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出版業界のビジネスモデル研究

はじめに

先日角川とドワンゴの合併がニュースになっていたが、WEBの世界においては今後もコンテンツの作り手と拡散・デリバリーする側が手を取り合う(もしくは買収)流れが強まるのではないかと筆者は個人的に感じている。

WEBビジネスの世界に生きる私にとって、コンテンツの作り手代表格である出版業界は無視することの出来ない存在である。

そこで今回は、出版業界のビジネスモデル・及び主要なプレーヤーについて分析する。

■目次

  1. 出版業界研究
  2. 業界MAP、主要プレーヤー
  3. ビジネスモデル
  4. 業界の課題・今後

出版業界研究

業界規模

業界に関するまとまったデータが見当たらなかったため下記の記事から引用させていただく。

昨年の書籍と雑誌の総売上額が、前年比3・4%減の1兆7711億円だったことが9日、出版ニュース社の調べで分かった。9年連続の市場縮小

 引用元:http://www.asahi.com/articles/DA3S11181067.html

・業界MAP

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引用元:http://www.ecareer.ne.jp/contents/business_map/06.jsp


上記のMAPにある通り出版業界と一口にいっても彼らがメインで扱うコンテンツによって分類がされているようだ。

売上金額で見るとリクルート・ベネッセが大きく飛び出ているが、果たしてここに彼らを「出版社」として紹介しつづけることは適切なのだろうか、、。

日本における出版社の数

出版社数に関しては以下の通り。

2006年 4,107 社
2007年 4,055 社
2008年 3,979 社
2011年 3,736 社

http://www.1book.co.jp/003727.html
減ってきているとはいえ約3600の出版社が存在している。


主要プレーヤー

帝国データバンク 出版業界 2012 年度決算調査 によると
売上のトップテンは下記の企業である。

 

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集英社
講談社
小学館

の大手3社が売上では頭ひとつ抜けているイメージ。

上記のデータは少し古いものなのであらわれていないが、ながらく続いたこの3強体制にKADOKAWAが食い込むことになるのだろう。

また業界の一部を切り出したデータであるがこちらのデータも役に立ちそうなのでご紹介。

 

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引用元:http://www.1book.co.jp/005457.html

■出版業界のビジネスモデル

出版業界のビジネスモデルは下記のようになっている。

 

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流れとしては出版社が本を企画・製作(メーカー)。取次業者が書店に本を配本、書店で消費者に本を販売。というもの。

流れとしては一般的な小売業に似ている。メーカー→問屋→小売のようなものだ。

出版業界においては2つの特徴的な制度を利用している。
再販制度委託制度である。

この説明については多くのサイトで詳細な説明があったため、引用させていただく。

 

「再販制」

独占禁止法第 23 条に規定された再販売価格指定販売契約の許可のことである。より詳しく言うと、そもそも売買契約において相手方に再販売の価格を指定して販売する行為は競争抑制的であるので独占禁止法において禁止されているが、ごく一部の例外的商品については再販売価格を指定した売買をしてもよいということである。その例外商品の中に書籍が含まれている。

 

ようはメーカーが小売店に「●●円で売ってね」と契約出来る制度。


「委託販売制」
文字通りに「小売業に販売を委託する」制度で、小売業に陳列されている商品の帰属は小売業ではなく、製造業に属する。小売業は販売額の一定の割合を手数料として獲得できるが、売れ残った場合は無条件に返品できるために在庫リスクは少ない。

つまり書店は、自ら仕入れた商品を売っているのでなく代理で販売しているから
売れ残った商品は返品してOKですよ、という仕組み。

引用元:http://www.waseda.jp/sem-domon01/members/arashi/arashi.pdf


また同引用元内にコスト構造についてのわかりやすい解説がされている。

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業界の課題・今後

雑誌の売上低迷

冒頭の売上規模の紹介部分で少し触れた部分ではあるが、そもそも業界として売上が年々減少しているという事実がある。特に雑誌に関しては著しい。

下記は出版物別の売上推移であるが、このチャートも見ればわかるように2000年以降の雑誌の売上には厳しいものがある。売上が減少している理由としては読者がWEBメディアに流れていることがあげられるのだろう。今日日電車に乗っていても雑誌を読んでいる人は珍しいように思う。

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引用元:http://www.garbagenews.net/archives/2101334.html

 

▼業界を悩ます返本率を見ても、雑誌のそれは悪化の一途を辿っている。

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上記で述べたコスト構造からもわかるように返本コストがどれだけ重たいかは説明の必要がないように思う。


電子書籍の苦戦

一昔まえから時代は電子書籍、というような風潮があった気がするが未だに世の中一般に定着しているとは言いがたい。実際に売上を見ても期待通りというわけではなさそうだ。

なぜそこまで電子書籍は売上が伸びないのか?

少し参考にした記事が古いかもしれないがこちらのサイトいわく理由は3点ある。

下記のサイトから説明を拝借

編集者の日々の泡:小学館、集英社、講談社が電子書籍でアマゾンと組みそうな「ワケ」 ――電子書籍に死屍累々の「出版界」

●電子書店の規格乱立

電子書籍は、個々の電子書店で許されるフォーマットでしか発売できない。日本での電子書店は通信キャリア系、流通系、取次系など入り乱れて戦国時代並の大乱戦状態であり、規格はバラバラ。別規格の書店に卸そうとすればオーサリングはそれぞれ別に費用が発生する。

●売れない

紙の書籍の潜在読者は「日本語の読める人」。電子書籍の潜在読者は「タブレットユーザー+α」。このため決定的に売れ行きが違う。この点、英語書籍の電子化でむしろ紙より広く全世界を相手にできる米国の出版社とは、話が違う。


●コストが高い

電子書籍では、紙代と印刷代が不要になる。反面、紙にはないオーサリング費用が掛かる。さらに長い歴史を持ち極限まで効率化されコストダウンが進んだ紙版では問題にならない上記の事務の手間(=コスト)も。電子版が売れないという条件で見ると、分母が小さいだけにこれらがバカにならない。

 

以上出版業界の構造やプレーヤー及び今後の課題についてまとめた。

今後WEB業界においてコンテンツマーケティング強化、及び上質なコンテンツを載せるメディアの増加の流れは避けられないように思う。

その中でコンテンツの生産者として長年君臨してきた出版社達がどのようにWEBの世界でポジションをとっていくのか。個人的には注目のポイントである。