少し真面目にキュレーションメディアの今後について考えてみた
■はじめに
いわずもがなですが、2014年からキュレーションメディアと呼ばれるタイプのメディアが急増しています。
2014年のキュレーションメディア創世記段階では、バイラルメディアの急成長の背景もあり最終的にどうなるのか、という議論が意外となされないまま現在に至っているように感じます。
しかしiemo、meryといった大きめの事例をはじめ直近で言うと4meee!もバイアウトの道を選びました。こういった出口に至った例を見て一部識者の中には、「キュレーションメディアはバイアウトを目指したほうがいい」的な見方が生まれてきました。
そこでいよいよ個人的に今後キュレーションメディアがどうなるのかについて考えてみることにしました。
※当然筆者の勝手な想像も含まれておりますので予めご了承ください。
ちなみにキュレーションメディアと一口にいっても広いので、本稿では下記のような読み物メディア的な形式のものを想定しています。
- キナリノ:https://kinarino.jp/
- マカロニ:http://macaro-ni.jp/
- Retrip:https://retrip.jp/
■キュレーションメディアってなんでこんなに話題になってるの?
・Googleで「キュレーションメディア」と検索された回数の推移
上記のグラフを見てもわかるように2014年以降このワードが注目されているのは確かなようです。
しかし、キュレーションメディアの何がそんなにすごいのか?
それは彼らの成長のスピートです。
下記のデータを御覧ください。
- TABILABO ・・・ ローンチから5か月で3000万PV
- 4meee! ・・・ ローンチから6カ月で2500万PV
- CuRAZY ・・・ ローンチ初月で870万PV
出典
4meee: http://thebridge.jp/2015/01/4meee-surpass-25m-pv-in-6months
旅ラボ:http://tabi-labo.com/35338/tabilabopress01/
CuRAZY:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000008508.html
枚挙にいとまがありませんが上記の例を見るだけでもキュレーションメディアがどれだけ早くPV成長をしているかが伺えます。
同じようなメディア規模でいくと
- 美レンジャー ・・・ 2500万PV (2011年~)
- lifehacker ・・・ 3890万PV (2008年~)
※いずれも媒体資料より。
といえばよりその凄さが伝わりやすいのではないでしょうか。
■どうやったらそんなことが可能になるのか?キュレーションメディアの勝ちパターン
もちろん「The成功のセオリー」なんて存在しないのは承知のうえですが、キュレーションメディアは概ね下記のような流れで成長をしています。
1.記事を安く大量に仕入れ(クラウドソーシング、アルバイトで内製)
▼
2.SNSでバズるようにする。(FB広告、ニュースアプリと提携)
▼
3.PVが一定ラインを超し、アドネット以外の純広などがとれるように。
▼
4.上記の収益を更に記事やFB広告などに投資
▼
繰り返し
特にポイントになっているのは1と2です。
1.キュレーションメディアを支えているのは大量の「そこそこ記事」
実施にサイトを見ていると感じることですが、最近誕生したキュレーションメディアはとにかく誕生直後から更新頻度・本数が多いです。
この生産体制を支えているのがランサーズ、クラウドワークス等を使った外注です。サービスによっては独自にライター(っぽく書けるちょっと文章とセンスのよい人)を囲っていたりします。
4meeeやbySなどがその典型例といえるでしょう。
▼4meee生産体制参考記事
女子向けキュレーションメディア「4meee!」が6カ月で2500万PV到達、その成長の理由とは - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
従来型のニュースメディア(=オールドメディア)からしてみたら1本500円とか1000円で記事をガンガン配信されたらたまりません。その何倍ものコストをかけているはずですから。※10倍以上の例もあるでしょう。
記事作成にかかわるコストを
- A:取材/リサーチ
- B:ライティング
にわけた場合キュレーションメディアだとAは格段に安くなります。
なにせそのほとんどがWEBリサーチですから。
Bに関しても新聞社の記者やプロのライターと比べて当然アルバイトやクラウドソーシングのほうが安くなるので2重にコスト安です。
スマホがここまで普及し、ニュースアプリが浸透したこともあり、より細切れの情報に対してのニーズが高まりました。
もちろんその限られた分量でもプロの仕事というものは差がつくものでしょうが、やはり差が目立ちにくくなったことは事実だと思います。
キュレーションアプリの多くが画像(+タイトル)重視であることを考えるとなおさらです。
「画像を準備するにもコストがかかるだろう?」という疑問は彼らから言わせればナンセンスです。
無料でどこからか調達してきているわけですから。
2.SNSでバズるようにSNS広告に大量投資
キュレーションメディアに近い概念として2014年日本のメディア界を騒がせた「バイラルメディア」というものがあります。
定義は様々でしょうがトラフィックのほとんどをSNSから得ている特徴がありました。
キュレーションメディア=バイラルメディアとは考えていませんがSNSからのトラフィックを重視する点に関しては同じでしょう。
事実最近露出の多いキュレーションメディアのほとんどはFBいいねを10万以上獲得しています。
彼らの多くはSNSから安定的なトラフィックを稼いでおり、その土台づくりとしてFB広告に予算投下をしているはずです。
「まじめに続けていればその位いいね獲得できるじゃないの?」という声がきこえてきそうですが、例えばぐるなびが運営しているippinは数少ない広告投下をしていない例と見られますが、
FBいいねは本記事執筆時点で若干1575です。
ippinはニュースアプリと連携もしていますのでPVがほとんどない状況ではないはずです。
前述の小学館の運営する美レンジャーを例にあげると、PV2500万(※媒体資料より)に対していいねは1万を切っています。
単純にPVに比例していいねが獲得できるわけではないです。
だからこそ「ソーシャルメディアマーケティング」なんて言葉も生まれるわけですね。
当たり前ですが、いいねを大量に獲得しているとFB投稿経由からのトラフィックが増加します。
一度投資していいねの母数を獲得すれば拡散の確立が高まるため効率のよい投資として判断されているのではないでしょうか。
平均いいね単価50-100円の間と想定し、オーガニック--有料比率を2:8程度と考えると10万いいねに至るまでに500万-1000万円程度はコストとして投下済みと筆者は予想しています。
結局今後どうなるの?→読み物メディア的な広告掲載モデルでは限界が訪れる
キュレーションメディアの売上=PV数と考えると単純に
売上=記事数×提携メディア数×バイラル率※1
の3つの要素が売上を左右するということになりますが、下記2点がキュレーションメディアの成長の限界を考える上でのポイントかと思います。
※1:筆者の造語です。単純に記事単位でのバズりやすさを意味します。
1.提携メディアにも当然枠数の限界がある
各種ニュースアプリの提携メディア数はすでに数百になっており、どんな記事でも載るというわけではありません。また今後も枠を狙った争いは熾烈になっていくでしょう。提携すること自体もハードルが高くなるでしょうし、提携出来ても必ず掲載に至るわけではありません。
2.Facebookユーザーも有限であるため、バイラル率を高めるにも限界あり
キュレーションメディアを運営する上で大事なのはFBファン数を獲得することであり、そのために各社FB広告を駆使しているであろうことを記載しましたが、もちろんFBユーザーは有限であり、なかでも自社メディアがターゲットとするユーザーで高いエンゲージが狙えるユーザーは限られています。
そのため売上の一部を再投資していけば無限に成長ということはもちろんありません。PVがどの程度までいったら成長が鈍化するかはターゲット属性+メディアの特性次第でしょうが、早ければ1000万PV未満というところではないでしょうか。
上記の理由から今後キュレーションメディアがとるべきは下記の戦術ではないかと予想しています。
a.編集の質/独自色を強めて提携メディア内での存在感を強化
グノシー、スマートニュースなどのニュースアプリが今後どんどん登場することは正直考えづらいと思うので狙うのであればその中でのヒット率を上げることです。
筆者が思うに今後のキュレーションメディアの世界では、しっかりとした企画力・編集力のあるプレーヤー以外はほとんど生き残らないのではと思います。
逆にいうと質のよいキュレーションメディアはまだまだ少数であると感じますからしっかりとしたレベルの編集者が携われば勝ち目は高いです。
Tabilaboなど一部のメディアでは外部から有力編集者を迎え入れて独自色を高める動きをすでにとっていますね。
キュレーションメディア「TABI LABO」がピボット——佐々木俊尚氏を共同編集長に迎え、モバイル志向のカルチャーメディアに進化 - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
b.純広告、アドネット広告以外のマネタイズに着手
すでにMeryが取り組んでいるECや、旅行系メディアで見られるような送客課金モデルを取り入れることで収益率を向上させる動きがとられるでしょう。
そう考えると旅行系キュレーションメディアで収益化に困っているプレーヤーは買収の対象になりやすいかもしれません。
c.コンテンツが無料で集まる仕組みを構築
これはそもそもサイトのコンセプトやシステムを大きく変更することになりますが、成功した場合非常に強いです。
例えばユーザーレシピまとめのCookpadニュース、食べログまとめやママ系QAのママリなどがそれにあたるかと思います。無料でコンテンツ集まるモデルを確立出来ているメディアはいつの時代もやはり強いです。
以上キュレーションメディアについて個人的に思うところをまとめてみました。
すでにiemoのように単純な広告掲載モデルと全く違うところでマネタイズを狙っているメディアも現れていますが、むしろそうでないメディアの方が多数派であるように思います。
おそらく数人でまわして月々何百万位の利益を獲得するには非常においしいモデルな気もしますがアップサイドに限界があるように思いますので今後の各社の動きをウォッチしようと思います。