オンライン学習の「すららネット」上場。ビジネスモデルと今後の伸びしろについて考察
2017年12月にすららネットがマザーズ上場を果たしました。
翌年1月3日時点で時価総額は40億弱と、若干小粒ながらもリクルートのスタディサプリを筆頭に盛り上がりを見せるオンライン学習領域プレーヤーであり気になる存在です。上場時提出の1の部を中心に彼等のビジネスモデルについて色々考察します。
どんな会社のどんなサービス?
すららネット株式会社はゲーム感覚で学習出来るe-ラーニング事業「すらら」を提供している会社です。もともとはベンチャー・リンクという会社の新規事業でしたが、2010年に現すらら代表の湯野川氏が株式を買取MBOが成立。現在の株式会社すららネットが誕生しています。すらら自体は2005年から企画・開発が行われており、スタディサプリの誕生が 2011年であることを考えるとだいぶ早い時期に開始していたんだなということがわかります。2017年9月末段階で導入校数693利用者(ID)数49820に至っています。
すららネットのビジネスモデルとは?
すららは下記図解の通り塾や学校に対して提供するケースと個人に対して提供する ケースの2つにわかれますが基本的に現状は前者がほとんどです。
・売上利益の推移
H29数値に関しては3四半期分から算出した参考値です。
利益率はおよそ15%弱と高いわけではありませんが順調に前年比20%程度で成長を続けています。
・売上の大部分は塾に対してのすらら提供
一の部に記載のある提供者別の売上をみると 売上の大部分は塾が占めていることがわかります。
※一の部をもとに筆者が作成
導入校数は年末時点の数値を記載して計算しているので実際の単価は上記表とは異なりますがおよその金額感はこの通りです。
・加盟金をとらずに塾の開業支援
同社は物件探し、資金調達支援、集客ノウハウの提供など 塾の開業支援も併せて行っています。参考リンク:https://entrenet.jp/dplan/0000954/
ただし一般的なプランチャイズと違い初期で多額の加盟金をとらずに支援をしています。これは代表のポリシーがみてとれる部分です。
・加盟金 学習塾はどうしても最初は赤字、徐々に生徒数が伸びるごとに収益が上がるモデルのため、立ち上げ直後の集客もままならない時から高い支払い義務があると、経営そのものに影響が出る。
・ロイヤリティ 月々のスーパーバイザーの経営支援の対価として発生するロイヤリティですが、これについても学習塾では必要ないと判断しました。なぜならコンビニや飲食のように定期的な商品開発が必要な業態と異なり、学習塾経営は毎年の基本的な年間のスケジュールは同じものになります。
その結果私たちは、様々な名目でお金を取ることよりも、 「教育格差をなくす」というすららの理念の実現に賛同 してくださる方の経営を軌道に乗せたいと考え、あえてフランチャイズ形式を取らないことにしたのです。
同社公式サイトより:http://suralajuku.jp/contents/column01
すららネットの今後はどうなる??
理念をしっかりと掲げてそれに沿った事業展開をしている点は筆者としては好印象です。海外事業にも力をいれているものの現在の貧困学力低層向けは単価の問題から 収益性の部分ではイマイチであろうことからまずは日本におけるメインターゲットである塾への導入シェアを高めることが優先度が高いと想像されます。
少し古いデータですが、H20文部科学省の発表ににある小中学生の通塾率から推測すると小中学生だけでも350万人程度が塾を利用しています。高校生の予備校利用者を含めると400万人はくだらないでしょう。
すららの塾ID数は1.4万程度ですからIDベースでみたシェアはまだ1%未満ということです。ということはマーケットサイズ的にはまだまだ今後伸びる余地はありそうなものの同社の学習塾向けの売上の成長が前年成長でH27→H28で11%程度であることが気になります。
もちろんマーケティング・営業を強化することは前提ですが、一番は彼等が考える教務部分は塾の講師が提供しない、という考え方がどこまで浸透するかということなのだと思います。すらら導入校が実績をあげていき、「教務はオンラインソフトで」という考え方をスタンダードにできるかどうかがポイントでしょう。
以上すららネットの分析でした。
何かコメント等あればぜひお願いします。それではまた今度。