秀逸オウンドメディア「弁護士ドットコムNEWS」を分析してみました。<コンテンツマーケティング編>
はじめに
前回の記事に続き本稿では弁護士ドットコムの成長を支えたコンテンツマーケティングについて分析を行います。(筆者の独自の解釈が含まれますがご容赦ください。)
▼前回記事
秀逸メディアと名高い「弁護士ドットコム」を分析してみました。<ビジネスモデル編> - ZOWEB
弁護士ドットコムはYahooニュースとも提携しているオウンドメディアである「弁護士ドットコムNEWS」を運営しており、オウンドメディアを集客エンジンとしサービスを成長させてきました。
同サイトの分析を通してコンテンマーケティング成功の秘訣を紐解きたいと思います。
全体像
弁護士ドットコム、そして「弁護士ドットコムNEWS」の関係性は以下のようになっています。
※「みんなの法律相談」もコンテンツマーケティング的な観点からいえば立派な分析対象ですが、今回はオウンドメディアの成功例としてドットコムNEWSにフォーカスすることにします。
弁護士ドットコムNEWSが各種ニュースメディアに記事を配信し、トラフィックバックを受けることで法律(法的なもめごと?)に関する見込み客を囲い、大本のサービスである弁護士ドットコムに送客するという構図ですね。
弁護士ドットコムニュースとは?
弁護士ドットコムニュースは、最近のニュースに対して法律の観点から専門家の解説をつけた記事を配信する法律系ニュースサイトです。
もともとその領域をカバーしているプレーヤーが不在であったためほぼ立ち上げと同時にYahooニュースと提携がスタートしているようです。立ち上げ間もないメディアがメディア界の重鎮と提携出来るケースはかなり稀有な例でしょう。
・身近なニュースになぞらえて法律を語っているので受け入れやすい
法律というと無条件に堅苦しい印象がありますが、たとえば同サイトに掲載されている記事をみると以下のようなものです。
・ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに——カップルが使うのは違法?
・47歳男性。妻と「10年間セックスレス」で気が狂いそう――望めば「離婚」できる?
・ろくでなし子さんの「まんこ」発言に裁判官「それ以上続けると意見陳述制限します!」
週刊誌的・ワイドショー的なネタを題材にすることでとっつきにくさを払拭しています。元々同社の理念が「専門家をもっと身近に」であることを考えると非常に理念にもマッチしたコンテンツであるといえるでしょう。
大本のサービスが法律に関するQAという性質上、サイトとしての認知・信用を獲得するという点でトラフィック以外にもメディア提携で得ているものは大きいと考えられます。
・弁護士ドットコム全体で月間700万訪問者を獲得。直近の3年で9倍の成長!ドットコムニュース単体でも500PV近くを獲得している!?
同社プレスリリースから引用
また、少し前のインタビュー記事をみると、
弁護士ドットコムトピックス単体で月間訪問者数は200万人、PVは300万を超えることもある。弁護士ドットコム全体では月間訪問者数440万人、PVは1,100万に上る月もある。
という記載があります。
2014年2月時点でのインタビューであるため、ここから本体サービスに対する流入はプレスリリースが行われた2015年2月まで大きく変わっていないと想像します。(決算書に広告費に対する投資が見られなかったため。)
そのため、仮に弁護士ドットコム本体が240万訪問→350万訪問に成長しているとすると、ドットコムニュースで獲得している訪問数が350万。
同様に上記のインタビュー記事から
訪問あたりPVを1.5と読み取り、現在のドットコムニュースのPVを予測すると
350万訪問×1.5PV=525万PV
500万PVを超えるニュースメディアに成長していると予測します。
日経新聞のインタビュー記事に
記事本数は月間130本になり、編集部の人員も「もう少し増やすかもしれない」という。これまでの記事が累計で1500本を超えており、
という記載があります。
ここから推測すると2015年2月現在約2000本の記事があるわけですが、そう考えると
500万PV÷2000=2500PV
1記事あたり2000PV以上を獲得している計算になりますね。(もちろん実際は記事あたりの偏りがだいぶ大きいでしょうが。)
法律+新聞社のバックグラウンドを持つ編集長率いる編集チーム
冒頭でも少しご紹介した通り弁護士ドットコムニュースの記事は
・前半=時事トピックスの説明
・後半=弁護士が法律の観点からニュースを解説
という形式になっており他のニュースメディアと比べると独自性の強いスタイルを持っています。
月間で100本以上の記事を配信している彼らの体制は
5人の社内編集者兼ライターと20人ほどの外部ライターらが記事制作を支える。
出典:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO75600560T10C14A8000000/?df=2
とのことで、それを率いるのが
朝日新聞の記者から、J-CASTニュース、ニコニコニュース(ドワンゴ)編集長を歴任という経歴を持つ亀松太郎氏です。
亀松氏は以前司法試験への挑戦経験もあるとのこと。そう考えるとこのメディアの編集長として氏以上の適任者は考えられないかもしれませんね。
コンテンツマーケティングとしての総合評価
以上弁護士ドットコムの運営する「弁護士ドットコムニュース」にフォーカスし分析しましたが、最後に筆者の独断と偏見に基づき評価を行います。
- コンテンツの独自性 :4.5
法律の専門家を囲っている彼らならではのコンテンツであり、ビジョンにもあったコンテンツであることから高い評価。
- コンテンツの質 :4
もと新聞社レベルの編集が携わっている、という点で◎。
法律をもっと身近に、というテーマに沿うのであれば一般ユーザーの声などをうまく取り込むことでより読み応えのあるものになるのでは?
- コンテンツの量 :3
現在月に130-150本?と予想するが、デイリー4-5本と考えると特段多い本数ではない。ストック性のあるコンテンツに関しては本体サイトに存在しているが(法律相談コンテンツ)スマホからは有料会員のみ、というマネタイズのポイントにしているため、ニュースコンテンツの中にうまくストックできるコンテンツも増やすのがよいのでは。
- コンテンツのデリバリー(波及):4.5
多数の有力WEBメディアとの提携が◎。
ニュースアプリ等での存在感がさらに増せばなおよし。
- コンテンツをつくる体制・組織: 3.5
法律の背景をもった編集長を含む強固なインハウス体制は良。
編集長への依存度が未知!?