秀逸メディアと名高い「弁護士ドットコム」を分析してみました。<ビジネスモデル編>
■はじめに
「専門家をもっと身近に」を理念を掲げ、法律相談ポータルサイトを運営する「弁護士ドットコム株式会社」が2014年末上場を果たしました。
同社はYahoo!トピックスにも頻繁に掲載される日本屈指のオウンドメディアを運営する、言わずと知れたコンテンツマーケティングの勝ち組。
今回は彼らのビジネスモデル及びコンテンツマーケティングについて考察します。
※内容がずいぶん長くなってしまったため、本稿ではまずビジネスモデルや収益分析を行い、後編としてコンテンツマーケティング分析を行います。
■弁護士ドットコムとは?
設立は2005年。
もともと大手法律事務所に勤務していた代表の元榮(もとえ)氏が、インターネットを使って法律を一般の人にもっと近づける方法はないか、と考え事業を興したのがきっかけ。
出典:wikipedia
元榮氏も自身が大学生時代に交通事故にあい、その際にどうやって法律のプロに相談していいのかに困った経験から本事業の可能性を信じていたようです。
・どんなサービス?
弁護士ドットコムは日本最大級の法律相談ポータルサイト。
離婚、借金、相続といった比較的身近な問題に対して相談出来る弁護士を検索できるポータルサイトです。
2015年2月段階で約7000人以上の弁護士が同サイトに登録していて、これは日本全国の20%に相当します。
サイトに会員登録すると、法律の相談内容を書き込む事ができ、登録弁護士の何人かがそれに対して返答。場合によってはそこから仕事の依頼につながるという仕組みになっています。
弁護士ドットコムのビジネスモデル
同社のビジネスモデルは下記のようになっています。
同社の運営する「税理士ドットコム」はマッチング手数料モデルですが、弁護士ドットコムではマッチングでなく、広告掲載モデルです。サイト内検索時の上位表示やプロフィール詳細表示などですね。
■市場分析
同じく同社発表の「弁護士ドットコム「成長可能性に関する説明資料」を参考に市場について以下考察します。
上記のビジネスモデルで触れたとおり、同サービスの主な課金ポイントは
- 登録弁護士に対しての広告掲載
- 有料会員ユーザー
・弁護士に対しての広告課金
2015年2月14日現在で弁護士ドットコムには約7900人の弁護士登録があります。
現在日本には3.5万人の弁護士の先生が存在しますから20%強が同サービスに登録済みということですね。
同社の資料にも記載がありますが、そもそも弁護士の世界というのは広告も禁止されていたし、依頼主からいただく報酬も自由化されていなかったそうな。
それが2000年の広告解禁、2004年の報酬の自由化を経て状況が一変。
また、司法試験の制度がかわった、2006年以降弁護士の数が倍増しています。
つまり今後弁護士の先生達はしっかりと自分達をアピールせざるを得ない状況なるわけです。
今後15年をかけてさらに倍増するであろうことを考えると成長市場であると考えられます。
・一般ユーザーへの有料課金
そもそも弁護士ドットコムが存在するまでは、法律に関するQAプラットフォームなるものが存在しませんでした。
しかし市民生活を営む上で当然法律に絡む問題は存在していた。つまり多くのユーザーが誰に相談していいかもわからず、弁護士に頼むなんて自分のおさいふ事情を考えると無理、、と諦めてしまっていたわけですね。
今後も社会が複雑化していくなかでニーズは増すと考えてよさそうです。
・市場規模
弁護士ドットコムが発表している資料の中には
2000年:6495億=1人当たり収入3,793万円×17,126人
2010年:9511億=1人当たり収入3,304万円×28,789人
と記載があります。
個人・法人で大きさがだいぶ違うかもしれませんし、海外と比べてみたいところですが、本稿では割愛します。
少し乱暴な記載な気もしますが、
9500億×WEB広告比率15%と過程しても1000億はかたいのではないでしょうか。
競合といえる存在も無い中で上場時の同社の売上が数億円であったことから考えるとまだまだ今後大きく成長が見込めるといえそうです。
■収益・コスト分析
・売上・利益率の推移
ここからは新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)をもとに数字を紐解きます。
まずは売上及び利益率の推移を確認します。
・事業別売上:どの収益が大きい?
次に事業別の売上。
直近の売上拡大・利益率の向上は「弁護士マーケティング支援サービス」の開始によるものであると考えられます。
プラットフォームとして魅力的な規模になるまで弁護士からは課金せずコンテンツとトラフィックを集めて最近課金をスタートした、という構図でしょうか。
今のところ登録弁護士の10%程度がマーケティング支援サービスを利用しているようです。
・どんなコストが発生している?
販管費の内訳をみると以下のようになっています。
大部分が給与まわりですね。
課金ポイントが増したH26から販管費率が向上しています。H27以降ももう少し下がりそうですね。
今後の展開等
いかがでしたでしょうか。
法律の世界のQAサービスという特異なポジションを確立し、これからいよいよ収益化という様子でしたね。
弁護士に留まらず税理士の世界にもヨコ展開しさらなる拡大を狙っている点も評価のポイントでしょう。
上場時に初値が高くつきすぎたためか株価の推移は必ずしも絶好調とはいえないかもしれませんが、、。
とはいえブルーオーシャンである同市場において彼らの存在感は今後も大きくなり続けると考えて間違いないのではないでしょうか。
最後に今後の彼らの取り組みをご紹介し締めくくりたいと思います。
出典:http://www.slideshare.net/thekingofnights/201412-com
次回は同社の成功の裏にあるコンテンツマーケティングの取り組みについて考察します。
(2/22アップ予定。)