が占めているため原価率が極めて低いです。
安くつくることは可能だったとしても使用している銘柄が女性のステータス心理を左右するためブランドの知名度や良いイメージがないと当然誰も買おうとはしません。
そのため他社のプロダクトと差別化を図るために宣伝広告費を多く使う、という構造になっています。
トイレタリー・化粧品は広告比率だけでなく絶対額も大きい市場です。こちらのデータを見れば市場ポテンシャルがわかりやすいかと思います。
※データが古くて申し訳ありません。。。
※電通「日本の広告費」2013のデータをもとに筆者が作成。
ビジネスモデル
同社の主要事業である@コスメのビジネスモデルを図解すると下記のようになります。
競合優位性
@コスメには競合という競合は存在しないと筆者は考えています。
同社はまだ女性がネットを使うことが一般的でなかったネット黎明期から化粧品の口コミを収集しデータベース化してきました。数にしてなんと1000万件以上の口コミです。
※仮にクラウドソーシングサービス等を用いて1件数十円程度で集めたとしても億単位の価値があると考えると今更口コミ系サービスで真正面から@コスメと戦うことを選ぶプレーヤーは少ないでしょう。
そのデータ資産こそが 同社の優位性につながっています。
また、アイスタイル社は@cosme storeという実店舗も展開しています。現在では都内に6店舗を構えています。
そこから得たブランド認知/価値も見逃せないポイントかと思います。
実際に真似しようと思ってもネット系企業は真似しにくいですよね。
財務諸表分析
・売上&利益率
売上と利益率の推移は以下のようになっています。
売上は順調に伸びているものの、利益率は10%を切っています。
メディア企業であるものの、実店舗の運営等行っているためその他上場メディア企業と比べると低めになっています。
コスト分析
※アイスタイル社IR資料より抜粋
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material_for_fiscal_ym&sid=15515&code=3660
販管費の内訳については同社の決算報告書から抜粋させていただきます。
多くは人件費及びプロモーションコストですね。
販管費率の推移を見る限りは少しづつ下がっています。
最後に
今後の同社の成長の可能性についていくつか述べてみたいと思います。
・まだまだ市場シェアをとれる余地は大きい
決算資料からの抜粋です。
化粧品・トイレタリー業界の広告費はおよそ6000億。
ターゲットユーザー一人当たりになおすとおよそ14,000円ですが、そのうち@コスメが獲得しているのは数%だけ。まだまだ獲得可能なパイは残されているようです。
・今後のキモの1つは有料会員の確保!?
@コスメのマネタイズは大部分が化粧品メーカーに対しての広告掲載費用であると考えられます。
決算資料を見る限り有料会員からの収益はまだ全体の10%程度です。
※同社IR資料内、セグメント売上及びメディア事業クライアント社数推移資料から推測。
同社から発表された@コスメの有料会員数は見つけることが出来ませんでしたが、伸びは確かなようです。
同じくCGMのクックパッドの売上の半数近くが有料会員に対しての課金であることを考えるとまだまだ成長の余地はありそうです。
今後スマホ化・アプリ化を進めていくなかで、どのようなユーザー価値をもって有料会員を増やすかがポイントではないかと感じます。
実は売上30億の超優良企業。「ほぼ日」の人気の秘密とビジネスモデルに迫る
最近機会があって著名なメディア運営者とお話しをする機会を得ました。
そんな中、参考にしているメディアとして共通の名前が出てきました。
「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」です。
当時の私の理解はといえば、糸井重里さんが運営しているメディアである、程度のもので、単なる偶然かもしれないと思いつつも気になったので調べてみました。
すると意外な事実がたっぷりてんこ盛りだったんです。
ということで今回は「ほぼ日」のビジネスモデルについて分析を行います。
※ほぼ日ファンの皆様からは「うちらのほぼ日をビジネス目線で見るな」とお叱りをうけるかもしれませんがご容赦ください。
■月間数千万PVを獲得する「ほぼ日」とは?
もともとほぼ日は1998年に有名コピーライターの糸井重里さんが立ち上げた情報サイト。コピーライターとして仕事をするなかで、クライアントを意識せず自由にできる仕事を模索する中で誕生したのがほぼ日だそうです。
本人曰く、ビジネスモデルだとかいう類は当初全く意識しない中で立ち上げたようですが、今ではデイリー100万以上のPVを稼ぐ大人気サイトとなっています。
そのトラフィックの内訳をみて見ると半数以上がdirectトラフィックであり、数多くのリピートファンに支えられているメディアであることはわかります。
※執筆時点SimilarWebによる調査データ。直近3か月のトラフィックソースの内訳。
そのようにファンの心をつかむ人気サイトにはどんなコンテンツが掲載されているのか?サイトを訪れてみました
■WEBメディアっぽくないWEBメディア
筆者は仕事がら最近のトレンドであるキュレーションメディアだの、バイラルメディアだの数多くの大量情報消費型のメディアを目にします。
個人的に思うことがあって、そうした今風のメディアってどれも同じに見えます。
似たようなテーマを、似たような人が書いて、しかもサイトのテイストや構成も限りなく近い。
そういった意味ではほぼ日は全く今っぽくない。
何が今っぽくないのか?ときかれると非常に難しいですが、筆者が個人的に感じたのは「丁寧で雑誌っぽい」ということ。
雑誌といってもファッション誌の類ではなくて、ライフスタイル提案型の雑誌。
※あまり雑誌には詳しくありませんがKu:nelとかですかね。
(間違った解釈かもしれませんが)筆者が思うに雑誌って1ページ1ページで完結させようとするものでなくてその雑誌の世界感/空気感が好きで読む気がします。
もちろん「カーサのあの特集が好き」のような買い方はあるかもしれませんが、基本的に愛読者はその雑誌を指名買いするわけです。
ほぼ日はほんとに不思議なメディアです。
記事ごとに全く違ったテンプレートを用いていたり、情報量も全くページによって異なっていたり。そもそも記事カテゴリって概念がない。
しかし記事のひとつひとつに「らしさ」を感じます。
丁寧に暮らす、暮らしを楽しむ。
いずれも完璧に的を射た表現ではないかもしれませんが、そんな何ともほっこりした空気感のあるコンテンツに溢れています。
■まさかの「ポーター賞受賞」受賞履歴を持つほぼ日のビジネスモデルとは?
まさかの、とかいいつつ筆者はその存在を知りませんでしたが、ポーター賞というのは一橋大学大学院によって創設されたもので、独自性のある戦略によって競争に成功した日本企業に贈られます。
糸井さんというクリエイディブ界隈の有名人がつくった会社(個人事務所)が戦略論の大家であるポーターの名前を冠るタイトルを獲得というのがしっくりきませんでしたが、受賞理由を見ると納得せざるをえないようです。
・ほぼ日の意外な事実達
1.そもそも実は年間数十億以上売り上げのある企業である。
巷では、クリエイティブなことをやっている人たちはあまり儲かっていない、という日本的な見方があると思います。かくいう筆者もその一人でこの事実には驚きました。
2012年時点で売上28億。従業員数は当時49人。純利益3億。
2.しかも高い利益率を維持し続けている
2012年のポーター賞受賞の理由を述べているルディ和子さんの記事によると、
過去5年間の営業利益率は10~16%で、業界平均との差異は5年間平均で9.5%高とのこと。
3.メディア運営者(パブリッシャー)であるにも関わらず広告掲載をしていないし、ユーザーにも課金していない。
年間で30億も売上のあるほぼ日は実はほとんどのメディアが稼ぎの種にしている広告収益に依存していません。
依存していないどころか全くやっていない。
ではどのようにその売り上げを獲得しているかといえば、物販です。
ほぼ日ではオリジナルブランドであるほぼ日手帳を中心にサイトから物販を行っています。
ほぼ日手帳は2012年に46万部売れたそうです。
2015現在、いくつかの新興メディア(例えばMeryなどがそうか?)がサイトからの物販のモデルを模索しています。4meee!を買収したエニグモなどもそうでしょうか。
すこし形は異なりますが実はほぼ日はすでにこのメディアを通じた物販モデルで成功を遂げていたんですね。
※以前北欧暮らしの道具店の紹介を本サイトでも行いましたが、彼らが仕入れ販売に対してほぼ日はオリジナルプロダクトであるため、利益率が比じゃないはず。
■ほぼ日の戦略的な特徴
多くのWEBメディアが広告掲載モデルで儲からないと嘆いているなか、ほぼ日はどのようにして上記のような成功にいたったのか。いくつかポイントがあると思うので想像します。
・糸井重里というカリスマの存在
日々数多くのリピーターが再訪するほぼ日のコンテンツには多様な種類がありますが、人気コンテンツには糸井さん自ら関わっているものが少なくありません。
有名人との対談コンテンツやエッセイ、またレシピコンテンツ等にも登場しています。
むしろほぼ日=糸井さんと捉えている読者の方も少なくないのではないでしょうか。
広告費もかけず、これだけ多くの読者に愛されている理由のひとつは、「糸井さんの作り出す世界観が好き」というファンの存在は否定できないと思います。
・商品ページすら上質なコンテンツに仕上げている編集力
ほぼ日は物販モデルで売上をあげていると前述しましたね。
サイトを見ているとわかりますが、通常のECサイトと違って彼らの商品コンテンツは見ていてわくわくします。サイトのベースの世界観とマッチしていてしっかりとしたコンテンツとして成立しているんです。
▼例えば
ユーザーの心理としてはこの商品がほしいから買う、というよりも「その商品が手元にある暮らしを買う」というイメージではないかと感じます。
・独創的な経営思想/組織論
糸井氏の考えの中で重要なものがあります。それがおもしろくて稼げていること。
「経済的に自立して持続している
『ユニークな人々』に
ぼくの興味はあるわけです。
『おもしろい』ということと、
『食えてる』ということが両立してることが、
さらに希望のある
『おもしろい』につながるんだ」
※引用元:ほぼ日刊イトイ新聞 - “Unusual(変わってる)...”
それを実現しているほぼ日の秘密の一つは彼の組織に対しての考え方です。
Hubspot社との対談コンテンツの中にほぼ日の組織に対しての考えを綴った件が登場しますが、これがかなり独創的です。
糸井氏は自社の組織を、従来型のピラミッドでなく、それを倒した船のように捉えていると発言。
働く人たちはみんな、フラットなところにいる。
で、かつてトップにいた人は、
上にいるんじゃなくて、いちばん前にいる。
それは、いくらフラットな組織だといっても、
みんながそれぞれに助け合うように
かみ合っていかないと仕事にならないから。
だから、全体はフラットだけど、
いちばん前で行き先を見てる人が必要なんです。
従来の慣習にとらわれない、「面白くて稼げてる」を体現する背景にはこうした彼らの独自の組織論が存在しているようです。
※ちなみにポーター賞受賞の理由のひとつはこの点。
■実は今後上場を目指すというほぼ日。吉と出るのか凶とでるのか、、、?
色々とほぼ日について見てきましたが糸井重里という人物の存在は大きい。しかしながら代表の糸井氏は御年67歳。いずれ彼抜きでのほぼ日を実現する必要がありますよね。
実はもうほぼ日はこのカリスマ不在体制でのほぼ日のあり方について模索しています。
先日ニュースにも流れていた通り、実はほぼ日は今後数年の間に上場を視野に入れているとのことです。
なぜ上場するのか、彼らの良さが死んでしまうのでは?
そうした声もネット上にはちらほらみかけます。
CFOの篠田氏がこの記事内で語っていますが、糸井重里というカリスマなしでやっていける体制を目指すなかでの手段としてIPOということのようです。
現在のほぼ日は糸井というブランドで信用を得ているが、彼不在になった場合を考えると上場企業という信用が必要。
ということでしょうか。
糸井重里というカリスマなしでのほぼ日。
これがうまく実現するかどうか個人的にも非常に興味がありますね。
Buzzfeedの先をいくメディア?「Nowthis」がとる WEBサイトを持たない分散型コンテンツ戦略とそのビジネスモデルとは?
バイラルメディアの元祖ともいえるBuzzfeedが提唱していた分散型コンテンツという戦略。
それは今ついに計画の段階から検証の段階に歩を進めており、ついには彼らの提唱していた戦略を実践に移すプレーヤーも現れました。
本稿ではそもそもBuzzfeedが提唱していた分散型コンテンツが何たるかを示したうえで実際にそれがどういった形でメディアの形に変化を与えるかについて、海外振興メディアを例に挙げながら論じたいと思います。
Buzzfeedの提唱している「分散型コンテンツ」とその戦略の意図
皆さんは「分散型コンテンツ」という言葉をご存知でしょうか。
筆者がそれに初めてそれに出会ったのはこちらの記事でした。
記事によるとバイラルメディアの祖ともいえるBuzzfeedがメディアビジネスの将来を左右する構想をいだいているというのです。
同記事はBuzzfeed編集長であるBen SmithとBusiness Insiderの記者とのインタビューをもとに論考を行っている記事です。
要点となる部分を引用させていただきます。
同社のアイデアに、「分散型 BuzzFeed」がある。それは20人ほどのチームが、Tumblr や Instagram、そして SnapChat などの人気のある他のプラットフォームに完全に依存するコンテンツを産出しようというものだ。
すべて のBuzzFeed のコンテンツは、他のプラットフォーム上で生きていけるだろうとした。たとえば、Facebook。その当時でも BuzzFeed の主要なトラフィックはそこからきていることを示したのだった。
つまりBuzzfeedはもはや自社のWEBサイトを持つ必要すらなく主要SNSプラットフォーム内にコンテンツを配信していく戦略をとってもいいのではないか?という考えなわけです。
自社WEBサイトをなくす、というのは幾分突飛な響きに感じるかもしれませんが、仮にそれを実現した場合なにが起きるのか。それはビジネスモデルの変革です。
つまり今までのメディアが自社メディアの集客にこだわらなくては行けなかった理由はそこに表示させている広告をユーザーに見てもらうことで収益を発生させていたから。
そうしたビジネスモデルは本質的には大きく変わることなくWEBメディア創世記から現在に至っていますが、分散型コンテンツの構想の場合この伝統的とも言えるWEBメディアのビジネスモデルを変革する可能性を秘めているのです。
しかしながらこの記事がリリースされた2014年8月時点では当時はこの分散型コンテンツという考え方があくまでアイディアベースの構想としてインタビューの中で語られていたにすぎず、分散型コンテンツを支えるビジネスモデルについても触れられることはありませんでした。
しかし2015年3月にBuzzfeedのCEOであるJonah Peretti氏が行った公演で、Buzzfeedが実際に上記構想に近づいている旨が同社の戦略として語られたのです。
リンク情報を流して集客を期待するのは「すでに時代遅れ」のものであるとのこと。
「リファラルによるトラフィックは、コンテンツ閲覧者に比べると非常に小さな数字となっています」と言っている。
確かに、インプレッション数を見るとTwitter上で8億4700万、Pinterestで60億、そしてさらにFacebookでは113億という数字になっているのだ。
引用元:
BuzzFeed CEO曰く「リンクのシェアは時代遅れ。コンテンツを流せばチャンスが広がる」 | TechCrunch Japan
簡単にいうと、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアで流れているBuzzfeedのコンテンツを見たユーザーを見た人は、実際にそこからリンクされているBuzzfeedのサイトに訪れるユーザー数に比べて圧倒的に多いのだから、自社サイトへのリンクでなく、各外部プラットフォームに最適化されたコンテンツを配信していくのだ。ということ。
その規模については下記のチャートを見ていただければおわかりかと思います。
※上記記事内の画像を元に筆者が作成。
その発想を支えているのはBuzzfeedの収益源となっているネイティブ広告です。
ネイティブ広告においては当該記事がどれだけ人の目に触れるか、がキモであって、それはサイト全体のPVがどれだけかに勝る指標になります。
であればFacebookに自社記事へのリンクを張るのではなく、コンテンツをそのまま配信してしまおう、そちらのほうがより多くのユーザーの目に触れる。という理屈です。
しかし実際にBuzzfeedが自社サイトのトラフィックを無視してどんどん縮小しているかというとそうではなく、約月間2億ユニークという圧倒的なトラフィックは未だ健全のようです。
※quantcastを用いて調査。
ここまで大きく育ったBuzzfeedが一気に舵をとることはそうたやすいことではないでしょう。そういった意味ではBuzzfeedの分散型コンテンツ構想(脱自社サイト化)は未だ実証(移行へのテスト)フェーズであるといえるのではないでしょうか。
■脱自社サイト化に乗り切った「Nowthis」の登場
そんな中出会ったのがこの記事でした。
どうやらBuzzfeedの構想を実践する新興企業が現れたようです。それがNowthis。
ナウディスはおもに1分以内の短い動画ニュースを配信するメディア。2012年にハフィントンポスト共同創業者のケネス・レラー氏と元ハフィントンポストCEOのエリック・ヒッポー氏らによって立ち上げられました。
サイトに訪れるとそこに彼らのメッセージが強烈に込められています。
ホームページなんて言葉はもう古い。ニュースはもうあなたのいる「そこ」にいるのだから
※あまりうまい翻訳ではないかもしれませんが、、。
自社サイトはこのTOPページが1枚だけ。あとは各ソーシャルプラットフォームへの誘導があるだけなのです。
・Nowthisのコンテンツ分散化
ツイッター、フェイスブックの活用はもちろん、Nowthisは8つのSNSおよびチャットサービスを利用しています。
プラットフォーム単位でユーザーの志向やサービス上の制限があるため、例えばヴァインでは6秒、インスタグラムでは15秒と、動画の長さを再編集するし最適化したうえで配信を行っています。
ちなみに記事執筆時点で
・Facebook・・・ 77万FAN
・Twitter・・・ 36万フォロワー
・Youtube・・・ 14万フォロワー
・Instagram・・・ 月間500万再生
■Nowthisのビジネスモデル
彼らの収益モデルを図解すると下記のようになっています。
・レベニューシェアに関してはメディア界においては珍しいことではないです。
日本でいうとYahooニュースに対してコンテンツ配信をし、Yahooニュース内でのPVにあわせて収益をバックしてもらうというもの。
※もちろんこうした有料での契約はどのメディアでもできるわけではありませんが。。
・ブランドコンテンツに関しては彼らのコンテンツの形式が動画、という点が脱自社WEBサイト化を後押ししています。
どういうことか。
ブランド広告を自社サイトに誘引することなく価値を出すためには他社プラットフォームに配信したコンテンツがそれ単体でコンテンツ価値を出していなくてはいけません。
従来型の画像+文字のコンテンツでは伝えられる情報量などが限られますが、動画であればそれが可能になります。
・データ販売
まだ彼らも模索中とのことですが、どんなコンテンツが流行るかを常に調査しデータを保有している強みを活かしてビジネスを展開したいという思惑のようです。
■分散型メディアのメリット / デメリット
・メリット
月に何億PVを獲得しようが自社サイトでないため運用コストが安い点は大きな魅力であると考えられます。サーバー代もかからなければそのインフラを支えるエンジニアも必要がない。
・デメリット
すべてが他社プラットフォームのルール下にある点。
例えば仮にFBで大きな仕様変更等があったらそれに従わざるを得ない。なにせ彼らのプラットフォーム内で勝手にお商売をしているわけですから。しかし他者依存という点では従来型メディアもGoogleのアルゴリズムや提携メディアの配信ポリシーに大きく影響を受けているので同じではないか。
あとは検索エンジンからの流入が期待できないことでしょうか。
■今後分散型メディアは増えていくのか?
Nowthisの場合は動画というコンテンツ形式であるためいち早くこの戦略がとれたように思います。
また、今後の情報がすべて動画という形式に置き換わっていくかというともちろんそうでないでしょう。
しかしながら現在動画で配信されるべき(したほうがわかりやすいし面白い)情報がテキストベースで流通していることも事実です。
そういった意味では日本でもNowthisのようなモデルを選択してくるプレーヤーも現れるのではないかと思います。
既存のメディアは自らのサイトを捨て、Nowthis化すべきなのか?
筆者個人としてはメリットデメリットを考えた場合に脱WEBサイト化を進めるというのは現時点では本当に限られたプレーヤに対しての選択肢であるように感じます。
Buzzfeedの次の一手や、欧米主要メディアの反応も気になるところですが、
現時点では、「一部動画を中心としたメディアが脱自社サイト化していくだろう」という予想にとどめ、今後の各社の動向に注視したいと思います。
追記1:
ちょうど記事を書き終えるタイミングで
こちらの記事を拝見しました。
同記事はソフトバンク・キャピタルでヴァイス・プレジデントを務めるフィル・シェブリン氏へのインタビュー記事ですが、氏曰く
「バズフィードは収入を拡大するために分散型コンテンツをやろうとしている。それぞれのプラットフォームで稼ぎたいんだ。
(中略)
プラットフォームごとにコンテンツを出すのは、ある意味ハリウッドのビジネスモデルに近い。ハリウッドはまず初めに映画館にコンテンツを流す。次に飛行機に出す。次にケーブルのVODに出す。最後にタダでテレビで流す。人々は何度も同じコンテンツを別の場所でなら見る。なぜなら、忘れるからだ。Webでこれに近いものができるのではないか、というのが分散型の考え方の1つだ。
Buzzfeedはそもそも自社サイトを捨てる戦略でなく映画のようなコンテンツ・ビジネスと一緒でうまく2次利用しようとしている、というわけですね。なるほど。
確かにBuzzfeedがいきなり脱自社サイト化しました、
というのは考えづらいのでそのように考えるとしっくりきます。
追記2:
本稿ではテキスト+画像記事は分散型コンテンツに向かない、と位置づけましたが、Facebook社が発表したインスタント記事はもしかしたらそれを変える可能性がありますね。今後の動向に注目です。
今後生き残りたいメディアはプラティッシャー化すべきであると思う件
「プラティッシャー」という言葉が登場してからずいぶんと時間が経ちました。日本では現Newspicks編集長の佐々木氏やドワンゴ川上氏等がその必要性を説いていたように思います。
筆者自身も日本でCGM型のWEBメディアの運営に携わる立場として、中期戦略を練る上で思考を重ねましたが調べれば調べるほど上記のような考えに至るわけです。
プラティッシャーという言葉は一時のプチバズワードのように扱われて、もうあまり言葉としてメディア上で見かける機会が少なくなった気がしますが、筆者個人としては流行り廃りの関係ない重要なテーマであると感じています。
そこで本稿ではプラティッシャーとはなんたるかを改めて記すとともに、その必要性について論じたいと思います。
■そもそもプラティッシャーとは?
プラティッシャーとは
パブリッシャーとプラットフォームの2つの側面を持つ存在を指す造語です。
ソーシャルメディア「Sulia」のCEOであるジョナサン・グリックさんという方がこの言葉の産みの親のようですね。
▼参考記事
「プラティッシャー」の頓挫:〝バーベルの中間〟はデッドゾーン | 平 和博
少し脱線しますがプラティッシャーという言葉自体はあまり評判がよくないようで、ジェイソン・キントという識者曰く、
「アヒルにビーバーの尾っぽをつけるか、ビーバーにアヒルのくちばしをつけるようなもの」
元記事:Say What? Technology-Infused Publishing Is Good Business. | Re/code
とのことです。欧米ですね。
そんなコジャレた皮肉を言っている暇があったらそれにかわるイケてるネーミングの1つでも提案してもらいたいものですが、、。
さて、本筋に戻ります。
2つの側面とはどういうことか、単純化して語ると
以下のようになります。
・パブリッシャー(コンテンツを生み出す)
・プラットフォーム(コンテンツが集まってくる)
少し乱暴な気がしますがこういうことです。
実施のサービスをあてはめてみるともう少しピントきやすいかもしれません。
自らが記事を書きそれを配信するのがパブリッシャー。
例えばこういったサイトがパブリッシャーですね。もちろんこの例以外のにも山ほどありますが、、、
※特にこれを選んだ理由はありません。よく勉強会で題材にしているからです。
プラットフォームは例えばYahooニュースやライフドアニュースのようなニュース
ポータルやニュースアプリがそれに該当します。
彼らは自ら記事を書くのでなく、契約を結んだパブリッシャーから提供された記事を
配信しています。その代わりパブリッシャーに対しては関連記事としてPVをバックしています。
※契約パブリッシャーへのコンテンツ利用料は有料のケースもありますが無料の場合が多い。
パブリッシャーはなぜわざわざ自らがコストをかけて作成したコンテンツをニュースポータルに提供するのか?
それはそうすることがパブリッシャーにとってPVを稼ぐ上で一番の近道だからです。
プラットフォーマーにはコンテンツを拡散(流通)させる力(ユーザー数)がありますから。
であれば、
「yahooニュースさんに記事を無償で提供してその分関連リンクからPVをバックしてもらおう」という話になるわけですね。
プラットフォーマーの力をかりることなくPVをかせぐことは通常パブリッシャーにとっては非常に困難なことなのです。
逆にプラットフォーマーは質のよいコンテンツを提供してくれるパブリッシャーの存在なくして成り立ちません。原則自らはコンテンツをつくらないわけですから。
このように日本のWEBメディア業界においてはパブリッシャーとプラットフォーマーの持ちつ持たれつな関係性が存在してきたわけです。
・パブリッシャーからみた限界:上限が見えているいつまでたっても楽にならないビジネス
こうしたなか、
一部のメディアが両社の性質を兼ねることを目指して動き出しました。
例えば東洋経済オンラインもその一つ。
詳しくはこちらの記事を参考にしていただければ思います。
要点だけ引用させていただきます。
佐々木氏「経済カテゴリーではPVでトップになりましたが、コンテンツを拡張したり、テクノロジーを強化したりしないとPVはこれ以上伸びない。マネタイズも広告だけだと遠くない将来に上限がくると感じています。現状の東洋経済オンラインはパブリッシャーの立ち位置ですが、今後はよりプラットフォームに近づいていかなければ生き残れないと考えています」
多くのパブリッシャーは
■収益
・純広告、アドネット広告
・ネイティブ広告/タイアップ広告
■コスト
・記事作成(インハウス編集、外部ライター)
というイメージでしょうが、
収益面はPVに比例=作成記事本数に比例。コスト=記事本数に比例。
つまりどこまでいってもあまりレバレッジのきいた状態に
なりません。しかもプラットフォーマーのユーザー=流通力にも限界がありますから例え利益率も無視して記事を配信しつづけてもいずれPVの伸びには限界がきます。
・プラットフォーマーからみた限界:ユーザーを囲える理由が必要
グノシー、スマートニュースといったニュースアプリが話題になっていますがそれでも日本におけるプラットフォームとしては未だYahooニュースが圧倒的です。
▼2015年2月15日の記事
主要なニュースアプリで最も利用者が多かったのは「Yahoo!ニュース(39.7%)」で、「SmartNews(15.7%)」「LINE NEWS(13.1%)」「Gunosy(11.2%)」と続いた。
良質なコンテンツを生み出すパブリッシャーの数は限られています。
日本だとおそらく1000以下ではないでしょうか。
そう考えるとどのニュースプラットフォームも同じようなコンテンツを配信することになります。
ユーザーからしてみれば
・Yahooさんが配信しているニュースだから価値を感じている
・ライブドアから配信しているニュースでないと読む気がしない
という心理はほとんど発生していないはずで、毎日なんとなく見てしまうというだけのはずです。
つまりプラットフォーム側はユーザーを囲うために最大限の努力をする必要があるわけです。
ニュースアプリの「〇〇万人ダウンロード達成!」を見ると彼らの努力が伺えますよね。
ニュースアプリは機械学習等のテクノロジーを用いてそのアプリの独自性をアピールしていますが、筆者は正直そこは現時点では本質的なサービスの優位性にならないと感じています。こと日本に限ってはテクノロジーを駆使して分別するほど良質なコンテンツは溢れかえってはいませんし、パーソナライズのアルゴリズムもおそらく各社似通ってくるでしょう。
その証拠にといってはなんですが、筆者のスマートニュースとグノシーの記事一覧画面はそっくりです。
そこでプラットフォーマーとしては自社独自の〇〇を模索していくなかで、
自社独自の「コンテンツ」の可能性を模索してパブリッシャー的な機能を自社でも強化するようになってきているのです。
いかがでしたか。
こうした潮流を知ってから最近のメディア界隈の動きをみると各社の思惑が少し見えてくるのではないでしょうか。
本ブログではプラティッシャーに関する目立ったニュースについて今後も独自の論考を行いたいと思います。
それでは今日はこのへんで。