今後生き残りたいメディアはプラティッシャー化すべきであると思う件
「プラティッシャー」という言葉が登場してからずいぶんと時間が経ちました。日本では現Newspicks編集長の佐々木氏やドワンゴ川上氏等がその必要性を説いていたように思います。
筆者自身も日本でCGM型のWEBメディアの運営に携わる立場として、中期戦略を練る上で思考を重ねましたが調べれば調べるほど上記のような考えに至るわけです。
プラティッシャーという言葉は一時のプチバズワードのように扱われて、もうあまり言葉としてメディア上で見かける機会が少なくなった気がしますが、筆者個人としては流行り廃りの関係ない重要なテーマであると感じています。
そこで本稿ではプラティッシャーとはなんたるかを改めて記すとともに、その必要性について論じたいと思います。
■そもそもプラティッシャーとは?
プラティッシャーとは
パブリッシャーとプラットフォームの2つの側面を持つ存在を指す造語です。
ソーシャルメディア「Sulia」のCEOであるジョナサン・グリックさんという方がこの言葉の産みの親のようですね。
▼参考記事
「プラティッシャー」の頓挫:〝バーベルの中間〟はデッドゾーン | 平 和博
少し脱線しますがプラティッシャーという言葉自体はあまり評判がよくないようで、ジェイソン・キントという識者曰く、
「アヒルにビーバーの尾っぽをつけるか、ビーバーにアヒルのくちばしをつけるようなもの」
元記事:Say What? Technology-Infused Publishing Is Good Business. | Re/code
とのことです。欧米ですね。
そんなコジャレた皮肉を言っている暇があったらそれにかわるイケてるネーミングの1つでも提案してもらいたいものですが、、。
さて、本筋に戻ります。
2つの側面とはどういうことか、単純化して語ると
以下のようになります。
・パブリッシャー(コンテンツを生み出す)
・プラットフォーム(コンテンツが集まってくる)
少し乱暴な気がしますがこういうことです。
実施のサービスをあてはめてみるともう少しピントきやすいかもしれません。
自らが記事を書きそれを配信するのがパブリッシャー。
例えばこういったサイトがパブリッシャーですね。もちろんこの例以外のにも山ほどありますが、、、
※特にこれを選んだ理由はありません。よく勉強会で題材にしているからです。
プラットフォームは例えばYahooニュースやライフドアニュースのようなニュース
ポータルやニュースアプリがそれに該当します。
彼らは自ら記事を書くのでなく、契約を結んだパブリッシャーから提供された記事を
配信しています。その代わりパブリッシャーに対しては関連記事としてPVをバックしています。
※契約パブリッシャーへのコンテンツ利用料は有料のケースもありますが無料の場合が多い。
パブリッシャーはなぜわざわざ自らがコストをかけて作成したコンテンツをニュースポータルに提供するのか?
それはそうすることがパブリッシャーにとってPVを稼ぐ上で一番の近道だからです。
プラットフォーマーにはコンテンツを拡散(流通)させる力(ユーザー数)がありますから。
であれば、
「yahooニュースさんに記事を無償で提供してその分関連リンクからPVをバックしてもらおう」という話になるわけですね。
プラットフォーマーの力をかりることなくPVをかせぐことは通常パブリッシャーにとっては非常に困難なことなのです。
逆にプラットフォーマーは質のよいコンテンツを提供してくれるパブリッシャーの存在なくして成り立ちません。原則自らはコンテンツをつくらないわけですから。
このように日本のWEBメディア業界においてはパブリッシャーとプラットフォーマーの持ちつ持たれつな関係性が存在してきたわけです。
・パブリッシャーからみた限界:上限が見えているいつまでたっても楽にならないビジネス
こうしたなか、
一部のメディアが両社の性質を兼ねることを目指して動き出しました。
例えば東洋経済オンラインもその一つ。
詳しくはこちらの記事を参考にしていただければ思います。
要点だけ引用させていただきます。
佐々木氏「経済カテゴリーではPVでトップになりましたが、コンテンツを拡張したり、テクノロジーを強化したりしないとPVはこれ以上伸びない。マネタイズも広告だけだと遠くない将来に上限がくると感じています。現状の東洋経済オンラインはパブリッシャーの立ち位置ですが、今後はよりプラットフォームに近づいていかなければ生き残れないと考えています」
多くのパブリッシャーは
■収益
・純広告、アドネット広告
・ネイティブ広告/タイアップ広告
■コスト
・記事作成(インハウス編集、外部ライター)
というイメージでしょうが、
収益面はPVに比例=作成記事本数に比例。コスト=記事本数に比例。
つまりどこまでいってもあまりレバレッジのきいた状態に
なりません。しかもプラットフォーマーのユーザー=流通力にも限界がありますから例え利益率も無視して記事を配信しつづけてもいずれPVの伸びには限界がきます。
・プラットフォーマーからみた限界:ユーザーを囲える理由が必要
グノシー、スマートニュースといったニュースアプリが話題になっていますがそれでも日本におけるプラットフォームとしては未だYahooニュースが圧倒的です。
▼2015年2月15日の記事
主要なニュースアプリで最も利用者が多かったのは「Yahoo!ニュース(39.7%)」で、「SmartNews(15.7%)」「LINE NEWS(13.1%)」「Gunosy(11.2%)」と続いた。
良質なコンテンツを生み出すパブリッシャーの数は限られています。
日本だとおそらく1000以下ではないでしょうか。
そう考えるとどのニュースプラットフォームも同じようなコンテンツを配信することになります。
ユーザーからしてみれば
・Yahooさんが配信しているニュースだから価値を感じている
・ライブドアから配信しているニュースでないと読む気がしない
という心理はほとんど発生していないはずで、毎日なんとなく見てしまうというだけのはずです。
つまりプラットフォーム側はユーザーを囲うために最大限の努力をする必要があるわけです。
ニュースアプリの「〇〇万人ダウンロード達成!」を見ると彼らの努力が伺えますよね。
ニュースアプリは機械学習等のテクノロジーを用いてそのアプリの独自性をアピールしていますが、筆者は正直そこは現時点では本質的なサービスの優位性にならないと感じています。こと日本に限ってはテクノロジーを駆使して分別するほど良質なコンテンツは溢れかえってはいませんし、パーソナライズのアルゴリズムもおそらく各社似通ってくるでしょう。
その証拠にといってはなんですが、筆者のスマートニュースとグノシーの記事一覧画面はそっくりです。
そこでプラットフォーマーとしては自社独自の〇〇を模索していくなかで、
自社独自の「コンテンツ」の可能性を模索してパブリッシャー的な機能を自社でも強化するようになってきているのです。
いかがでしたか。
こうした潮流を知ってから最近のメディア界隈の動きをみると各社の思惑が少し見えてくるのではないでしょうか。
本ブログではプラティッシャーに関する目立ったニュースについて今後も独自の論考を行いたいと思います。
それでは今日はこのへんで。