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色んな会社のビジネスモデルを調べるブログ

「みんなのウェディング」のビジネスモデルに学ぶ 非対称性分野を破壊する徹底的なユーザー志向サービスの作り方。

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売り手側には情報が多数あるが、買い手側は頻度が高く無い
買い物であるため、価格が高止まりしマーケットが柔軟性を失う。

こうしたいわゆる「情報の非対称性」が起きている分野は
ベンチャー・スタートアップ企業のターゲットになるケースが少なくない。

それまで消費者側が知り得なかった情報を徹底的にオープンにしユーザー価値を高めることで彼らは急激な成長を見込むのある。

実はこうした非対称性が残っている分野はネットが当たり前になった
今でも珍しい話ではない。
今回テーマに挙げさせていただくブライダル業界もその代表例の1つだ。

今回は、長らくユーザー志向が弱く情報の非対称性代表格である同業界に風穴をあけた「みんなのウェディング」を取り上げる。

■目次

1:みんなウェディング誕生の背景
2:サービスの特徴とビジネスモデル
  ├サービスの特徴
  ├ビジネスモデル
  └その他
3:収益分析:どの位儲かっているの?
4:同サービスの課題と今後

みんなウェディング誕生の背景

冒頭でも触れたとおり、ブライダル業界は長く情報の非対称性
残る業界であった。

筆者も今年2014年に結婚式を済ませているため実体験として
強く感じている。
例えばよくある話だが、ブライダルフェアでざっと見積もりをとると「あれ、意外と安い」という価格なのだが、後日色々とオプションを足していくと当初の倍近い価格になってしまう、という事は珍しい話ではない。

※また大概こうした金額のアップが本契約後都度後出しで
提示される。「もう既に準備はじめちゃったし、せっかくの晴れ舞台だから」という心理をつく営業スタイルなわけだが決して顧客視点にたったサービスであるとは冗談でも言いがたいと感じる。


そんなウェディング業界に風穴をあけたのが、「みんなのウェディング」である。

同サービスは2008年に株式会社ディー・エヌ・エーの新規事業として産声をあげ、
2010年にスピンオフし、株式会社みんなのウェディングが運営する、
結婚式場選びNo.1口コミサイトである。

サービスの特徴とビジネスモデル

・ビジネスモデル

ビジネスモデルについては株式会社みんなのウェディング社の
決算説明資料から抜粋をし説明をさせていただく。

図で示すと上記のようになっている。

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※2014年9月期 第3四半期 決算説明資料より抜粋

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material_for_fiscal_ym&sid=11020&code=3685


上記のモデルが既存の会社と同異なっているのかを知るために,
ここである競合と比較をしてみる。

そう、みなさんご存知の通リクルートが運営する結婚情報誌「ゼクシィ」の
オンライン版であるzexy.netである。もはや結婚の代名詞的な存在にすらなっている
モンスターだ。

ゼクシィに限らずリクルートが主に採用しているモデルは
同社の強みである強力な営業網を利用し、広告掲載主を見つけて
リクルートが運営するメディアを通じて紹介をすることでFeeをいただくというもの。

もちろんzexy.netにも結婚式場に関する口コミは掲載されている。
しかし広告主からお金をもらって情報を掲載しているため、当然「良い」情報のみが
掲載されることになる。

そうなると

・雰囲気がよく参列者と一体感のある・・・
・お料理も美味しく、とにかく景色のよい・・・

といったどこにでも当てはまりそうな無難な褒め言葉
並んでしまう。

しかしみんなのウェディングが目指したのは、そういった売り手本位な情報でなく
真にユーザーが求めている情報である。当然そこには「ちょっとここは残念だった」
という類のものも含まれているし、そうあるべきだ。

そこでみんなのウェディングでは、当初結婚式上のデータを登録し、
ユーザーからそこに対しての本音の口コミを募集した。
結婚式場側は掲載でなく、ユーザーの口コミに対しての返答などが出来る企業アカウントの 使用料として費用をいただく形式をとったのである。

※2014年9月現在では情報掲載に対する課金も行っているようだが、
ユーザーの本音口コミがメインコンテンツという点は変わっていない。

サービスの特徴

  1. ユーザーからの口コミは300文字以上に限定
  2. ユーザーの口コミに対して現金還元可能なポイントを付与

みんなのウェディングのサービス特徴としては上記の2つが挙げられる。
同サービスの価値は言うまでもなく口コミの質と直結する。
ましてや同サービスの場合投稿ユーザーに対してポイントを付与しているため

半端な質のレビューを書かれてはサイトを閲覧するユーザーにも、サービス運営者側もたまったものではない。。
そこで敢えて300文字以上というハードルを設けているのである。

そんなしっかりとした文章集まるの?という声が聞こえて
きそうだが、実際にサイトも見ると1000文字を超える投稿も見受けられる。
投稿ユーザーとしても自分の体験が誰かの役に立つという点に価値を感じて
いるのだろう。

ポイント還元については

・【口コミ】自ら結婚式を行った式場に対して・・・800ポイント
・【口コミ】参加or見積もりオンリー・・・200ポイント
・【見積書】最終明細書もしくは見積書・・・1000ポイント

となっており1000ポイント以上で1ポイント=1円で交換が可能。

その他QA掲示板などもポイント対象外であるものの、
多いものだと20返信以上あり賑わっている様子。


・その他マーケティングについて

>>ユーザー獲得チャネル

本サービスが成功するためにはもちろんコンテンツだけでなく
サイトを利用するユーザーを獲得しなくてはならない。
運営会社による発表では2014年5月段階で約300万人/月の閲覧者数、約1,600万ページ/月の閲 覧数を獲得しているようである。

ではどのようにしてそれだけのユーザーを獲得しているのか。
サイト解析ツールSimilarWebを用いて調査を行ったところ以下のようになっている。

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※もちろん完全な正確性こそないものの
筆者の業界経験からいって現実に近いデータであろう。

流入のほとんどが検索エンジンGoogleからのものである。
この点について運営会社サイト上でもアピールしている通りのようだ。

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https://www.mwed.jp/_inq1?typ=inb


一度上位表示を果たしてしまえば
検索連動型広告とは違い月々の出費がないことから
高い収益性を実現出来ているのであろう。

しかし試しに筆者が実際に当時検索に使った
「レストランウェディング 東京」というキーワードで
検索を行ったところ、競合に押され5位という結果であった。

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もちろん上位表示がかなっているキーワード群とそうでない
ものがあるのであろうが、まだまだ今後の伸びしろはあるのだろうと
予測する。

この点については後日別途競合との比較調査の予定だ。

その他:各種アライアンス

詳細についての言及は割愛させていただくが
ベネッセと提携して「みんなのファミリーウェディング」を運営するなど
市場のニーズに応えるサービスの展開を始めている。
ベネッセの持つウィメンズパーク内でのアンケートを実施、たまひよ編集部が
コンテンツ作成、みんなのウェディングが式場の口コミコンテンツを提供という
スキームだ。

また株主にクックパッド社長の穐田さんが入っていることからもわかるように
同社はもちろんのこと、Yahoo!ウェディングやツヴァイ等とも提携をしている。


収益分析:どの位利益を上げているのか?

再び決算説明資料に戻ろう。
売上を見ると

2011年:307百万円
2012年:555百万円
2013年:1,011百万円
2014年:1,636百万円(予定)

とある通り堅実に伸びている。

また利益については以下の通りだ。

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※2014年9月期 第3四半期 決算説明資料より抜粋

 

営業利益率は24%。

もちろんビジネスモデルが異なるため簡単に比較は出来ないが

 

(株)一休 51.9 %
ヤフー(株) 50.7 %
(株)ディー・エヌ・エー 42.1 %
(株)カカクコム 40.3 %
(株)ミクシィ 32.6 %
(株)ぐるなび 19.6%

引用元:http://www.itranking.net/opiratio.php

古巣含め上記上場企業達と並べると特に高くもなく、

低すぎないというラインだろうか。

ただし今度SEO強化→流入(ユーザー)獲得が進めばメディアパワーが増しより高い収益性を獲得することが出来るだろう。

また、現在彼らがネット上で公開している5800件超の式場のうち、有料掲載契約を結べているのは1300社程度なのでこの数字を見てもまだまだ今後の伸びしろがあると考えてよいのではないか。

今後について

以上色々と解説をしてきたが、やはり非対称性の残る本業界にメスを入れたという点で価値のあるメディアであることは間違いがない。

今後は

・ブランド認知の向上
・流入ユーザーの拡大
・潜在層の獲得拡大

を推し進めることになるのだろうが、
2014年から開始をするというECが個人的には気になるところである。

また同社の今後の方向性については決算説明資料の中の
下記の1スライドにまとめられている。

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※2014年9月期 第3四半期 決算説明資料より抜粋


・情報の非対称性のある市場で
・女性のライフステージに関するサービス

を展開していく、とある。
もしかしたら「みんなの子育て」といったみんなのシリーズの
ヨコ展開があるのかもしれない。