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色んな会社のビジネスモデルを調べるブログ

上場を果たしたクラウドワークスのビジネスモデルと今後のテーマについて改めて分析してみた

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クラウドソーシングの雄「クラウドワークス」上場

年もあけてしまいかなり今さら感がありますが、筆者の興味領域である「コンテンツマーケティング」とも関連の強いクラウドソーシングの雄であるクラウドワークスさんビジネスを決算書を元に勝手に分析した上で今後の日本におけるクラウドソーシングの未来について考えてみようと思います。

目次

・会社/サービス概要
・ビジネスモデル
・収益/コスト構造
・今後の予想

クラウドワークス会社&サービス概要

言わずもがなですが簡単に下記にまとめます。

・2011年末に創業したクラウドソーシングを推進する会社

▽クラウドソーシングのイメージ

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(出所)同社発表「成長可能性に関する説明資料」

簡単にいうと企業が個人に仕事を依頼するという新しいアウトソーシングのあり方、及びワークスタイル。

  • 元ドリコム社長の吉田氏が立ち上げ、競合のランサーズと共に日本のクラウドソーシング業界を牽引
  • 2014年11月に上場。創業から短期での上場
  • 今後数年で7倍近い成長とも言われるクラウドソーシングという概念自体に注目が集まっている。
    ※矢野経済研究所「クラウドソーシングサービス市場に関する調査結果 2014」より引用

 

クラウドワークスのビジネスモデルはプラットフォームと受託の2通り

 

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あまりきれいなピクト図解ではありませんが上記のようになります。

 

収益構造について

上記に図解したとおりクラウドワークスの事業は「プラットフォームサービス」と「エンタープライズサービス」の2通りで構成されています。

プラットフォームサービス
いわゆるマルチサイドプラットフォームモデル。発注者と受託者を直接契約させて、納品に至ったら受託者から手数料を収受。

・エンタープライズサービス
企業が案件をクラウドワークスに直接発注。クラウドワークスが案件をワーカーに再委託し差額の利益を「進行管理手数料」という名目で収受。

収益構成をみてみましょう。

 

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※有価証券報告書第3期のデータを元に作成。

上記チャートを見てもわかるようにエンタープライズサービスの伸びが顕著です。
プラットフォームサービスの手数料よりも高い利益率設定で受託形式の案件を増やしていることが伺えます。もちろんその分営業マンやディレクターを抱える必要がありますが、1人あたり営業利益を見るとその点についても問題ないようです。大企業相手に十分な利益を確保出来ている受託案件が多いということでしょうか。

 

コスト構造の内訳について分析

営業費用の内訳を、同じく有価証券報告書-第3期のデータを用いてチャートにしたものが下記。

 

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エンタープライズモデル確立のための人件費増加
会員獲得のための広告宣伝費の増加

といったところでしょうか。

 

クラウドワークスの今後についての勝手な予想
肝はワーカーの実力の可視化か。

設立3年で上場までいったスピード感と彼らが目指したい世界観は素晴らしいと個人的に感じます。

リアル・ワールドにPER50倍がついているとかんがえるともう少し高いPERがついてもいいのになと感じますが、、。
さて、問題は今後彼らがどう成長するかです。

筆者が個人的に考える今後のクラウドワークス(クラウドソーシング業界の)KWDは下記です。

・成約率
・ワーカーの成長
・ワーカーの評価

成約率を上げない限りはプラットフォームとして大きく成長することは難しい。

現状の売上を見ると上記のチャートで示したとおり現状ではエンタープライズが占める割合が多いです。


今はクラウドソーシングの価値を説いて回る意味でもまずエンタープライズを一時的に拡大してもいいかなと感じます。

しかし、どこかのタイミングでプラットフォーム事業で大きく売上を確保する必要があります。
その場合もポイントは「成約率」。仕事のマッチング率ともいえるでしょうか。

矢野経済研究所の推計によると「2013年の約246億円から2017年には約1437億円へと約6倍に成長する」とのことです。

しかし上記の数字は仕事として成約に至らなかった金額も含む総額。実際にクラウドワークスのような事業者の売上になるのは

仕事の総額×成約率×手数料率

です。
手数料率を大幅に増えることはないと考えられますからどれだけ仕事のマッチングが行われるかがポイントです。

・マッチングが起きるためには信頼のおけるユーザーの確保と紹介の仕組みが必要

こちらの記事で代表の吉田氏も言っていますが、今後クラウドソーシングに求められるのはユーザーの信頼性です。

どこも馬の骨ともわからない人に企業が仕事を依頼することは考えづらい。

信頼性を担保するためにユーザーの実力や実績を可視化する試みも必要でしょう。

そして、可視化するだけでなく、案件に対して適切なユーザーが紹介される仕組みが必要です。
過去の実績や実力を元にしたビックデータ解析によるマッチングアルゴリズムですね。

そうすることが出来ればユーザーが「使われる」という力関係でなく、適切な実力を持ったユーザーに適切なFeeが支払われる理想的な世界観が成り立ちます。

 

すでに同社はユーザーに対する教育にも乗り出しているようですし、
「フリーランスに対して社会基盤になる」とも宣言していますから方向性として安心できそうです。


まだまだ産声を上げたばかりの本市場が本当に予測通りに成長するのか。クラウドワークスの活躍に依る部分は少なくなさそうです。

旅行メディアに学ぶ。必ず効果の出る旅行業界のコンテンツマーケティング事例

自分の中で現在最も重要なテーマの1つであるコンテンツマーケティング。
WEB業界で「時代はコンテンツマーケティング」と言わて久しいですが、海外ではすでにContents Marketing is dead という主張も現れているようです。

これは単なるバズワードなのか。
私個人はここ最近登場している〇〇マーケティングとは毛並みが違って流行り廃りのない本質的なマーケティング手法であるように感じています。

 

しかし国内では成功事例が少なく、あったとしても大手企業のものであるのも事実です。

そこで本ブログでは大手企業でなくても実施可能な良質なコンテンツマーケティングの事例を継続してご紹介していきます。

>><以前の記事>不動産業界のコンテンツマーケティング事例

 

今回取り上げるのは旅行メディア「Triport(トリポート)」です。

 

Tripport(トリポート)とは?

 Tripportは旅の情報共有サイト「Compathy」のオウンドメディア。

 

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旅に関するニュース、ハウツーやインタビュー記事などを掲載しているニュースメディアです。

 

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広告を一切掲載せず、目的をCompathyに対しての集客エンジンとして特化させています。

 

他メディアへの記事配信によるトラフィックバックを獲得

 記事を読むとわかりますが、いずれもしっかりとライターが書いている記事であり、クラウドソーシングを使って量産している類のものとは一線を画しています。

そのため参照元を分析すると様々なニュースメディアからトラフィックを得ています。筆者が確認出来ただけでも

 

  • ハフィントン・ポスト
  • マイナビウーマン
  • ガジェット通信
  • ファッションスナップ

 

など。

 

▽メディア提携例)(マイナビウーマン)

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メディア提携による効果はトラフィックだけではない

 

下記のグラフはTriportが開設してからの被リンク数の推移をあらわしたもの。

 

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※ahrefsにて調査

順調に右肩あがりに増加しているのがわかります。
これは提携メディアに掲載された記事からのリンクによる効果が大きいと考えられます

※もちろんはてぶされる、個人ブログや2chまとめサイトに取り上げられるというタイプのリンクも存在しています。

こうしてリンクが集まることによってサイトのSEO効果も高まり様々な記事でロングテール集客が出来るようになっています。
試しにSimilarWebを使って本サイトの集客経路を分析すると以下のようになります。

 

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検索(Search)からの集客の割合が多いことがわかります。
キーワード単位での集客を確認すると、

 

・ビザとは

・スーツケース パッキング

・イビサ島 ドラッグ

 

といったキーワードでの流入があるようです。
おそらく特別キーワードマーケティングを行って記事を書いているというよりはたまたま書いたネタに含まれているKWDで上位表示されている印象ですね。


ニーズが検索キーワードにあらわれにくい商品やサービスこそコンテンツマーケティングとの相性がよい

 前述のとおりこのサイトの目的は同社が運営する旅の情報共有サイト「Compathy」への集客です。逆にCompathへ直接集客しようと思ったらどのようになるでしょうか。

 

・旅 思い出 共有

・旅 予定 写真

 

などでの検索があまり発生すると思えないですね。
そう考えるとSEOは効果的ではないかもしれません。

Compathyが有料サービスでなく、LTV(生涯顧客価値)とCPA(成約単価)を天秤にかけることもできないことからリスティングもつらそうです。

 

同じ発想でどこかに純広告を出すというものあまり、、。

 

こういった本サービスに直接集客が難しいケースにおいてはコンテンツをメインにした2ステップでの集客は遠回りにみえて非常に効果的です。

 

地道な方法ですが、記事は一度書いてしまえばその後のストック効果もあるので狙った属性のターゲットを継続的に獲得できるからです。

そういった意味では筆者はニュース性のあるフロー系記事中心よりは、後になってから読んでも価値のあるストック系記事を中心に記事のポートフォリオを組むことをおすすめします。

 

 

事例比較!不動産業界コンテンツマーケティングまとめ4選【賃貸編】

■はじめに

最近自分の周りでも「コンテンツ・マーケティング」という言葉を耳にする機会が多くなりました。

WEB系のフォーラムなんかでも「SEO?いやいや時代はコンテンツマーケティングでしょ」的な言われ方がされるようになりましたが、セミナー等で一部の成功事例が語られているに過ぎずまだまだその効果の程は未知の部分が大きいように思います。

 

そこで本ブログでは実際の事例を通してコンテンツマーケティングの実態にせまりたいと思います。本稿では第一弾として不動産賃貸業界を対象に分析を行います。

  • suumo
  • HOMES
  • ietty
  • HEYAZINE

老舗2つ新興系2つの4つを対象とします。
それではまずは新興系2つから分析を始めます。

ほぼ週間iettyマガジン

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コンシュルジュ型賃貸WEBサービスを展開するiettyのオウンドメディア。

その名が示すとおり記事の更新はほぼ週間で、主に賃貸系のお役立ちネタを中心にコラム記事を配信している。

特徴/目立った効果

そもそもあまり記事数として多くはない。
Googleで検索する限り、150前後の記事数?といったところでしょうか。

similarwebで見る限り検索トラフィックが一番多い。

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ただし記事のタイトルなどを見ている限りキワードマーケティングを駆使してトラフィックを狙いにいっているというよりはたまたまロングテールで順位が上がっている印象。

例)

「おとり物件」に騙されるな!いえってぃくんがコッソリ教える、おとり物件を見抜く8個のポイント

の記事が「おとり物件とは」で上位表示など。

 

本サイトはサムライとの支援の元作成したもののようなので参照元のほとんどはsomewirte.jpが占めている。

 

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Facebookとの連携を重視している点や記事のタッチからしてもバイラルを意識しているようにも思えるがはてぶが多くついている記事はごくわずかのようです。

いいねに関しても得に多く付いている印象はありません。

 

▽50はてぶ以上ついた記事は一本だけ。

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HEYAZINE

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先日等ブログでもHEYAZINEプライムについての記事を書いたが再登場。

仲介手数料ゼロ円を実現するHEYAZINEプライム。同社が手がける一般向け賃貸ポータルサイトがHEYAZINE。(2014年12月からサイトの趣向をシフトしているようですが。)

特徴と主だった効果

サービス開始から1-2年のサイトではあるが初期の段階からコンテンツマーケティングには力を入れている印象があります。
事実コンテンツの数も幅もiettyと比べると豊富です。

とくにインタビュー記事はインタビュー先が「HEYAZINEの記事に掲載されました」という形式でコーポレートサイトTOPからリンクをくれているケースが多いのでSEOの観点からも有効でしょう。

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検索からのトラフィックが一番多いようです。

※同一ドメインで賃貸ポータルサイトを運用しているので物件名などのテールワードで流入が発生しているのでしょう。

 

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ソーシャルでの波及観点から見るとあまりイケてないかもしれません。

記事にソーシャルプラグインも設置していないくらいです。

※2014年12月にリニューアルされてから設置されていますが特別バズっている記事はないようです。

 

HOMES PRESS

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ご存知不動産賃貸の雄HOMESが運営するオウンドメディア。
自社で抱えているライターから住まい・不動産系の専門家が記事の作成を担当しており、レベルの高いメディアになっています。


また記事はexiciteニュースとコンテンツ提携されているようで記事の波及面でも◎。

▽コンテンツ提携例

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流入の面だけでなく、メインのドメインである「homes.co.jp」の下層ディレクトリにPRESSが設置されているため、各種ナチュラルなリンクがついてドメインを強化する効果もあるでしょう。

 

suumoジャーナル

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出ました真打ちsuumo。

リクルートが運営する不動産賃貸サイト「suumo」のオウンドメディアです。
説明の必要はないかもしれませんね。

不動産関連の記事はもちろんのこと、広く暮らしに関する記事をデイリーで配信しています。

 

元リクルート編集部のライターを中心に100弱のライターによって運営されているようです。
※2014/12/7時点でサイトに掲載されているライターは80名。

 

記事の波及の面では業界のドンYahooニュースとコンテンツ連携がなされているため文句なしです。

 

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Yahooニュースとも連携をしているため、ニュース記事には特定の企業に対しての取材等を行った記事もあります。

そういった企業からするとsuumoジャーナルに取り上げられたことはブランディングにつながるため、コーポレートサイトから「掲載されました」形式でのリンクが数多く得られています。さすがのリクルートブランドですね。

 

▽専用のバナーも用意しているみたいです。

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▽ニュース欄からリンクする形式

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まとめ:老舗VS振興サービス対決、勝者は?

以上4サイトについて紹介をしましたが、結果効果を比較すると下記のようになるでしょう。

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▽リサーチ日程

2014/12/7

▽リサーチ方法

ページ数=Google上でのsite:検索

被リンク数・リンクドメイン数=ahrefsを用いた分析

※HOMESPRESSに関してはSimilarweb及び、ASEがブロックされたため記載なし。

ソーシャル=はてぶ/Facebook等記事についてソーシャルアクションの数値を目視チェック

 

コンテンツマーケティングという観点からの評価だと、

 

・どれだけ良質な見込み客をサイトに誘引できたか?

 →KPI:メディア提携/ソーシャルからのトラフィック

・コンテンツを用いてナチュラルにリンクを獲得しドメインを強化

 →KPI:被リンク数

 →検索エンジンからのテールワードでのトラフィック

 

という見方ができるのではないでしょうか。

※上記4サイトではそれ以外の目的のコンテンツが見当たらなかったため。

ここではコンテンツマーケティングの目的を一旦狭義で捉えます。

 

結果本稿では不動産賃貸サイトのコンテンツマーケティング覇者をSUUMOであると結論づけます。

※これだけ引っ張ってsuumoって、、的なクレームは受け付けません。

 

総論として不動産業界に限った話ではないかもしれませんが、コンテンツマーケティングでは一定の質を担保した記事を量産していき、

 

メディアとしての信頼獲得

メディア提携

見込みトラフィック&リンク獲得

 

が叶うのだと考えます。

また、コンテンツの企画次第ではインタビューのように、工数こそかかれど必ずリンク獲得につながる系のものも考えられるためバランスよくコンテンツのポートフォリオを組みべきでしょう。

 

以上コンテンツマーケティング研究第一弾でした。

 

不動産仲介手数料ゼロを実現した異端児。ヘヤジンプライムのビジネスモデルとは?

はじめに

不動産業界は巨大な産業であるにも関わらず以前から買い手側に情報が十分に与えられていないイケていない業界の代表格でした。しかし昨年2013年頃から本市場に風穴を開けようと奮起しだしたスタートアップが登場しています。

今回は遂に「仲介手数料ゼロ円」を実現した不動産賃貸の異端児、「ヘヤジンプライム」をご紹介します。

目次

  • ヘヤジンプライムとは?
  • ビジスモデル考察
  • 最後に(課題や改善点)

ヘヤジンプライムとは?

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「ヘヤジンプライム」とは2014年11月にサービスをスタートしたばかりの賃貸ポータルサイト。手がけるのはその名も「イタンジ株式会社」。同社HP上には

イタンジは、ITを使って不動産業界に革新をもたらすことを目的として設立されました。

との記載があり。まさに旧態然として不動産業界に風穴をあける異端児であるようです。

CTOの将積氏はもともと「賃貸360°」というサイトを運営している方で、そこでは出来なかったことをやるために立ち上げたのがイタンジのようですね。

参考:僕がHEYAZINEを作った理由 ~ イタンジ株式会社 取締役CTO 将積健士

 

▽CTOの将積氏

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画像引用元:http://heyazine.com/article/20130610


・サービスの特徴やポイント

何と言っても一番のポイントはヘヤジンプライムを通して部屋を決めると、今まで引っ越し時の悩みのタネであった不動産仲介手数料が無料であること。大体どの業者さんも家賃1ヶ月分の手数料とっていきますよね。

またネットから内見予約が出来て、当日は業者無しで自分だけで内見が出来る「セルフ内見」なるサービスもユーザーにとっては嬉しいポイントでしょう。

そもそも仲介手数料が発生する仕組みは?なぜヘヤジンプライムはそれを無料に出来たのか?

通常は一般のユーザーが不動産を借りる場合、不動産仲介会社が借り手からも貸し手からも手数料を得るのが一般的でした。つまり二重に手数料をとっていたわけです。

 

不動産オーナー

↓(手数料)

不動産仲介会社

↑(手数料)

借り手

 

そこで同社は実店舗を持たないことを始めとした様々なコストを抑えることで借り手から手数料を取らないモデルを確立したのです。

ヘヤジンプライムのビジネスモデル

ビジネスモデルについては下記のようになっていると考えられます。

 

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※仲介手数料と広告費用

不動産仲介業者は法律で不動産の貸し手からとれる手数料を1ヶ月分までと規定しています。

しかし、例外規定として貸し手が広告費を払うことは許しています。

つまり不動産オーナーからしたら他の物件よりも自分の物件を優先的に借りてに紹介してほしいので多めにマージンを渡すからよろしく。という仕組みになっています。

今後に関して課題や改善点など

・広告費用の出ない物件を紹介する場合赤字問題

これはCTOの将積氏も自身のブログで書いている通りですが、借り手からほぼお金をとっていない以上、収益上は仲介会社からの手数料に頼ることになります。

しかし、物件によっては不動産オーナーが広告費用を全く払わないケースも存在するので、低コストとはいえそういった物件を紹介してしまうと赤字です。


しかしヘヤジンプライムの場合はとにかくユーザー視点を貫くことがポリシーのようなので、そういった赤字案件でも進んで紹介する姿勢なのだとか。

 

・サイト上の物件情報が物足りないケースも

 

試しに筆者もサイトに登録して使用してみました。

憧れの豊洲の物件を検索してみましたが、掲載されている情報はあまりにも簡素で正直問い合わせしたいと思えるものではありませんでした。

※他社のサイトと比べる違いが伝わるかと。

▽ヘヤジンプライム

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▽同物件情報@アクセルホーム

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同社は不動産仲介業者向けに管理システムを提供していますが、もしかしたらサイトに掲載する情報がそれと連動していること原因なのか?

※仲介業者さんがあまりしっかりと情報を入れていないとか?

 

いずれにしてもユーザー視点をとにかく追求しているのであればサイトに掲載する情報はリッチにしていくべきだと思いますね。

2013年設立のまだまだ出来立ての会社なので今後色々な改善があるのでしょう。

 

口コミで不動産業界を変える!?口コミデータ件数100万件突破のマンションノートとは?

はじめに

2013年頃から不動産業界まわりで誕生したスタートアップ企業が増えてきているように思う。ietty、Suvacoなど既存の強者であるSUUMOやHOMESとは違った攻め口のプレーヤーが誕生している。本稿では不動産業界に「口コミ」という切り口で新たに台頭したマンションノートのビジネスモデルとサービスの特徴について考察する。

マンションノートとは?

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2013年3月にサービスを開始した国内の分譲賃貸マンションの口コミサイト。

スタートして1年の2014年3月には物件に対する一般ユーザーの書き込みが100万件を突破。

サイトを見るとわかるが、マンションノートは物件に対しての口コミを検索することに特化している。サービスを手がけているのは、博報堂エニグモCOOというキャリアを持つ藤井氏が率いるスタートアップの株式会社レンガ。

▽こういった方々

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引用元:http://engineer.typemag.jp

上記サイトから藤井氏のサービス立ち上げに対する想いを抜粋させていただく。


「2010年ごろ、わたし自身がマンション購入を検討していたことがあり、不動産のサイトを調べていました。しかし、どのサイトを見ても掲載されているのは間取りや階数、方角などの基本情報がほとんどでした。マンションについての口コミが集まる掲示板もありましたが、そこに集まる情報は玉石混淆で、肝心の住民の雰囲気や日々の利便性、治安の善し悪しといったイメージを得ることができませんでした」(中略)そのような経験を経て、『マンションでのリアルな生活を想像することができるWebサービス』のイメージが膨らんでいきました」

自ら口コミを投稿するとポイントが貯まり他人の口コミがわかる

サイトの作りは非常にシンプルだ。

サイトには物件に対する口コミが並んでいるが、初期状態では2件しか口コミが表示されておらずそれ以上は「非公開口コミ」とされている。それ以上に読みたい場合は1物件あたり100ポイントを使わなくてはならない。

ポイントは自らも口コミを書くことで得られる。100文字あたり100ポイントが付与されるという仕組みだ。

口コミはカテゴリを選択して記述する方式。口コミ+1.0から5.0の9段階で点数をつけることになっている。良い点と悪い点両方をマストで記述することによって不動産業者のサクラ書き込みを防止しているとかんがえられる。

▽口コミ投稿画面

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▽100文字=100ポイント

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口コミ100万件突破、という表現を見て「どうやってそんなに多くのユーザーを獲得したんだ??」と思ったがどうやら1人のユーザーが1物件に対してかなり分割して投稿している例もあるようだ。

 

▽同一ユーザーが同一物件に対して13件の口コミを投稿している例
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独自のランキングアルゴリズムを開発し、物件に対して得点をつけている

マンションノートのもう一つの特徴としてあげられるのがこれだ。

駅からの距離や近隣に何があるか、などの情報とユーザーから得られた口コミ情報を掛けあわせて独自に物件に点数をつけている。

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このアルゴリズムの研究に関しては下記のサイトにもあるように東大大学院と共同研究を進めているようである。

http://engineer.typemag.jp/article/mansion-notexutokyo

■口コミはお金で買わずに集める。しかも集まったものは100を超えるチェックリスト項目を人間の目で確認!

 

個人的にはここが一番驚きの点であった。

こちらの記事内の藤井氏へのインタビュー内に下記のような記述がある。

口コミは買うな!超地道にサイトを伸ばすマンションノート | The Startup

最初はクラウドソーシングな どを使って1投稿いくらかお金を払えば口コミを集められるだろうと思っていました。実際にお金を払って集めた口コミは、実は使えない信頼性が低いものが多 く。。。

すぐにそういった手法での口コミ獲得は断念しました。

その後、博報堂出身の藤井氏と社内のメンバーの知り合いを駆使して足を使って口コミを獲得していった。かつての同僚や後輩に頼み込み、1人あたり○件の口コミを取ってくれ。など極めて地道に口コミを集めた。

 もちろんどこかのタイミングで自然に口コミが集まるようになっていったのであろうが、クラウドソーシングがこれだけ当たり前になってきたからこそその新鮮に感じられた。

また本当にそこまでやっているのかどうか信じられないが、下記のようなインタビュー記事も発見した。

口コミの審査をしていて、特に気になった口コミを投稿したユーザー宅には、我々社員が実際に訪問し、事実確認を行うようにしています。その結果、同じマンションでは、想像で書いているような口コミを審査で落とせるようになりますから

引用元:http://techable.jp/archives/12207


マンションノートのビジネスモデル

現在はおそらくまだサービス2期目なのでマネタイズよりもサービス拡大に力を入れているのであろうが現状のビジネスモデルは下記だと予想される。

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今後の収益パターンとして、

 

・一般ユーザーに対しての課金(ポイント販売)

・企業に対してのデータ販売/データ使用料

 

等が考えられると感じる。


Yahoo!不動産での口コミデータ連動

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マンションノートの今後に関して

・サイト上からのコンバージョンポイントの設置

現状のマンションノートはストイックに口コミ閲覧サイトのていをたもっており、サイト上にコンバージョンポイントが設置されていない。

物件に対しての資料請求が出来る、もしくは賃貸ユーザー向けであれば内覧の予約などの成果ポイントを設け、それに対して課金を行うような流れになるのではないか。

SEOでの流入獲得も問題

ただしその場合SUUMOやHOMESといったプレーヤーとSEO勝負をすることになるので厳しい戦いになるかもしれない。

不動産賃貸の場合、多くのユーザーは

  • 地域名+賃貸
  • 物件名

のいずれかを中心に検索をする。

地域系の検索については大手サイトの牙城を崩すことは容易ではない。

物件名での検索に関しても現状ではシェアの多くを獲得している城名状況ではないようだ。

 

事実こちらの記事内でのインタビュー結果として
月間300万PV程度という発表がある。もし現状口コミを獲得している物件の多くが上位表示されているようであればそれよりもずっと大きなトラフィックを獲得しているはずである。

※ちなみにSUUMOは月間PV数1億5000万。

http://www.sbbit.jp/article/cont1/26962

 

提携先のYahoo不動産からリンクを物件単位で獲得しているような形でその他提携を増やしていきリンクを獲得し、物件名での検索市場を獲得していく算段であろうか。

もしくはSEOでの集客からの成果課金以外の大きな収益を見据えているのだろうか。


いずれにしても立ち上げから2期目のサービスであるにも関わらず注目を集めているのは事実である。今後のマンションノートの行く末に注目したい。

バーチカルメディアの3C分析で読み解く。 日本のリノベーション業界で勝つのは誰だ??

■はじめに

先日WEB業界で大きなニュースとなったDeNaによるiemo買収。
日本版Houzzを標榜し、わずか立ち上げ9ヶ月でここまでサービスを成長させた代表村田氏を中心とする チームとDeNa資金及び開発力が出会ったことで日本市場におけるリノベーション市場の覇者はiemoに なるというのが大方の予測になっているように思う。
しかし本記事ではあえてフラットな目線で日本における当該市場でのプレーヤーを分析し、海外でのモデルサイトとなっている「Houzz」とも比較することで 誰が日本市場における覇者になるのかを分析する。

■目次

  • Houzzについて。そもそも何がすごいのか?
  • 日本における主要プレーヤー
  • 総評:現時点で一番houzzに近いのは?

Houzzがすごい理由はバーチカルメディアの3Cを兼ね備えているから

以前

知らないと恥ずかしい!2014年、今一番知っておくべきイケてるWEBメディア「Houzz」研究 - ZOWEB

にてHouzzのビジネスモデルやサイト の構造を分析したが、少し見方を変えてHouzzがなぜここまですごいと言われているかを解説したい。

シリコンバレーにあるベンチャーキャピタルKPCBのパートナーである、Mary Meekerのインターネットトレンドレポートに登場する「バーチカルメディア3C」のフレームワークを用いて分析をする。


・バーチカルメディアの3Cとは

Contents(コンテンツ)
Community(コミュニティー)
Commerce(コマース)

の3つを兼ね備えていることがバーチカルメディア成功のための法則であるという考え方。
本記事では上記3Cをベースにコンテンツの部分を、コンテンツ(生産)とコンテンツ(拡散)の2つにわけて分析をする。

 

Houzzを分析すると以下のようになる。

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このようにHouzzはバランス良くすべてを兼ね備えている。

コンテンツをもとにしてコミュニティが生まれ、質のよいサイト滞在を生み、そこからシームレスなコマースが行われる、という流れだ。

それでは次章で日本内プレーヤーについても同じように分析をしてみよう。

 

日本における主要プレーヤー。iemo VS suvaco

本記事ではiemoに加えて、suvacoを現時点での主要プレーヤーとして挙げる。それでは両社について詳細にみていこう。

・iemo

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・概要

▽立ち上げ
2013年12月18日

▽運営者
iemo株式会社。
シリアルアントレプレナー村田マリ氏を中心とするスタートアップ。
村田氏の出身であるサイバーエージェント出身者や元AllAbout編集長などを擁する。

▽サイト・サービス概要
インテリアや生活に関するまとめ記事投稿サイト。
気に入った写真やまとめ記事をスクラップブックできる。

・iemo 3C分析結果

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コンテンツに関してはキュレーションアプリAnntenaに配信しているためトラフィックを獲得出来ている点とFBからの大量流入を得られている。
人気のまとめ記事に4桁台のいいねがついている例もある。

 

▽このように4桁いいながつく記事はザラ。

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iemoの事業内容は「家づくりのプラットフォーム運用」とされているが、まとめ記事に関してはストイックにインテリア・リフォームだけでなく比較的生活のアイディア的な ライトな読み物を含む。


・suvaco

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・概要

▽立ち上げ
2013年7月24日

▽運営者
メリルリンチの中田寿氏を中心とするスタートアップ。
コンサル・出版・WEB開発出身者などからなるチーム構成。
※グループサイトのリノベりすは出版社の扶桑社と共同運営。


▽サイト・サービス概要
ユーザーと建築家のマッチングサイト。
建築家等による作品事例写真がカタログサイトのように並ぶ。


・suvaco 3C分析結果

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コンテンツについては雑誌クオリティのきれいな写真が並ぶがユーザージェネレートではない。Mary Meekerのいうコンテンツ=ユーザーが生み出す+プロ視点という定義から判断すると△か。

コミュニティ要素に関しては現時点ではなし。単純に資料請求への導線。

総評:現時点ではやはりiemoが最有力

iemoとsuvacoどちらが日本のいえづくりプラットフォーム勝者に近いかに関しては”現時点ではiemoに軍配を上げざるを得ない。

理由として感じたのは下記。

(一般+プロの)コンテンツ生産→コミュニティの形成がうまくいっている。
コンテンツを広くデリバリー(拡散)できている。

住宅・インテリアの領域に特化したバーチカルメディアとして必要な要素をしっかりと含んでいるということだ。

しかしiemoがこのまままっすぐに進めばHouzzになれるというわけではないように思う。

なぜか。

それはiemoが扱っているコンテンツの質にある。

iemoは立ち上げから1年足らずでPVの拡大に成功している。どんなコンテンツを用いてユーザーを獲得したのか?サイト上で人気になっているコンテンツを見るとわかる。

・オレンジハニーバターの作り方『やる気のない朝』を元気にしてくれる♪頼もしい朝食
・水を入れるだけなんてもったいない!製氷皿のいろんな使い道教えます。
・それ捨てないで!お菓子のシリカゲル(乾燥剤)だって徹底的に再利用しよう
・楽しすぎてやめられない♪はぎれを使ったカラフルでかわいいロープの編み方。頭がからっぽになる
よ!
・あるもので可愛く焼き上がり?お菓子の型を簡単・意外な方法でつくっちゃおう☆

上記は2014/10/25時点での人気まとめ記事の上位に上がっていた記事を上から順に抜き出したもの。

みての通り住宅・インテリアのまとめ記事、というよりは生活の知恵系コンテンツがほとんどだ。

 

つまりiemoは自身でも公言している通り、既存の女性誌をリプレースする形でユーザーを獲得している。少し暴な言い方をすれば、暇な時間になんとなく好きなインテリアや暮らしの知恵がおしゃれにかわいく記事になっているからiemoを閲覧しているのであって、家をリフォームしたいからそのネタ探しにiemoを閲覧しているというユーザーは少数派だろう。

そこに対してリフォーム事業者とのマッチング機能を追加したとしてどの程度マッチングが活性化するかは正直不明だが、Houzzのようにはいかはずだ。

 

また、先日レシピブログとの提携がニュースになっていたが、それをきくとなおさらiemoをピュアな家づくりプラットフォームにするのではなく、ある種の女性向けニュースサイトのようなものにする目的なのかと個人的に感じた。

逆にsuvacoでいうと、サイトに掲載されている情報は完全にリフォーム目的ユーザーがターゲットのものだけである。その分コンテンツのデリバリー・拡散に苦戦しているのだろう。

Rommieでキュレーターとして記事を書くなどして、検索流入以外のトラフィックも獲得する努力はしているようだがiemoと比べるとPVが見劣りするはずだ。

 

▽Roomieでキュレーターとして記事連載。月数本ペース。

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今後suvacoがCGM要素のあるコンテンツ生成をうまくサービスに取り入れることに成功すれば巻き返しもゼロではないのではと感じる。

いずれにしても両社ともにこのままいけばかならずOKというレベルには達していないというのが私としての所感。
新規参入者の可能性も含め、今後本市場にどのような展開がおきていくのかをウォッチしたい。

 

出版業界のビジネスモデル研究

はじめに

先日角川とドワンゴの合併がニュースになっていたが、WEBの世界においては今後もコンテンツの作り手と拡散・デリバリーする側が手を取り合う(もしくは買収)流れが強まるのではないかと筆者は個人的に感じている。

WEBビジネスの世界に生きる私にとって、コンテンツの作り手代表格である出版業界は無視することの出来ない存在である。

そこで今回は、出版業界のビジネスモデル・及び主要なプレーヤーについて分析する。

■目次

  1. 出版業界研究
  2. 業界MAP、主要プレーヤー
  3. ビジネスモデル
  4. 業界の課題・今後

出版業界研究

業界規模

業界に関するまとまったデータが見当たらなかったため下記の記事から引用させていただく。

昨年の書籍と雑誌の総売上額が、前年比3・4%減の1兆7711億円だったことが9日、出版ニュース社の調べで分かった。9年連続の市場縮小

 引用元:http://www.asahi.com/articles/DA3S11181067.html

・業界MAP

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引用元:http://www.ecareer.ne.jp/contents/business_map/06.jsp


上記のMAPにある通り出版業界と一口にいっても彼らがメインで扱うコンテンツによって分類がされているようだ。

売上金額で見るとリクルート・ベネッセが大きく飛び出ているが、果たしてここに彼らを「出版社」として紹介しつづけることは適切なのだろうか、、。

日本における出版社の数

出版社数に関しては以下の通り。

2006年 4,107 社
2007年 4,055 社
2008年 3,979 社
2011年 3,736 社

http://www.1book.co.jp/003727.html
減ってきているとはいえ約3600の出版社が存在している。


主要プレーヤー

帝国データバンク 出版業界 2012 年度決算調査 によると
売上のトップテンは下記の企業である。

 

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集英社
講談社
小学館

の大手3社が売上では頭ひとつ抜けているイメージ。

上記のデータは少し古いものなのであらわれていないが、ながらく続いたこの3強体制にKADOKAWAが食い込むことになるのだろう。

また業界の一部を切り出したデータであるがこちらのデータも役に立ちそうなのでご紹介。

 

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引用元:http://www.1book.co.jp/005457.html

■出版業界のビジネスモデル

出版業界のビジネスモデルは下記のようになっている。

 

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流れとしては出版社が本を企画・製作(メーカー)。取次業者が書店に本を配本、書店で消費者に本を販売。というもの。

流れとしては一般的な小売業に似ている。メーカー→問屋→小売のようなものだ。

出版業界においては2つの特徴的な制度を利用している。
再販制度委託制度である。

この説明については多くのサイトで詳細な説明があったため、引用させていただく。

 

「再販制」

独占禁止法第 23 条に規定された再販売価格指定販売契約の許可のことである。より詳しく言うと、そもそも売買契約において相手方に再販売の価格を指定して販売する行為は競争抑制的であるので独占禁止法において禁止されているが、ごく一部の例外的商品については再販売価格を指定した売買をしてもよいということである。その例外商品の中に書籍が含まれている。

 

ようはメーカーが小売店に「●●円で売ってね」と契約出来る制度。


「委託販売制」
文字通りに「小売業に販売を委託する」制度で、小売業に陳列されている商品の帰属は小売業ではなく、製造業に属する。小売業は販売額の一定の割合を手数料として獲得できるが、売れ残った場合は無条件に返品できるために在庫リスクは少ない。

つまり書店は、自ら仕入れた商品を売っているのでなく代理で販売しているから
売れ残った商品は返品してOKですよ、という仕組み。

引用元:http://www.waseda.jp/sem-domon01/members/arashi/arashi.pdf


また同引用元内にコスト構造についてのわかりやすい解説がされている。

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業界の課題・今後

雑誌の売上低迷

冒頭の売上規模の紹介部分で少し触れた部分ではあるが、そもそも業界として売上が年々減少しているという事実がある。特に雑誌に関しては著しい。

下記は出版物別の売上推移であるが、このチャートも見ればわかるように2000年以降の雑誌の売上には厳しいものがある。売上が減少している理由としては読者がWEBメディアに流れていることがあげられるのだろう。今日日電車に乗っていても雑誌を読んでいる人は珍しいように思う。

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引用元:http://www.garbagenews.net/archives/2101334.html

 

▼業界を悩ます返本率を見ても、雑誌のそれは悪化の一途を辿っている。

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上記で述べたコスト構造からもわかるように返本コストがどれだけ重たいかは説明の必要がないように思う。


電子書籍の苦戦

一昔まえから時代は電子書籍、というような風潮があった気がするが未だに世の中一般に定着しているとは言いがたい。実際に売上を見ても期待通りというわけではなさそうだ。

なぜそこまで電子書籍は売上が伸びないのか?

少し参考にした記事が古いかもしれないがこちらのサイトいわく理由は3点ある。

下記のサイトから説明を拝借

編集者の日々の泡:小学館、集英社、講談社が電子書籍でアマゾンと組みそうな「ワケ」 ――電子書籍に死屍累々の「出版界」

●電子書店の規格乱立

電子書籍は、個々の電子書店で許されるフォーマットでしか発売できない。日本での電子書店は通信キャリア系、流通系、取次系など入り乱れて戦国時代並の大乱戦状態であり、規格はバラバラ。別規格の書店に卸そうとすればオーサリングはそれぞれ別に費用が発生する。

●売れない

紙の書籍の潜在読者は「日本語の読める人」。電子書籍の潜在読者は「タブレットユーザー+α」。このため決定的に売れ行きが違う。この点、英語書籍の電子化でむしろ紙より広く全世界を相手にできる米国の出版社とは、話が違う。


●コストが高い

電子書籍では、紙代と印刷代が不要になる。反面、紙にはないオーサリング費用が掛かる。さらに長い歴史を持ち極限まで効率化されコストダウンが進んだ紙版では問題にならない上記の事務の手間(=コスト)も。電子版が売れないという条件で見ると、分母が小さいだけにこれらがバカにならない。

 

以上出版業界の構造やプレーヤー及び今後の課題についてまとめた。

今後WEB業界においてコンテンツマーケティング強化、及び上質なコンテンツを載せるメディアの増加の流れは避けられないように思う。

その中でコンテンツの生産者として長年君臨してきた出版社達がどのようにWEBの世界でポジションをとっていくのか。個人的には注目のポイントである。